136号 2019/07

ケアマネニュース(19年7月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回は厚生労働省の「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」がとりまとめた介護分野の新データベース「CHASE」の収集項目などについて紹介したい。とりわけ2018年度介護報酬改定で新設された通所介護サービスのADL維持等加算における次期改定への評価にも繋がり兼ねない内容となっている。

□ADLの指標はBarthel Index(BI)が望ましい――介護分野の新データベース「CHASE」の収集項目を盛り込んだ取りまとめ案を了承

7月4日に開催された厚生労働省の「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」は、介護分野の新データベース「CHASE」の収集項目を盛り込んだ取りまとめ案を了承した。検討会で収集項目が取りまとめられたことを受け、今後は100カ所程度の事業所を手始めに開始するモデル事業を通じてさらに収集項目の実現可能性を探る予定だ。厚労省は検討会で、これまでの議論を踏まえ、収集項目を、1)基本的な項目、2)目的に応じた項目、3)その他の項目―の3段階に整理することを提案。信頼性や妥当性などに基づき、既住歴など多くの介護サービス事業所ですでに収集している項目や、介護報酬の要件となっている項目を優先的に収集するとした。

さらに「エビデンスに基づいた自立支援・重度化防止等を進めるためには、①エビデンスに基づいた介護の実践、②科学的に妥当性のある指標等を現場から収集、蓄積し、分析すること、

③分析の成果を現場にフィードバックすることで、更なる科学的介護を推進、といった、現場・アカデミア等が一体となって科学的裏付けに基づく介護(「科学的介護」)を推進するための循環が創出できる仕組みを形成する必要がある」と強調。そのうえでCHASEでは収集する項目の選定については、以下①~③の基準にしたがって項目に優先順位をつけた。具体的には①信頼性・妥当性があり科学的測定が可能なもの、②データの収集に新たな負荷がかからないもの、③国際的に比較が可能なものとした。このうち②については、「国内で使用頻度が高く、既往歴等の多くの介護サービス事業所等において既に収集しているものや、介護報酬の評価の要件等になっているものを優先して収集の対象」とするとした。さらに③では「可能であれば、国際的に使用されている評価項目を優先することとする。具体的には、日常生活動作(ADL)の指標としてBarthel Index(BI)、栄養の指標としてBody Mass Index(BMI)、褥瘡の指標としてDESIGN-R等が望ましい」としている。③の評価指標を見る限り、2021年度介護報酬改定で新たなインセンティブ評価項目が誕生しそうだ。

科学的な裏付けが必要な項目には「認知症」も含まれている。とりまとめでは「「認知症」領域における介護事業所からの収集項目は、診断からケアの実施とその評価を一連の流れとして捉える必要がある。介護現場において、ケアニーズ等も含めて認知症の進行度を把握し、診断や状態別に適切なケアの内容を検討し実施することが重要であり、そのためには、認知症ケアの効果および認知症の身体的ケア効果を判定する項目の収集が必要である」「認知症のスクリーニングに必要な項目として、認知症の既往歴(新規診断を含む。)、認知症ケアに活かす項目として、認知症の周辺症状に係る指標であるDBD、意欲の指標であるVitality Indexについては、基本的な項目とするべきである。ただし、DBDとVitality Indexについては、並行して、項目の簡素化等、介護現場からの収集のフィージビリティ等についてモデル事業等を通じた検証が必要である」と記載した。

その他「栄養」についても「栄養領域については、最低限の科学的介護に資する客観的データを中心として、給食システムなど事業所のシステムと連携してデータ収集することを基本としつつ、入力したデータから様々な評価項目を自動計算することで、多くの評価を行うことが可能である」としている。

検討会のとりまとめを見る限り、今後の介護保険制度改正や介護報酬改定議論等において、優先順位を付け、CHASEを用いた解析結果等も生かしつつ、収集のための仕組みが検討されていくだろう。介護保険サービスのみならず予防介護サービスにおいて。CHASEを用いた科学的介護分析がいかなる影響を及ぼすのか今後の動向に注視していただきたい。

(顧問 宮坂佳紀)


介護支援専門員実務研修受講試験

 

介護支援専門員になるためには実務研修を受講する必要があるが、その実務研修を受講するためには筆記試験が必要なのは当然のこととしてご存じだと思う。というより、その過程を経て私たちは介護支援専門員になった。

今年度も京都府の介護支援専門員実務研修受講試験が10月13日(日)に開催される。申し込みの締め切りは今週月曜日に終了となった。果たして今年は何名の方が受験されるのだろうか。様々なところで受験対策講座が行われ、受験対策のテキストなどが販売されている。また、試験問題の難易度や合格率もその年によって大きく変化するため、今年がどのような状況になるのかなかなか読めないのが現状だと思う。

今までの合格者はいったい何人だったのか気になって厚生労働省のデータを探してみると、第1回~第21回(平成30年度)までの総数が受験者2,805,152 人で合格者700,007人となっている。都道府県の人口と比較してみると、受験者は広島県の全人口とほぼ同じで、合格者は高知県の全人口とほぼ同じとなる。正直パッとイメージするには大きすぎる数であるが、それだけの方が私たちと同じ介護支援専門員の門を叩いたことになる。

現在私は、法人内で受講対策講座を担当しているが、介護支援専門員になりたいという声が聞こえてこない。気になって何名かの介護職員に尋ねてみると、「繁雑な業務やさまざま覚えることが多い割に給料が高くない」「現場で利用者に関わっていたい」などの意見があった。

私が介護支援専門員の試験を受けた時には、キャリアアップの一環として介護支援専門員を取得することが1つのステータスのように考えていた。また、介護支援専門員になれば、給料が上がるといった考えもあった。ただ、現在の介護職員の処遇を考えると、処遇改善加算が付き介護支援専門員の収入より多くなっている場合もあるようだ。どちらの収入が多いから良いとかではないが、何よりも魅力がなければ介護支援専門員を目指す方は増えないだろうと思う。

福祉職員を目指す方が就職セミナーなどに参加されるが、特に大学や専門学校からの新卒の場合、いきなり介護支援専門員にはなれないため、アプローチが薄いことが少なからず影響しているのかもしれない。とは言え、介護業界全体として人材が不足している、これから更に不足してくる状況にあるため、今までにない取り組みが必要になるのではないか?そう考えると、各事業所や法人単位での取り組みから、京都府全体での取り組みに引き上げる必要があるように感じる。京都府介護支援専門員会へ求められる役割も更に増してくる中で、新たな体制でスタートを切った京都府介護支援専門員会の真価が問われる時だと思う。私たち一介護支援専門員も、実務研修受講試験を受けた時の気持ちを思い出して、一緒になって盛り上げていきたい。

(広報委員長  中嶋優)

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