110号 2018/03

110号 2018/03(PDF)

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□■2018年3月30日配信 通算110号□■
CONTENTS――――――――――――――――――――――――――
_/_/_/シリーズ 30年同時改定をうらなう(最終回)
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_/_/_/ひとこと
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■シリーズ 30年同時改定をうらなう(最終回)■
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平成30年の医療・介護同時改定に向けて最新の情報のなかからケアマネジメントに関わりが深いものを厳選し、メディカル・テン代表の宮坂佳紀氏に連載していただきます。

◆◆ケアマネジャーとして知っておきたい疑義解釈通知のポイント◆◆
◆居宅介護支援費の留意事項と疑義解釈通知の概要――退院・退所加算の取り扱いに留意
3月22日、厚生労働省はようやく、2018年度介護報酬改定の告示、算定上の留意点(通知)、疑義解釈を公表した。今回は、介護支援専門員として知っておきたい、居宅介護支援費の算定上の留意点や疑義解釈からみたポイントを紹介したい。
1.指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
(1) 管理者(主任介護支援専門員)
今回の改定により、居宅介護支援事業所の管理者要件として「主任介護支援専門員」であることが定められた。なお、平成33 年3月31 日までの間は、管理者として主任介護支援専門員以外の介護支援専門員の配置を可能とする経過措置を設けている。ただし、通知によれば「指定居宅介護支援事業所における業務管理や人材育成の取組を促進する観点から、経過措置期間の終了を待たず、管理者として主任介護支援専門員を配置することが望ましい」となっている。

(2)運営基準と介護報酬の算定上の留意点と関連
1)契約時におけるサービス内容の懇切丁寧な説明と複数事業所の紹介が義務付け
今回の改正により、利用者の意思に基づいた契約であることを確保するため、利用者やその家族に対して、利用者はケアプランに位置付ける居宅サービス事業所について、複数の事業所の紹介を求めることが可能であること等を説明することが義務づけられた。また、これに違反した場合は報酬が減額される。
通知では「指定居宅介護支援は、利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立って行われるものであり、居宅サービス計画は基準第1条の2の基本方針及び利用者の希望に基づき作成されるものである。このため、指定居宅介護支援について利用者の主体的な参加が重要であり、居宅サービス計画の作成にあたって利用者から介護支援専門員に対して複数の指定居宅サービス事業者等の紹介を求めることや、居宅サービス計画原案に位置付けた指定居宅サービス事業者等の選定理由の説明を求めることが可能であること等につき十分説明を行わなければならない。なお、この内容を利用申込者又はその家族に説明を行うに当たっては、理解が得られるよう、文書の交付に加えて口頭での説明を懇切丁寧に行うとともに、それを理解したことについて必ず利用申込者から署名を得なければならない」と定められた。
疑義解釈では「平成30 年4月以前に契約を結んでいる利用者については、次のケアプランの見直し時に説明を行うことが望ましい」となっている。

  • 入院時情報連携加算に関連して――介護支援専門員の名刺などを利用者に提出しては

今回の同時改定では医療と介護の連携強化をさらに見直した改定となった。

介護報酬の通知では「利用者が病院又は診療所に入院する場合には、利用者の居宅における日常生活上の能力や利用していた指定居宅サービス等の情報を入院先医療機関と共有することで、医療機関における利用者の退院支援に資するとともに、退院後の円滑な在宅生活への移行を支援することにもつながる。指定居宅介護支援事業者と入院先医療機関との早期からの連携を促進する観点から、利用者が病院又は診療所に入院する必要が生じた場合には担当の介護支援専門員の氏名及び連絡先を当該病院又は診療所に伝えるよう、利用者又はその家族に対し事前に協力を求める必要があることを規定するものである。なお、より実効性を高めるため、日頃から介護支援専門員の連絡先等を介護保険被保険者証や健康保険被保険者証、お薬手帳等と合わせて保管することを依頼しておくことが望ましい」となっている。したがって、各種保険証、お薬手帳と介護支援専門員の名刺を一緒に保管しておくことを利用者、家族に説明しておくことをおすすめしたい。

