172号 2021/10

ケアマネメールニュース(2021年10月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

2022年4月は、2年に1回見直しされる診療報酬改定を迎える。今回もケアマネジャーとして知っておきたい「2022年度診療報酬改定動向」のうち「在宅医療の課題と論点」についてポイント解説する。

在宅医療の論点は連携型在宅療養支援診療所の拡充 ―― 24時間提供体制推進策とは

2022年度診療報酬改定を控え、中央社会保険医療協議会総会(中医協総会)での議論が2巡目を迎えた。中医協総会資料によると在宅医療は今後、高齢化の進展及び地域医療構想による病床の機能分化・連携により、需要が大幅に増加することが見込まれている。改正医療法の在宅医療体制構築指針では、在宅医療において積極的役割を担う医療機関は「多職種連携を図りつつ、24時間体制で在宅医療を提供」、「医療、介護、障害福祉の現場での多職種連携の支援」を行うことが望ましいとされている。医療計画において、訪問診療を行う診療所・病院数に関する目標設定を各都道府県が行うとされているが、現状の数が目標値に達していない都道府県が存在する。これらの現状に対して、これまで厚生労働省の在宅医療関係者会議では、「地域の病院と在宅医療との水平連携が不足している」、「かかりつけ医の在宅医療への参画等、在宅医療推進を支える体制が不十分である」、等の課題が指摘されていた。

2006年度診療報酬改定で新設された在宅療養支援診療所数は、これまで増加傾向だった。しかし近年は概ね横ばいで推移している。在宅療養支援診療所の届出を行わない理由としては「24時間の往診担当医の確保が困難であるため」が最も多い。これを受けて2018年度診療報酬改定では、在宅療養支援診療所以外の診療所が、他の医療機関との連携等により24時間の往診体制と連絡体制を構築した場合の評価として「継続診療加算」が新設。算定回数は増加傾向にある。ただ、継続診療加算を算定していない理由としても「24時間の連絡・往診体制構築に向けた協力医療機関が確保できない」が挙げられている。

以上の課題と現状から「在宅医療を担う医療機関と市町村・医師会との連携、及び、医療・介護の切れ目のない提供体制の構築等を推進し、質の高い在宅医療を十分な量提供できるようにするため、診療報酬の在り方について、どのように考えるか」との論点が提示された。

10月13日に開催された中医協総会で厚生労働省は、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の「継続診療加算」の普及を目指す在宅医療連携モデルの事例を提示し、市町村や医師会と連携した提供体制を持つ地域があることから、面での評価の方向性を論点に挙げた。診療側は面での評価に加え、個々の医療現場がより評価される連携の在り方や、24時間要件の在り方を検討すべきとの考えを示した。

厚生労働省は中医協総会で、継続診療加算について「24時間の往診を行う体制確保をしていない場合であっても、市町村・医師会と連携した上で在宅医療の提供体制が構築されている場合があることを踏まえ要件の在り方をどう考えるか」を論点に提示。その上で、具体的な地域の在宅医療連携モデルとして東京都板橋区と千葉県柏市の2事例を挙げ、こうした連携を評価する方向性を示した。厚生労働省の資料を見る限り、在宅医療の課題や連携の在り方の評価では、在宅時医学総合管理料の算定病院以外の連携・協力病院に対する評価の在り方として後方支援病院の評価も掲げられている。

外来から在宅医療へのスムーズな連携 ―― ターミナルケア加算の要件緩和策も提示

厚生労働省は中医協総会で、2022年度診療報酬改定に向けて、外来医療が困難となった患者が在宅医療に移行する際に、双方の医師が共同で必要な指導などを行う場合を評価することを提案した。委員からは、基本的な方向性に同意した上で、具体的な連携の在り方などについて詳細を詰めることを求める意見が大勢を占めたと報じられている。

厚生労働省は、入院患者が外来や在宅に移行する場合には、現状では必要な調整について退院時共同指導料などで評価しているが、外来から在宅医療に移行する際にもケアマネジャーや地域包括支援センターとの連携など、さまざまな調整が必要になると指摘。外来と在宅医療との連携を促進するための評価の在り方を論点として示した。

厚生労働省はこのほか、「在宅ターミナルケア加算」の見直しも論点に挙げた。入院患者が自宅での看取りを希望して在宅ターミナルケアを行う場合、医師が訪問診療の計画のみを策定するために往診のみを行っている期間があり、計画策定後の初回訪問の前に看取りに至るケースなど、同加算を算定できない場合があるとし、改善の必要性を指摘した。在宅での看取り体制確保のため算定要件の緩和が予測できる。

