138号 2019/08

ケアマネニュース(19年9月号)
「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

8月末に開催された厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会は、次期介護保険制度改正に向けた議論を本格的に開始した。今回は「給付と負担」の検討項目について概説する。

□社会保険医療協議会・介護保険部会が2021年度介護保険制度改正の議論本格化―
―「給付と負担」など8つのテーマに注目

8月29日、厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会(部会)は、次期介護保険制度改正に向けた議論を本格的に開始した。これまでの議論や前回改正で積み残した課題を踏まえて論点を整理し、介護保険制度を巡るさまざまな検討事項を提示。今後は「高齢者の介護保険」という制度の根幹の見直しも考慮に入れて議論を進め、給付と負担の在り方などを幅広く検討する見通しだ。年末の取りまとめに向けて、テーマごとに月1~2回のペースで会合を開く予定。

厚労省が示した検討事項では、給付と負担の在り方について、1)被保険者・受給者範囲、2)補足給付に関する給付の在り方、3)多床室の室料負担、4)ケアマネジメントに関する給付の在り方、5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方、6)高額介護サービス費、7)「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準、8)現金給付―の8つの課題について検討することになっている。被保険者・受給者範囲では、「介護保険制度の普遍化」を目指すべきか、「高齢者の介護保険」を維持するべきかを特に論点として挙げている。

(参考)持続可能な制度の再構築・介護現場の革新(給付と負担)(今後の検討課題のみ抜粋)
今後の検討
○介護保険制度は、その創設から19年が経ち、サービス利用者は制度創設時の3倍を超え、介護サービスの提供事業所数も着実に増加し、介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着、発展してきている。
○一方、高齢化に伴い、介護費用の総額も制度創設時から約3倍の11.7兆円(令和元年度予算ベース)になるとともに、第1号保険料の全国平均は6,000円弱となり、2040年度には9,000円程度に達することが見込まれる状況にある。
○こうした状況の中で、要介護状態等の軽減・悪化の防止といった制度の理念を堅持し、必要なサービスを提供していくと同時に、給付と負担のバランスを図りつつ、保険料、公費及び利用者負担の適切な組み合わせにより、制度の持続可能性を高めていくことが重要な課題となっている。
〇前回の制度改正(平成29年介護保険法改正)に向けた社会保障審議会介護保険部会における議論や、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定。以下「骨太方針2018」という。)、「新経済・財政再生計画改革工程表2018」(平成30年12月20日経済財政諮問会議決定。以下「改革工程表2018」という。)及び「骨太方針2019」を踏まえ、以下の課題について検討を行う。
(1)被保険者・受給者範囲

(2)補足給付に関する給付の在り方

(3)多床室の室料負担

(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方

(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方

(6)高額介護サービス費

(7)「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準

(8)現金給付

□ケアマネジメントに関する給付の在り方の論点――居宅介護支援の請求事業所数、利用者数は年々増加

給付の在り方で気になる項目は「ケアマネジメントの利用者負担導入の可否」だ。ケアマネジメントに関する給付の在り方については、これまでも議論されてきており、1)制度創設10年となる平成22年の介護保険部会意見において、利用者負担について言及がされ、利用者負担導入に関する賛成・反対の両方の意見が付され、2)平成23年の社会保障・税一体改革の検討の中で、介護分野の議論の整理がとりまとめられた際にも、賛成・反対の両論併記とされている。さらに3)平成25年の介護保険部会意見では「ケアマネジメントの利用者負担の導入などついて検討を行っていく必要がある。」とされた。4)また、平成28年12月の介護保険部会意見においても引き続き両論併記とされたうえで、「ケアマネジメントに関する利用者負担についても様々な意見があり、ケアマネジメントの在り方とあわせて引き続き検討を行うことが適当である」といわば継続審議とされてきた。さらに骨太方針2018や改革工程表2018において、介護のケアプラン作成について、給付の在り方を検討する旨の内容が盛り込まれている。

部会で提示された論点は「ケアマネジメントに関する給付の在り方について、これまでの議論等の経緯や、居宅介護支援(ケアマネジメント)の実施状況、自立支援・重度化防止の実現に向けた質の高いケアマネジメントの実現等の観点を踏まえ、どのように考えるか」となっており、具体的な手法までは明示されていない。ただ、居宅介護支援の請求事業所数、利用者数は年々増加しており、平成30年4月において約4万事業所、約265万人との数値も報告されており、社会保障制度改革の目玉となることは間違いない。今後も部会の議論に注目していただきたい。

(顧問 宮坂 佳紀)


10月からの消費増税

2019年10月より消費税率が8%から10%に引き上げられます。直前に迫り、毎日のようにテレビのワイドショーなどでも増税前に購入するべきか増税後の方が得なのか、ポイント還元がどうだと連日のように放送されています。インターネットでもたくさんのコラムが見られ、もはや理解出来ないような記述もみられます。

私たちの介護の現場でも消費増税にともない、サービス事業所・施設の負担軽減のための介護報酬の引き上げも実施されます。サービス提供は非課税なのにと思い、この機会に改めて根拠を調べてみました。報酬の引き上げの理由について、介護事業者は事業運営に必要な設備・備品、食材料費等の仕入れの際には消費税を支払うのに、サービス提供は非課税なので利用者から消費税を徴収することができないからとのことです。仕入れに係る税負担がそのまま事業者負担となってしまうため、その損税分は介護報酬で手当てされることになっているとのことです。
介護報酬改定では、区分支給限度額も引き上げられ、基本報酬の改定のほか、特定処遇改善加算分の上乗せが新たな利用料に反映されます。このあたりについては、事業者ごとに説明することが必要ですが、不明点等は私たちケアマネジャーに質問があると思われますので、確認・整理しておくことも必要となります。
また、利用者側は生活の支出の負担感が増し、消費負担が増えることになります。利用内容が現状維持であれば、どこかでしわ寄せが生じることも考えられます。食費を切り詰めれば栄養状態の悪化が懸念され、趣味活動や交際費などを減らせば、社会参加意欲の低下やストレスの増大なども気になるところです。

今日の訪問時にある女性の利用者と増税の話になり、前はたくさん買いこんで置き場所に困ったり食べ物を腐らせたりしたけど、今回は何もしないと言われました。たかが2%、されど2%で、食べ物腐らせたらそれ以上使っちゃうし、と。これからは2%分、トイレットペーパー短く使うと話されました。彼女のように改めて生活を見つめる視点も大切という機会を与えてくれました。合わせて水を飲むのを2%我慢するといわれたので、それはだめだともお話しましたが。消費増税についてケアマネジャーとしてどのような点に目を配るべきかということも、もちろん大切ですが、また改めて人生の先輩からのご教授を戴く良いきっかけとなりました。

(理事 橋本 かおり)

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