入院時情報連携加算(Ⅰ)と(Ⅱ)についても、3日以内、4~7日以内の入院先医療機関への情報提供(文書、訪問などは問わない)で評価された。とりわけ(Ⅰ)の3日以内の情報提供により、入院先病院での診療報酬(入退院時支援加算(Ⅰ))の退院困難な理由の選定が入院後3日以内となっており、同時改定で整合性がとれた改定となっている。

入院時情報連携加算の疑義解釈では、(問)「先方と口頭でのやりとりがない方法(FAXやメール、郵送等)により情報提供を行った場合には、送信等を行ったことが確認できれば入院時情報連携加算の算定は可能か」に対して(答)「入院先の医療機関とのより確実な連携を確保するため、医療機関とは日頃より密なコミュニケーションを図ることが重要であり、FAX等による情報提供の場合にも、先方が受け取ったことを確認するとともに、確認したことについて居宅サービス計画等に記録しておかなければならない」とされた。したがって、経過記録には算定要件となる根拠を記載されたい。

3)退院・退所加算――カンファレンス要件に留意が必要、特定事業所加算(Ⅳ)の退院・退所加算の回数方法にも注目
通知では、退院・退所加算については、「入院又は入所期間中1回(医師等からの要請により退院に向けた調整を行うための面談に参加し、必要な情報を得た上で、居宅サービス計画を作成し、居宅サービス又は地域密着型サービスの利用に関する調整を行った場合を含む)のみ算定することができる」となっている。
留意点としはてカンファレンスの定義である。病院又は診療所は「診療報酬の算定方法(平成20 年厚生労働省告示第59 号)別表第1医科診療報酬点数表の退院時共同指導料2の注3の要件を満たすもの」となっている。これは医療機関が以下の三者加算を算定できるカンファレンスに限定されている。三者とは医療機関側の参加者以外の退院後在宅サービスを担当する医師、歯科医師、看護師などと介護支援専門員をいう。

(参考)診療報酬点数表

注3 注1の場合において、入院中の保険医療機関の保険医が、当該患者の退院後の在宅療養を担う保険医療機関の保険医若しくは看護師等、保険医である歯科医師若しくはその指示を受けた歯科衛生士、保険薬局の保険薬剤師、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く。)又は居宅介護支援事業者の介護支援専門員のうちいずれか3者以上と共同して指導を行った場合に、2,000点を所定点数に加算する。

また通知によると、介護老人福祉施設など介護保険施設の退所カンファレンスは、「入所者への援助及び居宅介護支援事業者への情報提供等を行うにあたり実施された場合の会議」。ただし、介護保険施設に置くべき従業者及び入所者又はその家族が参加するものに限る」となっている。
疑義解釈では「退所施設からの参加者としては、当該施設に配置される介護支援専門員や生活相談員、支援相談員等、利用者の心身の状況や置かれている環境等について把握した上で、
居宅介護支援事業所の介護支援専門員に必要な情報提供等を行うことができる者を想定している」となっている。

関連して新設された「特定事業所加算(Ⅳ)」の今年度の算定回数における実績期間は、「平成29 年度3月における退院・退所加算の算定回数と平成30 年度4月から同年度2月までの退院・退所加算の算定に係る病院等との連携回数の合計が35 回以上である場合に要件を満たすこととする」となっている。併せてこの35回以上のカウントは、「退院・退所加算の算定実績に係る要件については、退院・退所加算の算定回数ではなく、その算定に係る病院等との連携回数の合計により、例えば、特定事業所加算(Ⅳ)を算定する年度の前々年度の3月から前年度の2月までの間において、退院・退所加算(Ⅰ)イを10 回、退院・退所加算(Ⅱ)ロを10 回、退院・退所加算(Ⅲ) を2回算定している場合は、それらの算定に係る病院等との連携回数は合計36 回であるため、要件を満たすこととなる。(編著者注=(Ⅰ)のイの連携が10回、(2)のロの連携20回、(Ⅲ)は連携回数3回で2回算定なので計連携回数36回となる。)

