157号 2020/10

ケアマネメールニュース(2020年10月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回も、2021年度介護報酬改定動向について社会保障審議会介護給付費分科会(分科会)資料をもとに解説したい。

2021年4月介護報酬改定を控えて(5)「算定率の高い加算は基本報酬に包括」

介護報酬体系の簡素化の狙いは算定率の高い加算を包括評価――各種加算の算定率に注視

介護保険制度の安定性・持続可能性の確保と観点から介護報酬体系の簡素化に向け、分科会では各種加算の算定率が俎上に挙げられている。分科会資料によれば(1)利用者、事業者や保険者にとっても分かりにくいため簡素化し、明快な報酬体系を構築することが必要。(2)期間経過し普遍化された加算は基本サービス費に取り入れるなど、報酬の簡素化について検討が必要。(3)加算は業務量が増加するため、基本報酬で評価するべき。(4)加算が複雑で事務処理も煩雑なため、人材不足や事業の効率化の視点からも見直しを図るべき。(5)算定率が低い加算はその必要性も含め見直しをするとともに、算定率が高いものは基本報酬に組み込むことや、要件を満たさない場合は、減算することや要件緩和を行うことを検討すべき。(6)算定率の低い加算について、要件緩和の議論がでているが、加算はあるべき姿に誘導するといった面もあるので、趣旨を損なわないような検討が必要――などの意見が出ている。

介護保険制度発足時には、介護老人保健施設や介護老人福祉施設の加算は8種類。現在はそれぞれ54種類、55種類とおよそ7倍に増加。サービスコードも施設系は、2000年571項目だったが、現行は7800項目と13~14倍程度まで増加しているという。一方、加算の算定状況では、2017年10月からの3カ年に平均算定率が80%を超えているのは13種類(延べ49種類)ある。例えば介護予防支援の初回加算算定率(86.4%)、初期加算(介護老人保健施設97.8%、介護老人福祉施設88.4%、介護医療院80.9%)、送迎加算(短期入所生活介護96.3%、短期予防療養介護(老健)93.6%、予防短期入所生活介護87.3%)、入浴介助加算(通所介護94.6%、認知症対応型通所介護98.2%)、リハビリテーションマネジメント加算(1)(通所リハビリテーション90.0%、訪問リハビリテーション82.9%)などである。その他加算算定率80%以上では、介護職員処遇改善加算、総合マネジメント体制強化加算などがある。他方、2019年1月からの1カ年に算定実績なき加算は34種類(延べ114種類)、過去1年間の平均算定率が1%未満(1月あたりの算定事業所数が平均9事業所以下であるものに限る。)の加算は、63種類(延べ222種類)という状況。

新設された加算について、多くの事業所が算定することで標準化されると「加算廃止」、基本報酬に包括という手法はこれまでも実施されてきた。加えて基本報酬の「未実施減算」という適正化手法もある。

さらに多くの事業所に関連するサービス提供体制加算や介護職員処遇改善加算の「見直し動向」には注視すべきだ。分科会ではサービス提供体制加算について「介護職員等の質の向上やキャリアアップ、人材の定着等を一層促進するために、その最も上位の区分の算定が介護職員等特定処遇改善加算の要件であることも踏まえつつ、(1)介護福祉士割合や勤続年数が上昇している(2)ロボットやICTの活用による生産性向上の取組の進展(3)介護サービスの質の評価に関する取組の進展(4)報酬体系簡素化等の観点から、どのような方策が考えられるか、との論定が提示されているからだ。関連して10月22日の分科会では、サービス提供体制強化加算が区分支給限度額除外であるのに対して、訪問介護の特定事業所加算が区分支給限度額除外対象ではなく、要件を満たしていても算定できない事業所があると問題視。次回改定では特定事業所加算も区分支給限度額除外対象になる可能性が高い。

通所系サービスの算定率が低い加算は見直し――通所系サービスの入浴介助加算は包括?

前述のとおり通所・訪問リハビリテーションの加算であるリハビリテーションマネジメント加算Ⅰの取得率は、80%以上の事業所が取得。一方、通所介護のADL維持等加算や生活機能向上連携加算は1~数パーセントにとどまるなど、算定状況にばらつきが生じている。また、訪問・通所にリハビリテーションの「社会参加支援加算」についても算定率はごくわずかだ。

10月15日に開催された分科会では通所サービスについての論点と検討の方向性(案)が提示された。入浴介助加算の論点として「算定状況や、入浴介助を通じた利用者の居宅における自立支援・日常生活動作能力の向上に資する取組を行っている事業所の状況をふまえ、見直しを検討」との方向性が示されている。そのうえで「単に利用者の心身の状況に応じた入浴介助を行うのみならず、利用者が自立して入浴を行うことができるよう、自宅での入浴回数の把握や、個別機能訓練計画への位置付け等を行っているところもある。こういった点を踏まえ、入浴介助加算の在り方について、どのように考えるか」との論点が提示。論点からみて現行の入浴介助加算は基本報酬に包括。新たな個別機能訓練を目途とした「新入浴介助加算」が誕生する可能性もある。

