180号 2022/4

ケアマネメールニース(2022年4月号)

実地指導の標準化・効率化推進の観点から「介護保険施設等指導指針」を見直し――実地指導から運営指導へ

厚生労働省老健局は3月31日付で、介護保険施設等の指導監督に関する局長通知(老発0331第6号)を都道府県などに発出。社会保障審議会介護保険部会「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」で出た意見などを踏まえ、実地指導の標準化・効率化推進の観点から、新たに「介護保険施設等指導指針」と「介護保険施設等監査指針」を定めたことを周知する内容だ。

通知では、自治体が施設などに対して行ってきた「実地指導」の名称について、「運営指導」に変更したことを明記している。運営指導は原則実地で行うとしつつ、実地でなくても確認できる最低基準等運営体制指導と報酬請求指導については、介護保険施設等の負担増にならないよう十分配慮した上で、オンライン会議システムなどを活用可能とする方針も盛り込んだ。

運営指導の実施頻度については、原則として指定等の有効期間内に少なくとも1回以上。施設サービス・居住系サービスについては、3年に1回以上の頻度で実施することが望ましいとした。

以下「実地指導」から「運営指導」に改定された内容をポイント紹介する。

運営指導は次のア~ウの内容について、原則、実地に行う。また、都道府県知事又は市町村長が単独で行うものを「一般指導」とし、厚生労働大臣及び都道府県知事若しくは市町村長、又は都道府県知事及び市町村長(指定都市及び中核市の長を除く。)が合同で行うものを「合同指導」とする。

なお、ア~ウの実施については、効率的な実施の観点から、それぞれ分割して実施することも差し支えない。

ア 介護サービスの実施状況指導

個別サービスの質(施設・設備や利用者等に対するサービスの提供状況を含む)に関する指導

イ 最低基準等運営体制指導

運営基準等に規定する運営体制に関する指導(ウに関するものを除く。)

ウ 報酬請求指導

加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導

運営指導は、原則として指定又は許可の有効期間内に少なくとも1回以上、指導の対象となる介護保険施設等について行う。なお、居宅サービス(居住系サービスに限る。)、地域密着型サービス(居住系サービス又は施設系サービスに限る。)又は施設サービスについては、3年に1回以上の頻度で行うことが望ましいものとする。

運営指導の実施は、基準等への適合性に関し、介護保険施設等による自己点検を励行するものとし、上記 ア及びイについては、介護サービスの質の確保、利用者保護等の観点から重要と考えられる標準的な確認すべき項目(「確認項目」)及び標準的な確認すべき文書(「確認文書」)に基づき実施する。なお、サービス種別毎の確認項目及び確認文書については別に定める。また、運営指導においては、確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めないものとする。

運営指導の指導方法や留意点は以下のとおり。

(1)実施通知
都道府県知事及び市町村長は、指導対象となる介護保険施設等を決定したときは、次に掲げる事項を文書により当該介護保険施設等に原則として1月前までに通知する。
ただし、指導対象となる介護保険施設等において高齢者虐待が疑われる等の理由により、あらかじめ通知したのでは当該介護保険施設等の日常におけるサービスの提供状況を確認することができないと認められる場合は、指導開始時に次に掲げる事項を文書により通知する。

①運営指導の根拠規定及び目的

②運営指導の日時及び場所

③指導担当者

④介護保険施設等の出席者(役職名等で可)

⑤準備すべき書類等

⑥当日の進め方、流れ等(実施する運営指導の形態、スケジュール等)

(2)指導方法
運営指導は、関係者から関係書類等を基に説明を求め面談方式で行う。なお、施設・設備や利用者等のサービス利用状況以外の実地でなくても確認出来る内容(最低基準等運営体制指導及び報酬請求指導に限る。)の確認については、情報セキュリティの確保を前提としてオンライン等を活用することができる。活用に当たっては、介護保険施設等の過度な負担とならないよう十分に配慮する。
(3)運営指導の留意点
ア 所要時間の短縮等
運営指導の所要時間については、確認項目を踏まえることで、一の介護保険施設等当たりの所要時間をできる限り短縮し、介護保険施設等と自治体双方の負担を軽減し、運営指導の頻度向上を図る。
イ 同一所在地等の運営指導の同時実施
同一所在地や近隣に所在する介護保険施設等に対する運営指導については、できるだけ同日又は連続した日程で行うなどにより効率化を図る。
ウ 関連する法律に基づく監査の同時実施
老人福祉法等介護保険法に関連する法律に基づく監査との合同実施については、介護保険施設等の状況も踏まえた上で、自治体の担当部門間で調整を行い、同日又は連続した日程で行うことを一層推進する。
エ 運営指導で準備する書類等
運営指導において準備する文書は、原則として、前年度から直近の実績に係るものとし、介護保険施設等に対して運営指導の事前又は当日に提出を求める資料及び書類の写等については1部とし、自治体が既に保有している文書(新規指定時、指定更新時及び変更時に提出されているもの等)については再提出を求めない。また、介護保険施設等において作成、保存等が行われている各種書面について、当該書面に代えて電磁的記録により管理されている場合は、ディスプレイ上で内容を確認することとし、別途、印刷した書類等の準備や提出は求めない。

なお、利用者等の記録の確認は、特に必要と判断する場合を除き、対象は原則として3名以内とした。ただし、居宅介護支援事業所については、原則として介護支援専門員1人あたり1名~2名の利用者についてその記録等を確認される。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第15回:京都市北西ブロック)
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2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。

第15回となる今回ご紹介させていただくのは、京都市北西ブロックでの活動です。

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京都市北西ブロックは上京区、中京区、右京区の3つの区で構成されています。令和3年度から各区・支所の「京都市介護サービス事業者等連絡会開催支援事業」の活動に対し、京都市から補助金が交付されたことで、ブロック委員は区・支所の「事業者連絡会」の運営委員会に参加し、講師謝礼や会場費の支払い手続き、オンライン開催に必要な諸手続も含め、開催支援の役割を担っています。

そのような中で、今回は上京区の事業者連絡会の取り組みを紹介します。上京区は①包括部門、②『ささえ愛の会』部門(通所・小規模多機能)、③訪問部門(訪問介護、訪問看護、福祉用具、その他)、④居宅介護支援部門からそれぞれ運営委員を3,4人選出し、「地域の連携強化」「タイムリーな情報提供」「資質向上」「情報、悩みの共有とその背景にある課題に取り組む」「区役所との連携強化」を活動方針に掲げて、偶数月に運営委員会、奇数月に研修会の開催に取り組んでいます。

令和3年度は「ガウンテクニック」「「身近にある依存症について」~連携し支え続ける為に、わたしたちに出来る事を考える」「「明日に架ける橋」ヤングケアラーについて当事者体験から学ぶ」「対人援助技術を磨く~コロナ禍に振り返る専門性の意義」等のタイムリーなテーマを設定し、Zoom参加と会場参加のハイブリッド方式で研修開催をされています。

私が感心するのは、運営委員が種別の垣根なく対等に意見交換をされ家族のような和やかさがあることと区役所の担当者が開催案内やアンケート等の集約、連絡を小まめにされ事務局機能をしっかり果たされていることです。運営委員も2年を任期として毎年半分は新しい運営委員に代わるなど名簿を作成し、順番に担当するなど負担が集中しないように配慮した運営に努めておられます。事業者連絡会の運営が介護支援専門員主導になっている区・支所が多い中、上京区はサービス事業者が並列でしっかり運営に携わっていることから、地域課題の発掘も含めネットワーク構築の上でも大きな可能性を秘めており、今後も発展が期待されます。

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