ちなみに特定事業所加算(Ⅳ)の「ターミナルケアマネジメント加算」の実績期間は、「平成30 年度の4月から同年度の2月までの算定回数が5回以上である場合に要件を満たすこととする」となっている。

4)特定事業所集中減算について
今回見直しされた特定事業所集中減算の対象サービスに、通所介護、地域密着型通所介護が該当するが、この取り扱いについて疑義解釈では、「平成28 年5月30 日事務連絡「居宅介護支援における特定事業所集中減算(通所介護・地域密着型通所介護)の取扱いについて」(介護保険最新情報Vol.553)において、特定事業所集中減算における通所介護及び地域密着型通所介護の紹介率の計算方法が示されているが、平成30 年度以降もこの取扱いは同様」とした。

(参考)介護保険最新情報Vol.553)

平成28年4月1日以降平成30年3月31日までの間に作成される居宅サービス計画について特定事業所集中減算の適用を判定するに当たっては、通所介護及び地域密着型通所介護(以下「通所介護等」という。)のそれぞれについて計算するのではなく、通所介護等のいずれか又は双方を位置付けた居宅サービス計画数を算出し、通所介護等について最もその紹介件数の多い法人を位置づけた居宅サービス計画の数の占める割合を計算することとして差し支えない。

5)特定事業所加算(Ⅰ)から(Ⅲ)の要件――他事業所との研修会、事例検討会など
新設された特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)(Ⅲ)において、他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施することが要件とされた。通知において、毎年度少なくとも次年度が始まるまでに事例検討会等に係る次年度の計画を定めることとされている。疑義解釈では「平成30 年度に限って以下の取り扱い」とすることが明確になっている。

・平成30 年度については、事例検討会等の概略や開催時期等を記載した簡略的な計画を同年度4月末日までに定めることとし、共同で実施する他事業所等まで記載した最終的な計画を9月末日までに定めることとする。
・なお、9月末日までに当該計画を策定していない場合には、10 月以降は特定事業所加算を算定できない。

さらに疑義解釈では、「特定事業所加算(Ⅰ)から(Ⅲ)において新たに要件とされた、他の法人が運営する居宅介護支援事業者と共同での事例検討会、研修会等については、市町村や地域の介護支援専門員の職能団体等と共同して実施した場合も評価の対象となる」とした。ただし「算定要件における「共同」とは、開催者か否かを問わず2法人以上が事例検討会等に参画することを指しており、市町村等と共同して実施する場合であっても、他の法人の居宅介護支援事業者が開催者又は参加者として事例検討会等に参画することが必要である」となっているため留意が必要である。

6)居宅サービス計画の変更について
今改定で通所介護、通所リハビリテーションなどの通所系サービス提供時間が2時間おきから1時間おきに改定された。この場合の居宅サービス計画の変更の必要性について疑義解釈では「介護報酬算定上のサービス提供時間区分が変更になる場合(例えば、サービス提供時間が7時間以上9時間未満が、7時間以上8時間未満)であっても、サービスの内容及び提供時間に変更が無ければ、居宅サービス計画の変更を行う必要はない。」「一方で、今回の時間区分の変更を契機に、利用者のニーズを踏まえた適切なアセスメントに基づき、これまで提供されてきた介護サービス等の内容をあらためて見直した結果、居宅サービス計画を変更する必要が生じた場合は、通常の変更と同様のプロセスが必要となる」となっている。

7)訪問介護の生活援助回数が平均を上回る場合の取り扱い――ケアプランの届出は10月実施分から、ケアプラン上明確になれば理由書は不要
今回の改定で、生活援助回数が厚労省の定める平均回数を超過した場合、ケアプランを市町村などに届け出ることになった。本件については厚労省は以下のパブリックコメントを発出している。