(参考)在宅医療に係る課題
(在宅ターミナルケア加算について)
・在宅医療については、高齢化の進展及び地域医療構想による病床の機能分化・連携により、需要が大幅に増加することが見込まれている。
・今後も、年間の死亡数は増加傾向を示すことが予想され、最も年間死亡数の多い2040年と2015年では約39万人/年の差が推計されている。場所別の死亡者数をみると、近年は多くの方が「病院」で亡くなっているが、「最期を迎えたい場所」については、「自宅」が最も多い。
・在宅ターミナルケア加算は死亡日及び死亡日前14日以内に2回以上の往診又は訪問診療等を実施した場合に算定する、という要件となっており、「医師が訪問診療の計画のために往診のみを行っている期間があり、計画を立てた初回の訪問診療までに看取りに至った場合」や、「月1回の訪問診療を行っている患者の訪問診療の予定日前に状態の急変があり、往診を行ったがそのまま看取りとなった場合」に算定できない事例がある。

外来から在宅医療へのスムーズな連携やターミナルケアの取組み強化には、次期診療報酬改定以降ケアマネジャーも、関わる機会が増えるはずだ。

(顧問 宮坂 佳紀)

 


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第9回:相楽ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。
第9回となる今回ご紹介させていただくのは、相楽ブロックでの活動です。

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相楽ブロックの活動報告をさせて頂きます。相楽ブロック理事 山川 淳と申します。

当ブロックは、京都府の南端の1市3町1村からなります。ブロック委員7名で構成され年6回以上ブロック委員会を開催して、介護と医療・多種職の連携、広くは地域コミュニティとの連携を日々模索しております。取り組みとしましては、相楽医師会と多種職連携ネットワークとの構築からなる地域ネットワーク「きづかわねっと」の関わりにより、「認知症を学ぶ会」「看取りを学ぶ会」など医師と多種職の学びの場を作っております。それぞれの会が発展的に進んでいく中で、多種職連携シートや看取りのフローチャートなど多種職とのつながりを持ちやすくするツール作りも一緒にしております。現在は、それらの様々な研修に関しては、コロナ禍による開催縮小となっていましたが、昨年後半よりZoomでの開催で進めております。

次に、介護支援専門員に関する取り組みとして、地域性から県境界を跨ぐ介護支援専門員が他府県からも多く関わる実態となっておりますが、他府県の事業所との情報共有や連携が難しい面があり、相楽圏域のケアマネ間で情報共有をしたいという思いから、約7年前に地域での会を発足させるべく相楽ブロック役員が立ち上げに関わり、木津川市ケアマネ会・東部ケアマネ会・相楽主任ケアマネ会の創設に尽力してまいりました。現在まで各会とも約7年程度の実績を積んで、特に木津川市ケアマネ会は精力的に研修などを年2回は行い、相楽ブロック役員も関わりを持ち続けております。また相楽圏域の連絡協議会・ケアマネ会ごとに、独自の研修会等を旬に合った内容で行い、多くの介護支援専門員が参加する会となっています。そしてコロナにより行動制限が多く出たことから会の集まりが実施出来ない状況が続きました。相楽ブロックでは、その間介護支援専門員と各事業所にウェブでのリモート研修やリモート会議についてアンケートを実施し、ネット環境の整備から操作方法についての課題が解決できるよう、各会への機材のやり繰りや運営の協力をしています。今後の展望としては、相楽圏域と隣接府県の介護支援専門員の輪の広がりと医療連携・多種職連携の安定性が図れるように、現在起きている事を柔軟に受け止めつつ新しいことへの再構築が出来るように相楽ブロックでは考えていきたいと思っております。

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相楽ブロックは木津川市、和束町、南山城村、精華町、笠置町で構成され、京都府と奈良県・滋賀県・三重県の県境界を跨ぐ地域で、他のブロックとはまた違う実態をご報告いただきました。多くの介護支援専門員が他府県からも関わるという実態を知り、情報共有や連携は大変難しいのではないかと感じました。このような地域性の中で、地域での会を発足し、継続されておられることはたゆまぬ努力の結果だと感じます。現在のコロナ禍において活動に制限がある中でも、自分たちのできることを続けられ、団結してこの難局に立ち向かわれていることは、日々の業務や私たちの活動の中でも参考にさせていただき活かしていかないといけないと感じました。すばらしい活動のご紹介をいただきましてありがとうございました。

(広報委員 橋本 かおり)

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