166号 2021/04

ケアマネメールニュース(2021年4月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
 2021年4月介護報酬改定を迎えて(1「疑義解釈通知からみたケアマネジャーとして知っておきたいポイント整理」

厚生労働省は、4月に入ってホームページで2021年度介護報酬改定についての質疑応答を相次いで公表した。今回はケアマネジャーとして知っておきたい質疑応答(以下「疑義解釈通知」という)のポイントを紹介したい。

介護報酬では新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、全てのサービスについて、21年9月末までの間、基本報酬に0.1%上乗せの評価がある。上乗せ報酬の請求に当たっては上乗せ分のコードを合わせて入力することが必要になる。こうした対応を行っていない場合は返戻となるのでご留意いただきたい。

診療報酬についても外来、入院、調剤薬局で、新型コロナ感染症対応の評価があることを知っていただきたい。診療報酬上の特例では、特に手厚い感染症対策を講じて診療した場合、4~9月診療分について初診料や再診料、外来診療料などを算定する場合に「医科外来等感染症対策実施加算」として1日に5点を加算。訪問診療も同様である。入院では入院基本料や特定入院料などを算定する場合、「入院感染症対策実施加算」として1日につき10点を算定可となる。「特に手厚い感染症予防策」の運用では、新型コロナの『診療の手引き』を参考に対応を求め、「状況に応じて、飛沫予防策や接触予防策を適切に行う等、感染防止に十分配慮して患者および利用者への診療等を実施すること」などを示した。なお、電話再診では算定不可であり、入院患者の外泊期間中も算定できない。

調剤報酬でも調剤基本料などに1日に4点加算という評価がある。また訪問看護ステーションについては、1回ごとの訪問評価ではなく、30回の訪問につき1500円を算定できるという「先取り加算」評価があることも知っていただきたい。医療と介護の財源の問題があるにしても、介護報酬の0.1%上乗せ評価は低すぎると言っても過言ではないだろう。

LIFEに提出する情報に関連して――情報の提出自体については、利用者の同意は不要

今回の介護報酬改定の目玉である「データ提出」いわゆるLIFEに提出する情報との関連性についても、疑義解釈通知で取り扱いが明確になった部分がある。以下にポイントを列挙する。

〇LIFEの利用者登録の際に、氏名や介護保険被保険者番号等の個人情報を入力するが、LIFEのシステムにはその一部を匿名化した情報が送られるため、個人情報を収集するものではない。そのため、加算の算定に係る同意は必要ではあるものの、情報の提出自体については、利用者の同意は必要ないとした。

〇加算の算定に係る同意が得られない利用者又は入所者がいる場合であっても、当該者を含む原則全ての利用者又は入所者に係る情報を提出すれば、加算の算定に係る同意が得られた利用者又は入所者について算定が可能である。

〇要件として定められた情報を「やむを得ない場合を除き、すべて提出することとされていれるが、「やむを得ない場合」とは、例えば、通所サービスの利用者について、情報を提出すべき月において、月の中旬に評価を行う予定であったが、緊急で月初に入院することとなり、当該利用者について情報の提出ができなかった場合や、データを入力したにも関わらず、システムトラブル等により提出ができなかった場合等、利用者単位で情報の提出ができなかった場合がある。

〇提出する情報について、例えば、全身状態が急速に悪化した入所者について、必須項目である体重等が測定できず、一部の情報しか提出できなかった場合等であっても、事業所・施設の利用者又は入所者全員に当該加算を算定することは可能である。

ただし、情報の提出が困難であった理由については、介護記録等に明記しておく必要がある。

虐待の防止のための措置に関連して――小規模事業所の虐待防止委員会や研修会の取り扱い

運営規程に定めておかなければならない事項として、「虐待の防止のための措置に関する事項」が追加された。本件の取り扱いについて、疑義解釈通知によれば「経過措置が定められているものは、当該期間において、都道府県知事等に届け出ることまで求めるものではない。一方、これらの取組については、経過措置期間であってもより早期に取組を行うことが望ましいものであることに留意すること」との解釈を示している。