(参考)厚生労働大臣が定める回数及び訪問介護(仮称)案について

1.趣旨

○ 訪問介護における生活援助中心型サービスについては、社会保障審議会介護給付費分科会における議論を踏まえ、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、
・ 通常の利用状況からかけ離れた利用回数となっているケアプランについて、市町村への届出を 義務付け、
・ そのケアプランについて、市町村が地域ケア会議の開催等により検証を行うこととしている。

○ これは、生活援助中心型サービスについては
・ 必要以上のサービス提供を招きやすい構造的な課題があるという指摘がある一方で、
・ 利用者において、様々な事情を抱える場合もあることを踏まえて 利用者の自立支援にとって、より良いサービスとするため、ケアマネジャーの視点だけではなく、 多職種協働による検証を行い、必要に応じて、ケアプランの内容の是正を促すものである。

○ なお、平成 30 年度介護報酬改定では、訪問介護について、上記の取組のほか、身体介護に重点を置いて報酬を引き上げるとともに、外部のリハビリ専門職等と連携した取り組みの評価、身体介護として行う自立支援に資するような見守り援助の明確化により、自立支援・重度化防止に資するサ ービスの推進・評価をすることとしている。

2.概要

○ 上記のケアプランの届出については、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成 11 年厚生省令第 38 号)第 13 条第 18 号の2において、介護支援専門員は、居宅サービス計画に 厚生労働大臣が定める回数以上の訪問介護(厚生労働大臣が定めるものに限る。)を位置付ける場合に、当該居宅サービス計画を市町村に届け出ることとされている。

○ 届出の対象となる訪問介護の種類は生活援助中心型サービスとし、届出の要否の基準となる回数は、要介護度別の「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)(※)」を基準とする。 (※) 全国での利用回数の標準偏差に2を乗じた回数

○ 具体的には、直近の1年間(平成 28 年 10 月~平成 29 年9月分)の給付実績(全国)を基に、各月における要介護度別の「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)」の回数を算出した上で、要介護度別に最大値となる月の回数を用いることとし、要介護状態区分に応じてそれぞれ1月あたり以 下の回数とする。
・要介護1 27 回 ・要介護2 34 回 ・要介護3 43 回 ・要介護4 38 回 ・要介護5 31 回

本件について、通知では「訪問介護費の生活援助(生活援助が中心である指定訪問介護に限る。)の利用回数が統計的に見て通常の居宅サービス計画よりかけ離れている場合には、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、市町村が確認し、必要に応じて是正を促していくことが適当である。このため、一定回数以上の訪問介護を居宅サービス計画に位置づける場合にその必要性を当該居宅サービス計画に記載するとともに、当該居宅サービス計画を市町村に届け出なければならないことを規定するものである。届出にあたっては、当該月において作成又は変更(軽微な変更を除く。)した居宅サービス計画のうち一定回数以上の訪問介護を位置づけたものについて、翌月の末日までに市町村に届け出ることとする。なお、ここで言う当該月において作成又は変更した居宅サービス計画とは、当該月において利用者の同意を得て交付をした居宅サービス計画をいう。なお、基準第13 条第18 号の2については、平成30 年10 月1日より施行されるため、同年10 月以降に作成又は変更した居宅サービス計画について届出を行うこと」となっている。

また疑義解釈では、「当該利用者について、家族の支援を受けられない状況や認知症等の症状があることその他の事情により、訪問介護(生活援助中心型)の利用が必要である理由が居宅サービス計画の記載内容から分かる場合には、当該居宅サービス計画のみを提出すれば足り、別途理由書の提出を求めるものではない」となっている。

