205号 2023/11

2024年度介護報酬改定動向(1)――居宅介護支援の論点が出揃う

2024年は6年に1回の診療報酬・介護報酬のダブル改定を迎える。ただ、診療報酬改定は、2024年6月実施となる。厚生労働省によれば、診療報酬改定を後ろ倒し施行した理由は、報酬答申や告示から施行、初回請求までの期間が短く、医療機関・薬局等及びベンダの業務が逼迫し、大きな負担がかかっていたことを解消するためだとされている。結論は出ていないが診療報酬改定と併せて介護報酬改定でも、6月実施とする後ろ倒しの案がある(11月20日現在)。今回からケアマネジャーとして知っておきたい介護報酬改定動向について、厚生労働省が提案した方向性などを概説したい。

医療介護連携の推進――入院時情報連携加算要件見直し、通院時情報連携加算に歯科も追加

11月6日、厚生労働省は社会保障審議会・介護給付費分科会で、訪問・居宅系サービスの2巡目の議論を開始した。居宅介護支援では「医療介護連携の推進」「ケアマネジャー1人当たりの取扱件数見直し」「他のサービス事業所との連携によるモニタリング」など、これまでの改定と比較して、見直し項目が多くみられる。このうち「医療介護連携の推進」では現行の入院時情報連携加算の要件を入院後3日以内から「入院当日中」、入院後7日以内から「3日以内」と短縮化する。しかし、予定入院なら入院当日は可能かもしれないが、緊急入院であれば困難だろう。通院時情報連携加算は、利用者が歯科医師の診察を受ける際に同席した場合も対象とする。ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患では、疾患を限定せずがん以外の疾患も追加する。併せてターミナルケアマネジメント加算の算定回数の要件も見直しするという案も出た。

公正中立性の確保、特定事業所加算の見直し――事例検討会の項目を絞り込み

前回の改定でケアマネジメントの公正中立性の確保を図る観点から、事業者から利用者に対し、

前6か月間に作成したケアプランの、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービス利用割合などを文書説明することが義務化された。ただ利用者への説明事務負担が重いといった声がある。そのほか、説明を受けたことで一部の利用者は割合の高い事業者を選択し、かえって特定の事業所を選択することを助長してしまうこともあるとの課題もあるとした。そこで事務負担と比較して公正中立性の確保への効果が薄いと考えられることから、事業者の負担軽減を図るため、利用者に対する「説明義務」を「努力義務」に改めるとした。

特定事業所加算の見直しでは、現行「地域包括支援センター等が実施する事例検討会等に参加」から「ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、他制度に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加」に見直しされる。また2024年4月から居宅介護支援事業者の介護予防支援指定を認めることになることから、特定事業所加算の要件である「常勤の主任介護支援専門員」について予防支援の兼務を認める。特定事業所加算の要件である「居宅介護支援費に係る運営基準減算又は特定事業所集中減算の適用を受けていないこと」について、事業所における毎月の確認作業等の手間を軽減する観点から、運営基準減算は加算の要件の見直しを行う案も提示された。

他のサービス事業所との連携によるモニタリング評価――ケアマネジャー1人当たりの取扱件数緩和も

 前回の改定でICTの活用や事務職員の配置をしている場合には「40件以上」を「45件以上」とする見直しが実施された。厚生労働省が実施した調査結果によると、ケアマネジャー1人当たりの1ヶ月間の労働投入時間が減少していることや、8割近い事業所においてパソコンなどの機器を1人1台利用していることが明らかになっている。その他ケアプランデータ連携システムが稼働していることなど、ケアマネジメントの質を確保しつつ、業務効率化を進めて人材を有効活用するために、居宅介護支援費における利用者の取扱件数の緩和を提言した。具体的には、居宅介護支援(I)は、基本報酬が半減する担当件数を現在の40件以上から、45件以上とする。

居宅介護支援(II)では、現在の45件以上から50件以上とする。また、この区分を活用できる条件に「ケアプランデータ連携システムの活用による業務効率化を図っている場合」を加えるというものだ。