具体的には、虐待の発生又はその再発を防止するため、以下の措置を講じなければならない旨を規定。①虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること、②虐待の防止のための指針を整備すること、③従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること、④上記措置を適切に実施するための担当者を置くことの4項目だ。

本件に関連して疑義解釈通知では「小規模事業所の虐待防止委員会や研修会の取り扱い」も取りまとめている。取り扱いによると「高齢者の尊厳を守るため、関係機関との連携を密にして、規模の大小に関わりなく虐待防止委員会及び研修を定期的に実施していただきたい。小規模事業所においては他者・他機関によるチェック機能が得られにくい環境にあることが考えられることから、積極的に外部機関等を活用されたい」とした。そのうえで、例えば、小規模事業所における虐待防止委員会の開催は、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会等他委員会との合同開催、関係機関等の協力を得て開催する。研修の定期的実施には、虐待防止委員会同様法人内の複数事業所や、他委員会との合同開催、都道府県や市町村等が実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催等が考えられるとしている。小規模事業所におかれては合同開催などを準備すべきだろう。

居宅介護支援費(Ⅱ)の解釈に関連して――情報通信機器と事務職員の活用事例

居宅介護支援費(Ⅱ)の要件の一つである情報通信機器(人工知能関連技術を含む)は、事業所内外や利用者の情報を共有できるチャット機能のアプリケーションを備えたスマートフォンや訪問記録を随時記載できる機能(音声入力も可)のソフトウエアを組み込んだタブレットの活用が効率化に資するものとしている。具体例では(1)利用者に係る情報共有を即時、かつ、同時に可能とする機能や関係者との日程調整の機能を有しているもの。(2)ケアプラン等の情報をいつでも記録、閲覧できる機能を有しているものを掲げている。

もう一つの要件である事務職員の配置については、ケアマネジャー一人当たり月24時間以上の事務職員の配置を定めた。疑義解釈通知では、事業所内の配置に限らず、同一法人内の配置でも認められるとしていた。具体例としては「法人内に総務部門の部署があり、事務職員を配置」「併設の訪問介護事業所に事務職員を配置等」でも認められるとした。加えて「事務職員配置で実施可能な間接的ケアマネジメント業務」として以下の行為が例示された。

○要介護認定調査関連書類関連業務
・書類の受領、打ち込み、複写、ファイリングなど

○ケアプラン作成関連業務
・関連書類の打ち込み、複写、ファイリングなど

○給付管理関連業務
・関連書類の打ち込み、複写、ファイリングなど

○利用者や家族との連絡調整に関する業務

○事業所との連絡調整、書類発送等業務

○保険者との連絡調整、手続きに関する業務

○給与計算に関する業務等

間接的ケアマネジメント業務を例示するなら、次期改定では、事務職員の配置がない小規模事業所のケアマネジャー報酬の大幅な引上げを期待したい。

特定事業所加算に関連して――インフォーマルサービスを含むケアプランがない場合

特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(A)において新たに要件とされた、「必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること」について、必要性を検討した結果、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスを位置付けたケアプランが事業所の全てのケアプランのうち1件もない場合についても算定できるとした。なお、検討の結果位置付けなかった場合、理由を説明できるようにしておく(理由を記録する)ことが必要となるので留意いただきたい。

多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスの定義として「市町村保健師等が居宅を訪問して行う指導等の保健サービス、老人介護支援センターにおける相談援助及び市町村が一般施策として行う配食サービス、寝具乾燥サービスや当該地域の住民による見守り、配食、会食などの自発的な活動によるサービス等」とした。そのうえで、「こうしたサービスと併せて提供される精神科訪問看護等の医療サービス、はり師・きゅう師による施術、保健師・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練なども含めて居宅サービス計画に位置付けることにより総合的な計画となるよう努めなければならない」と強調している。