8)利用者自身によるサービスの選択
通知では「介護支援専門員は、利用者自身がサービスを選択することを基本に、これを支援するものである。このため、介護支援専門員は、利用者によるサービスの選択に資するよう、利用者から居宅サービス計画案の作成にあたって複数の指定居宅サービス事業者等の紹介の求めがあった場合等には誠実に対応するとともに、居宅サービス計画案を利用者に提示する際には、当該利用者が居住する地域の指定居宅サービス事業者等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者又はその家族に対して提供するものとする。したがって、特定の指定居宅サービス事業者に不当に偏した情報を提供するようなことや、利用者の選択を求めることなく同一の事業主体のサービスのみによる居宅サービス計画原案を最初から提示するようなことがあってはならない。また、例えば集合住宅等において、特定の指定居宅サービス事業者のサービスを利用することを、選択の機会を与えることなく入居条件とするようなことはあってはならないが、居宅サービス計画についても、利用者の意思に反して、集合住宅と同一敷地内等の指定居宅サービス事業者のみを居宅サービス計画に位置付けるようなことはあってはならない」となっている。

9)サービス担当者会議等による専門的意見の聴取
通知では「介護支援専門員は、効果的かつ実現可能な質の高い居宅サービス計画とするため、各サービスが共通の目標を達成するために具体的なサービスの内容として何ができるかなどについて、利用者やその家族、居宅サービス計画原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者からなるサービス担当者会議の開催により、利用者の状況等に関する情報を当該担当者と共有するとともに、専門的な見地からの意見を求め調整を図ることが重要である。なお、利用者やその家族の参加が望ましくない場合(家庭内暴力等)には、必ずしも参加を求めるものではないことに留意されたい。また、やむを得ない理由がある場合については、サービス担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとしているが、この場合にも、緊密に相互の情報交換を行うことにより、利用者の状況等についての情報や居宅サービス計画原案の内容を共有できるようにする必要がある。なお、ここでいうやむを得ない理由がある場合とは、利用者(末期の悪性腫瘍の患者に限る。)の心身の状況等により、主治の医師又は歯科医師(以下「主治の医師等」という。)の意見を勘案して必要と認める場合のほか、開催の日程調整を行ったが、サービス担当者の事由により、サービス担当者会議への参加が得られなかった場合、居宅サービス計画の変更であって、利用者の状態に大きな変化が見られない等における軽微な変更の場合等が想定される。

また、末期の悪性腫瘍の利用者について必要と認める場合とは、主治の医師等が日常生活上の障害が1ヶ月以内に出現すると判断した時点以降において、主治の医師等の助言を得た上で、介護支援専門員がサービス担当者に対する照会等により意見を求めることが必要と判断した場合を想定している。なお、ここでいう「主治の医師等」とは、利用者の最新の心身の状態、受診中の医療機関、投薬内容等を一元的に把握している医師であり、要介護認定の申請のために主治医意見書を記載した医師に限定されないことから、利用者又はその家族等に確認する方法等により、適切に対応すること。また、サービス種類や利用回数の変更等を利用者に状態変化が生じるたびに迅速に行っていくことが求められるため、日常生活上の障害が出現する前に、今後利用が必要と見込まれる指定居宅サービス等の担当者を含めた関係者を招集した上で、予測される状態変化と支援の方向性について関係者間で共有しておくことが望ましい」となっているため留意していただきたい。

10)主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師への情報提供について
今回の改定で訪問介護のサービス提供責任者は「利用者の服薬状況、口腔機能その他の利用者の心身又は生活の状況に係る情報」は必要に応じて、介護支援専門員に情報提供することが義務つけられた。また介護支援専門員は「利用者の服薬状況、口腔機能その他の利用者の心身又は生活の状況に係る情報は、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師が医療サービスの必要性等を検討するにあたり有効な情報である。このため、指定居宅介護支援の提供に当たり、例えば、

・薬が大量に余っている又は複数回分の薬を一度に服用している
・薬の服用を拒絶している
・使いきらないうちに新たに薬が処方されている
・口臭や口腔内出血がある
・体重の増減が推測される見た目の変化がある
・食事量や食事回数に変化がある
・下痢や便秘が続いている
・皮膚が乾燥していたり湿疹等がある
・リハビリテーションの提供が必要と思われる状態にあるにも関わらず提供されていない状況