さらに厚生労働省は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが要支援者を担当する担当件数を算定する基準も変更する方針も提示した。それは、「要支援者の利用者数に2分の1を乗じる」となっている現在の基準を、「要支援者の利用者数に3分の1を乗じる」に改めると緩和する案だ。

逓減制緩和と併せてテレビ電話などを通して行う「オンラインモニタリング」を導入する案も出た。これは利用者の状態によってはテレビ電話などを通しても十分なモニタリングが可能というもの。さらに「オンラインモニタリング」には「移動時間が節約できる」「情報収集するサービス事業所側においても新たな気づきが得られる」などのメリットがあるとした。その上で、少なくとも月に1回(要支援の場合は3か月に1回)はモニタリングのために訪問する現在の仕組みを原則とする。ただ一定の条件を満たせば、「オンラインモニタリング」も認めるという案だ。具体的な要件は、①利用者の同意を得る、②サービス担当者会議等において、主治医、サービス事業者等から以下の合意が得られている、イ)利用者の状態が安定している(主治医の所見等も踏まえ、頻繁なプラン変更が想定されない等)、ロ)利用者がテレビ電話等を介して意思表示できること(家族のサポートがある場合も含む)、ハ)テレビ電話等を活用したモニタリングでは収集できない情報については、他のサービス事業者との連携により情報を収集する、③少なくとも2か月に1回(要支援は6か月に1回)は利用者の居宅を訪問する、という案が出ている。

今回厚生労働省が提案した案には、適正化策もある。それはサービス付き高齢者向け住宅等入居利用者や、同一の建物に入居している複数の利用者へのケアマネジメントに報酬設定の引下げ案だ。住宅型有料老人ホーム又はサービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)のうち3割程度が居宅介護支援事業所と併設又は隣接しており、こうした施設で介護保険サービスを利用している入居者のうち併設又は隣接している居宅介護支援事業所においてケアプランを作成している者は、平均6割程度となっているという現状から見直しを検討するというもの。

その他基本報酬の引上げが実現するのか、オンラインモニタリングを活用した、1か月の受け持ち件数見直しなど、緩和策とも言える内容が具体的にいかに実施されるのか、今後の動向に注視していただきたい。

(顧問 宮坂 佳紀)


『生きるかなしみ』を読んで

『生きるかなしみ』という本を読んで感銘を受けております。

明朗で平易なものにしか飛びつかない人が幅を利かす現代に合って、このタイトルはいかにも古めかしく、時代遅れ的であるけれども、やっぱり忘れてはいけないものは、「生きるかなしみ」であるとあらためて思っています。

わたしたちは、自分の力でいろいろに可能性を広げられるように思っていて、人類の力強さを積極的にうたい上げているけれども、実はそれはごく限定的で、指先の怪我ひとつで、ヘロヘロになってしまう弱い存在でもあります。弱いどころか、無力です。著者はまえがきで「証明する必要があるだろうか。」と言い切っています。

人間の限界、人生の限界を見据えた上で、人生を肯定的に生きることが大切だというのがこの本の主題です。

限界を見据えるってなかなかできることではありません。

「諦める」、ということでもありますから。

でも、いま、振り返ってみて、自分にもまわりにも期待しすぎているような面が、わたしたちにありはしないか?と問うと、ちょっと詰まってしまいます。

人間、期待されれば、応えたくなります。

実現可能性を示されれば、それに向かって走ろうとします。何らかの収益が約束されていればなおさらです。

でも、そのために、心の平安が遠ざかってしまっているのかもしれず…。

(わたしの下手な要約ではピンとこないかと思います。お許しください。)

実は、何度も読み返している本なのです。

尻切れとんぼですいません。

疑問に思われた方も含め関心を持たれた方は、ご一読ください。

ACPについて考える時、わたしはこの本を思い出します。

アセスメントで「意向」や「目標」を確認するとき、わたしのアタマの隅には、この本があります。

(参考:『生きるかなしみ』山田太一:著。ちくま文庫)

(理事 西村 聡)

 

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