内容及び手続の説明及び同意に関連して――訪問介護、通所介護などの集中率について

今回の改定では、全ての居宅介護支援事業所において、前6月間に当該居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画の総数のうちに訪問介護、通所介護、福祉用具貸与及び地域密着型通所介護(「訪問介護等」)がそれぞれ位置付けられた居宅サービス計画の数が占める割合、前6月間に当該居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護等ごとの回数のうちに同一の居宅サービス事業者又は指定地域密着型サービス事業者によって提供されたものが占める割合(上位3位まで)等につき十分説明を行わなければならない。

疑義解釈通知では「以下のように重要事項説明書等に記載し、訪問介護等の割合等を把握できる資料を別紙として作成し、居宅介護支援の提供の開始において示すとともに説明することが考えられる」とした。なお、「同一事業者によって提供されたものの割合」については、前6か月間に作成したケアプランに位置付けられた訪問介護等の各事業所における提供回数のうち(※同一事業所が同一利用者に複数回提供してもカウントは1)、同一事業所によって提供されたものの割合であるが、その割合の算出に係る小数点以下の端数処理は、切り捨てても差し支えない。

<例>
※重要事項説明書
第●条 当事業所のケアプランの訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の利用状況は別紙のとおりである。

※別紙

契約時の説明について前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与 の各サービスの利用割合

訪問介護 ●% 通所介護 ●% 地域密着型通所介護 ●% 福祉用具貸与 ●%

前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与 の各サービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合

訪問介護 ○○事業所 ●% □□事業所 ●% △△事業所 ●%
通所介護 △△事業所 ●% ××事業所 ●% ○○事業所 ●%
地域密着型通所介護 □□事業所 ●% △△事業所 ●% ××事業所 ●%
福祉用具貸与 ××事業所 ●% ○○事業所 ●% □□事業所 ●%

併せて2021年4月以前に契約を締結している利用者には「次のケアプランの見直し時に説明を行うことが望ましい」とした。なお、前6月間に当該事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護等ごとの回数のうちに同一の指定居宅サービス事業者又は指定地域密着型サービス事業者によって提供されたものが占める割合について、当該事業所が、2021年4月中に新たに契約を結ぶ利用者等において、割合の集計や出力の対応が難しい場合には、5月以降のモニタリング等の際に説明を行うことで差し支えない。

通院時情報連携加算に関連して――事前に医療機関に診療同行について確認

新設された「通院時情報連携加算(50単位/月)」は、利用者1人につき、1月に1回の算定。算定要件は、利用者が医師の診察を受ける際に同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報提供を行い、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けた上で、居宅サービス計画(ケアプラン)に記録した場合となっている。

疑義解釈通知では、通院時情報連携を促す観点から、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報提供を行い、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けることが趣旨であると強調。さらに利用者に同席する旨や、同席が診療の遂行に支障がないかどうかを事前に医療機関に確認しておくことも留意点として掲げている。

サービス利用の実績がない場合に関連して――看取り期で実績がない場合の請求上の留意点

看取り期で実績がない場合の請求上の留意点として、当初、ケアプランで予定されていたサービス事業所名、サービス種類名を記載し、給付計画単位数を「0単位」とした給付管理票及び居宅介護支援介護給付費明細書を併せて提出することにより請求する。また、請求方法は新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第11報)(令和2年5月25日事務連絡)の問5(※)に基づいて請求する場合も同様の取扱いとした。なお、当該臨時的取扱いについては介護予防支援費も同様の取扱いとなる。

(※)
問5 今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、居宅介護支援事業所において、当初ケアプランで予定されていたサービス利用がなくなった等の場合は、居宅介護支援費の請求は可能か。(答)事業所において、モニタリング等の必要なケアマネジメント業務を行い、給付管理票の作成など、請求にあたって必要な書類の整備を行っていれば、新型コロナウイルス感染症の影響により、実際にサービス提供が行われなかった場合であっても請求は可能である。
なお、具体的な請求には、データの作成等において、個別の請求ソフト等による支障がある場合、個別に各請求ソフト作成者に相談すべきとしている。また、今般の取扱いは新型コロナウイルス感染症の影響による場合に限った取扱いであることから、新型コロナウイルス感染症により、サービスの利用実績が存在しないが、居宅介護支援費を算定した旨を適切に説明できるよう、個々のケアプラン等において記録で残しつつ、事業所において、それらの書類等を管理しておくことが必要である。