等の利用者の心身又は生活状況に係る情報を得た場合は、それらの情報のうち、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師の助言が必要であると介護支援専門員が判断したものについて、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供するものとする。なお、ここでいう「主治の医師」については、要介護認定の申請のために主治医意見書を記載した医師に限定されないことに留意すること」が通知で定められている。

関連して疑義解釈では「通知に記載のある事項のほか、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師への情報提供が必要な情報については、主治の医師若しくは歯科医師又は薬剤師の助言が必要かどうかをもとに介護支援専門員が判断するものとする。なお、基準第13 条第13 号の2は、日頃の居宅介護支援の業務において介護支援専門員が把握したことを情報提供するものであり、当該規定の追加により利用者に係る情報収集について新たに業務負担を求めるものではない」とされた。

11)主治の医師等の意見等について
通知では「訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護サービスを利用する場合に限る。)及び看護小規模多機能型居宅介護(訪問看護サービスを利用する場合に限る。)については、主治の医師等がその必要性を認めたものに限られるものであることから、介護支援専門員は、これらの医療サービスを居宅サービス計画に位置付ける場合にあっては主治の医師等の指示があることを確認しなければならない。このため、利用者がこれらの医療サービスを希望している場合その他必要な場合には、介護支援専門員は、あらかじめ、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めるとともに、主治の医師等とのより円滑な連携に資するよう、当該意見を踏まえて作成した居宅サービス計画については、意見を求めた主治の医師等に交付しなければならない。なお、交付の方法については、対面のほか、郵送やメール等によることも差し支えない。また、ここで意見を求める「主治の医師等」については、要介護認定の申請のために主治医意見書を記載した医師に限定されないことに留意する」こととされている。

おわりに―――ケアマネジャーは医療と介護のつなぎ目を担う重要な役割

本稿の疑義解釈10)で厚労省は「新たに業務負担を求めるものではない」とした。しかし、どう考えても、今改定でケアマネジャーの業務は拡大されていることは否めない。また、地域包括ケアシステムのさらなる構築に向け、今後ますますケアマネジャーは医療と介護のつなぎ目を担う重要な役割を担うことになる。

(本稿は、居宅介護支援費などの取り扱いに関連する項目のみを列挙いたしましたが、他にもリハビリテーションや機能訓練、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所系サービスなどケアマネジャーとして知っておきたい項目は多数あります。したがって、関連告示、解釈通知、疑義解釈などをご熟読いただき、明日からの業務に活用していただきたくよろしくお願いいたします。長期間ご愛読いただきまして誠にありがとうございました。)

 

宮坂 佳紀(メディカル・テン代表/公益社団法人京都府介護支援専門員会顧問)

■コミュニケーションの質について考える■

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ケアの現場で仕事していた頃、2006年に日本に紹介された『わたし大好き―ひざを寄せて読む絵本』がお気に入りだった。この絵本は、作者のリディア・バーディックさんが認知症になられたお母さんのために作られたもので、当初は一枚一枚バラバラの絵を一緒に見ながら、言葉にすでに障害があって話せなくなっていたお母さんが徐々に言葉を取り戻され、その言葉を丁寧にひろっていかれて絵本として出来あがったと聞く。私は、あるとき、小規模デイサービスに来られているご利用者の方々と一緒に読んでみることにした。とてもオシャレで少しプライドが高く気難しいところのあるAさん、年下のご主人との暮らしをユーモアたっぷりに話してくれるBさん。もの忘れがあるお二人と私の3人は、絵本の副題よろしく3人で膝を寄せあって、ときには頭を寄せて、またときには手から手へとまわしながら絵本を読んだ。

田舎の田園風景が描かれたページで「私の田舎にもこういう風景があったの。家で牛や馬も、鶏も犬も飼っていたわ」というBさんに対して、「こういうところに主人とよくドライブに行っていたの。写真も好きだったので、新しいカメラが出るたびに買い換えていたのよ。最近は行ってないかなぁ、ドライブ」というAさん。家の庭が描かれたページでは「この赤いお花、何かしら?そう!私の家の庭には赤いハナミズキがあるのよ」とAさんが話し始めると、「そういえば、私もこのあいだハナミズキの苗を植えようと思ったのだけど、なかなか赤いハナミズキが売ってなくて。土のある生活っていいと思わない?」とBさん続く。