また、通所介護の個別機能訓練加算については「通常規模型・地域密着型において算定率が低く、算定できている事業所でも、それぞれの加算の目的に応じた機能訓練項目を設定することが難しい場合もある」と指摘。加算算定要件としての「人員配置要件や機能訓練項目の見直しを行うことを検討」すべきという方向性が示されている。

訪問系サービスの加算も見直し―――訪問介護の看取り加算新設、訪問リハビリの上限回数の見直し

10月22日に開催された分科会では訪問系サービスの論点も提示された。訪問介護については、看取り期における医療との連携に着目した介護報酬上の特別な評価はないが、他のサービスにおいて看取り期への対応に係る加算制度が置かれていることに鑑み、評価を求める意見が出ていた。これを受けて厚労省は「看取り期への対応の充実を図る観点から、看取り期における訪問介護の役割や対応の状況等も踏まえながら、その評価について検討してはどうか」との対応案を提案。

訪問看護ステーションのサービス提供は、これまでもリハビリ専門職の訪問看護に特化した事業所の存在を問題視し、訪問リハビリをはじめとした他のリハビリサービスとの違いを明確化することが必要との意見があった。このことを受け、分科会で厚労省は「理学療法士等によるサービス提供の状況等も踏まえて、各種加算も含めた評価の要件や内容について見直しを検討すべき」としている。

訪問リハビリテーションはリハビリテーションマネジメント加算の見直しと、診療未実施減算の他機関医師の研修受講期限の延期も提案。さらに、診療報酬の在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料では、退院日から3カ月間は週12回まで算定できることも踏まえ、退院直後のリハビリを充実する方向から、訪問リハビリの上限回数(現行は週6回)の見直しを提案した。一方、介護予防訪問リハビリテーションの長期期間利用の実態を問題視。長期間利用の場合のサービス提供への評価(適正化)も課題として掲げている。

次期改定は「算定率が高い加算」の包括という適正化財源により「算定率が低い加算」の算定要件見直し改定となる見込みだ。

(顧問 宮坂 佳紀)

双方にとって良き“ルール”とは

「京都は縦に長い」とよく言われる。京都府のホームページによると、近畿地方の中央部から日本海にむけて北西に約140キロメートルの長く延びた形をしていて、南北両端の長さで計ると120キロメートルなのだそうだ。府内の市町村は全部で26。あらためて日本地図を片手に書き出してみると、伊根町、京丹後市、与謝野町、宮津市、舞鶴市、福知山市、綾部市、京丹波町、南丹市、亀岡市、京都市、長岡京市、向日市、大山崎町、宇治市、久御山町、城陽市、八幡市、京田辺市、宇治田原町、井手町、精華町、和束町、木津川市、笠置町、南山城村。筆者は府内南部・八幡市の事業所で勤務しているので、たとえば京丹後市と京丹波町は「どっちが市でどっちが町だった?」とか、「え?瑞穂町ってなかった?」といった具合で、すべての市町村名を瞬時に思い出すことができない自分を今回あらためて知った。
実は、八幡市内でケアマネジャーとして勤務する以前は、宇治市の事業所で長く勤めていた。過去にも経験したが今回の転職でも実感したのが“ローカルルール”である。細かく書くことは控えるが、「へえ~!」「へえ~!」と何度言葉に出したことか。ケアマネジメントに必要な手続きを進めるうえで、提出書類の枚数が増えたり減ったり。「保険者が変わるといろいろと違うこともあるのだなぁ」とつくづく思ったものだが、仕事で市役所に足を運ぶごとに“わが町(市)流”に慣れていっている自分に気付く。このメールマガジンを読んでくださっている会員のみなさんのなかにも筆者と同じような経験をされた方も少なからずおられるのではないだろうか。
さて、そんななか、今年5月に【人生100年時代戦略本部(自由民主党政務調査会)】が『人生100年時代の社会保障改革ビジョン』を取りまとめられ、社会保障制度における“支える側と支えられる側のリバランスの追求”、具体的な内容としては、介護分野において、関係書類の大幅な削減やペーパーレス化による現場の事務負担の軽減を提言。さらに、自治体が独自に定めているいわゆる“ローカルルール”についても、撤廃することを打ち出している。
“ローカルルール”については、さかのぼって4月に同党厚生労働部会のプロジェクトチームが、保険者(自治体)ごとに異なっている書式について統一する検討を行うよう、厚生労働省に要請しているので、同省が年内にまとめると思われる当面の具体策が私たちケアマネジャーにとってどのような内容になるのか、26市町村および京都市内の各行政区においても、その実感を味わいたいものだ。

(理事 北野 太朗)

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