退院・退所加算に関連して――カンファレンスにおける福祉用具専門相談員等の参画促進

居宅介護支援の退院・退所加算や施設系サービスの退所時の支援に係る加算において求められる退院・退所時のカンファレンスについて、退院・退所後に福祉用具の貸与が見込まれる場合には、必要に応じ、福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士等が参画することが明確化された。その裏付けとして、カンファレンスに参加した場合は、「利用者又は家族に提供した文書の写しを添付する」ことが定められた。具体例としてはカンファレンスに係る会議の概要、開催概要、連携記録等とした。なお、なお、カンファレンスに参加した場合の記録については、居宅介護支援経過(第5表)の他にサービス担当者会議の要点(第4表)の活用も可能とした。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第3回:中丹ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。第3回となる今回ご紹介させていただくのは、中丹ブロックでの活動です。ブロック理事の佐藤弓子氏から寄稿いただきました。

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中丹ブロックは、綾部・舞鶴・福知山の三市で構成されており、7名のブロック委員が活動しています。令和元年に遡りますが、ブロック活動は中断しておりました。これは私見ですが、中丹圏域では介護保険制度が始まった当初から、各市レベルでケアマネジャーが集まって自己研鑽を積んでおり、それぞれ独自の組織として市と連携しながら活動が行われてきました。平成30年から居宅介護支援事業所の指定権限が各市に移行したこともあり、ブロック単位で活動する必要性をあまり感じてこなかった印象があります。日々の活動というよりは、ブロック活動イコール全体研修会という側面が強かったのではないかと感じています。
令和2年コロナ禍の世界となり、全体研修が行えなくなった現状で、ブロック単位の活動だからできることがあるのではないか、会員のために私たちが出来ることがあるのではないか、と模索しています。令和2年末に128名の会員を対象に中丹ブロック新聞を発行しました。新聞の内容は、ブロック委員・代議員の紹介と、各市レベルの活動・取り組み紹介としました。綾部から「実践発表会」と「ネットワーク部会」の活動報告、舞鶴からはリモートを活用した「京都式ケアプラン点検の基礎を学ぶ〜自立支援型ケアプラン作成のための具体的な視点を養う〜」の研修報告、福知山からは災害対策委員会から講師を招いた自然災害発生時の個別ケアプラン作成を視野に入れた研修会の報告を寄稿いただきました。
ブロック委員はオンラインで連絡をとり会議を行っています。会から発出される情報の再確認や、委員同士の情報共有が出来るようになってきました。現場は多忙ですから、会員が見落としている情報もあると思われるので、委員同士の連携をきっかけに、会員に必要な情報を発信し業務に活用していただけると、活動の意義が見えてくるかもしれません。また、ブロック委員も現場で働くケアマネジャーです。ブロック委員が困ることを出し合うだけでも、地域課題の洗い出しや、解決の検討に繋げられるのではないかと思っています。
令和3年度からの2年間は、「現場の状況を知る」をテーマに、新たな体制でブロック活動が計画される予定です。

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京都府介護支援専門員会は、元々府内8ブロックでの地域区分でしたが、平成25年度ブロック委員総会で「ブロック活動のあり方」について検討がなされ、結果、現在の府内10ブロック体制になった経緯があります。あれから7年あまりが経過し、ケアマネジャーの属性が居宅・施設だけでなく地域包括支援センターや地域密着型など多様化していること、地域によってはブロック委員の担い手が不足していることなど、その様な中で活動を継続している状況があるのも事実。ただその一方で、“コロナ禍”という大きな要因によりブロック活動の変容も感じられるようになりました。集合式の委員会や研修会がZoomなどWeb形式も取り入れたこと、今回の中丹ブロックのように新聞の発行や山城ブロックのアンケート調査の実施など、地域の状況に応じた活動が多様に行われています。会員と地域のケアマネジャーに対して何ができるか、私たちも前向きな模索を続けたいと思います。次回は中部ブロック内の地域での取り組みをご紹介します。

(理事 北野 太朗)

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