またあるページでは「私は主人を早く亡くしているから、こういうのって(並んで座っている場面)ちょっと羨ましいの。Bさんは今でも旦那さんがお元気でいいわね」とのAさんの言葉を受けて、「え?そうなの?」と驚くBさん。そっとBさんの手に自分の手を添えながら「今年の法要は私もがんばってみようと思う」とAさん。

ここには書ききれないほどの会話のやりとりが、たった一冊の絵本によってひろがったのだが、絵のテーマから湧き出た感情の共有をおふたりでされていたことにとても大きな意味があったように思う。

認知症が深くなってコミュニケーションの障害が出てくると、記憶の連続性が維持できないことも相まって会話として成り立つようなやりとりがままならないこともある。Bさんは毎回のようにご主人との馴れ初め話をされ、Aさんは同居されているご家族のことをたまに忘れて“独居”となることもしばしば。おふたりの近しい人たちにとってはやはりご本人が何度も同じことを言われ、それを聞くことは多少なりともストレスなのだろう。ただ、言いたいことを最後まで話せる場がある、最後まで聞いてくれる人(仲間)がいるということは、認知症があってもなくても、人にとってとても大事な環境だとあらためて思う。

当時の私が感じたことは、“絵本というツールは、人と人、ケアをする側と受け手との垣根を低くできるかもしれない”という感触だ。

パーソン・センタード・ケアに象徴されるように、個別ケアにおいてはお一人おひとりの今のご様子だけを知るのではなくて、その方の今までの生活史や趣味、嗜好などなど世界にたったひとりの○○さんのたったひとつの情報をつかんでおかないと、その方に合ったオーダーメードケアを提供することはできない。けれども、たとえば、その方の生活史をお聞きする場面でいわゆる“聞き取り調査票”のようなものを手元にすると、いつの間にかこちら側が質問ばっかりしてしまっていることも珍しくない。私たちケアマネジャーは、ケアマネジメントプロセスの一連の流れのなかでたくさんの情報をお聴きし、その方の想いや願いが叶うようなケアプランを作成していく。どうすれば想いを語っていただけるのか、願いを聴きだすためにその方にとって最善の方法は何か。絵本はコミュニケーションの質を高める手段としての一例だ。絵本以外にも、それぞれの人に、それぞれの場面で有効に働く手段があると思う。そして、手段をきっかけとして“なんのためにそれを使うのか?”。ケアマネジメント、対人援助の本分から外れず、コミュニケーションの質が少しでも高まるよう愚直に努めたいと思う。

(理事 北野 太朗)

 

 

■研修のご案内■

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◎【企画研修】《会員限定》運営基準に沿った居宅介護支援の実務~法令遵守のためにするべきこと~
日 時:平成30年4月24日(火)18:30 ~ 20:30
場 所:ハートピア京都3階大会議室(京都市中京区清水町375)
講 師:井上 基 氏(公益社団法人京都府介護支援専門員会会長)
★新しく仕事を始めるケアマネジャーを対象とした研修です。ケアマネジャーの業務プロセスを実地指導や自主点検表の内容にも触れながら解説します。
詳細はこちら↓↓↓
http://www.kyotocm.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/01/kikaku300424.pdf

◎【企画研修】ここまでできる在宅医療
日 時:平成30年5月16日(水)14:00~16:30
場 所:ハートピア京都3階大会議室(京都市中京区清水町375)
講 師:守上 佳樹 氏(医療法人双樹会よしき往診クリニック院長)
★どのような医療処置まで在宅訪問診療で対応できるのか、日々病態が変化する利用者の医療・介護連携について学びます。
詳細はこちら↓↓↓
http://www.kyotocm.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/03/kikaku300516.pdf

◎研究大会にむけて研究発表を学ぶ~日頃の実践を事例研究につなげる~
〔1日目〕平成30年6月9日(土)10:30~16:30
登録会館2階ホール(京都市中京区烏丸通御池上ル二条殿町 546-2)
〔2日目〕平成30年8月11日(土・祝)10:30~16:30
ハートピア京都4階第4・5会議室(京都市中京区清水町375)
講 師:福富 昌城 氏(花園大学社会福祉学部教授)
★本研修は2日間のカリキュラムです。1日だけの受講はできません。
★2日間の研修を通して事例研究の手順や研究事例の選出、抄録やパワーポイントの作成、ポスターセッションやプレゼンテーションの方法等が学べる絶好の機会です。
詳細はこちら↓↓↓
http://www.kyotocm.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/01/kenkyutaikai300609-0811.pdf

◎【実務研修受講者対象研修】自主点検表をひもとく~運営基準の初心者向け講座~
<南部>平成30年6月25日(月)18:00~20:00
ハートピア京都3階大会議室(京都市中京区清水町375)
<北部>平成30年7月12日(木)14:30~16:30
中丹勤労者福祉会館大会議室(福知山市昭和新町105番地)
講 師:井上 基 氏(公益社団法人京都府介護支援専門員会会長)
★実務研修を修了され、新しくケアマネジャーとして活躍される皆様を応援する特別研修です。実務研修を修了するだけでは習得することができないケアマネジャーの実務を学びます。
詳細はこちら↓↓↓
http://www.kyotocm.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/03/member300625_300712.pdf

 

◆公益社団法人京都府介護支援専門員会監修「介護支援専門員実習研修実習ガイドブック」(中央法規出版株式会社)のご案内

介護支援専門員実務研修における実習について、ガイドラインに準拠して、実習内容、習得目標、留意点、姿勢・態度、振り返りなどのポイントを明快に解説しています。
詳細は当会ホームページ「介護支援専門員実習研修実習ガイドブック」をご覧ください。
↓↓↓
http://www.kyotocm.jp/references/jisshugaidobukku/

■平成30年度会員証のご案内■

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4月中旬にケアマネ・ポート57号(2018.5月号)がお手元に届きます。
平成30年3月15日(木)までに平成30年度会費を納入いただいた会員様に会員証を同封しております。それ以降にご入金の方には発行できませんのでご注意ください。平成30年度会費未納の会員様につきましては、今後のサービスが停止となりますのでお早めのご納入をお願いいたします。

■当会ホームページについて■

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研修情報やお知らせ、他団体様からの研修会・講演会などのご案内を掲載し随時更新しております。
http://www.kyotocm.jp/

■ひとこと■
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例年より早く春の陽気が訪れ、府内の桜の名所で“桜まつり”や“ライトアップ”などの情報が聞かれる。多くの生物の芽生え・発生と共に人々の動きも活発になり、私自身も清々しく、わくわくした気持ちになっている。
一方でこの時期は、進学や就職・転勤・人事異動などで、不安やストレスを感じる方も多いだろう。そして花粉症の人は、本当につらい思いをされていると思う。
ケアマネジャーの実務では、介護報酬改定の対応で業務システムの登録修正をしたり、利用票を作り直す作業に追われている。先日の報酬改定説明会で販売された「介護報酬クイックマスター2018」と、にらめっこの状態だ。そして居宅介護支援の権限委譲で、市町村に提出することになった事業所の変更届けの作成等に戸惑っている。
暖かい陽気、新たな出会いや生活のスタートに期待が膨らむ一方で、環境の変化は心身の負担となってしまうことがある。同様に、今回の報酬改定で期待される部分もあれば、慣れない対応でストレスを感じるケアマネジャーも多いだろう。そのストレスも、ある程度準備・学習をしておくことで適度な良い刺激として捉え、求められている医療介護連携の強化などに力を入れたいと思う。

(理事 中吉 克則)

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