ケアマネメールニュース(2021年11月号)
「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
2022年4月は、2年に1回見直しされる診療報酬改定を迎える。今回もケアマネジャーとして知っておきたい「2022年度診療報酬改定動向」のうち「入退院支援加算とヤングケアラーの早期発見の評価」についてポイント解説する。
福祉、介護、医療、教育等の関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見し適切な支援策――入院診療報酬の入退院支援加算で評価
一部新聞報道でも取り上げられたが、厚生労働省は2022年度診療報酬改定で「ヤングケアラー」の早期発見、関係部署への連絡などを評価すると報じられた。どのように評価するのだろうと思われた方も少なくはないだろう。厚生労働省と文部科学省のプロジェクトチームの取りまとめによれば、ヤングケアラーとは「法令上の定義はないが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子どもを指す」という。プロジェクトチームでは課題として福祉、介護、医療、教育等の関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるための取組の推進を挙げている。
診療報酬では入院の加算点数として「入退院支援加算(退院時1回)」が評価されている。算定要件や施設基準は以下のとおり。常勤専従や専任の看護師と社会福祉士の配置や居宅介護支援費の入院時情報提供加算の算定要件とリンクし、入院後3日以内または7日以内に退院困難な患者を抽出することなどが定められている。併せて地域の介護保険事業所や医療機関など連携施設20箇所以上と年3回以上面会することも要件だ。注目すべきは、連携施設数が多いほど平均在院日数が短いという調査結果もある。算定病院は急性期、回復期、慢性期に関わらず増加傾向にある。
入退院支援加算の主な算定要件と施設基準
項目 | 入退院支援加算1 | 入退院支援加算2 |
診療報酬(1回につき) | 一般病棟入院基本料等の場合 600点 療養病棟入院基本料等の場合 1,200点 | 一般病棟入院基本料等の場合 190点 療養病棟入院基本料等の場合 635点 |
退院困難な要因 | ア. 悪性腫瘍、認知症又は誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症 イ. 緊急入院 ウ. 要介護状態の疑いがあるが要介護認定が未申請であること エ. 家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがある オ. 生活困窮者 カ. 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要 キ. 排泄に介助を要する ク. 同居の有無に関わらず、必要な養育又は介を十分に提供できる状況にない ケ. 退院後に医療処置が必要 コ. 入退院を繰り返していること サ. その他患者の状況から判断して上記要因に準ずると認められるもの |
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①退院困難な患者の抽出 ②・患者・家族との面談 ・退院支援計画の着手 ③多職種によるカンファレンスの実施 |
①原則入院後3日以内に退院困難な患者を抽出 ②・原則として、患者・家族との面談は 一般病棟入院基本料等は7日以内 療養病棟入院基本料等は14日以内に実施 ・入院後7日以内に退院支援計画作成に着手 ③入院後7日以内にカンファレンスを実施 |
①原則入院後7日以内に退院困難な患者を抽出 ②・できるだけ早期に患者・家族と面談 ・入院後7日以内に退院支援計画作成に着手 ③できるだけ早期にカンファレンスを実施 |
入退院支援部門の設置 | 入退院支援及び地域連携業務を担う部門の設置 | |
入退院支援部門の人員配置 | 入退院支援及び地域連携業務の十分な経験を有する専従の看護師又は社会福祉士が1名以上 かつ、①もしくは②(※週3日以上常態として勤務しており、所定労働時間が22時間以上の非常勤2名以上の組み合わせも可) ①専従の看護師が配置されている場合は、専任の社会福祉士を配置 ②専従の社会福祉士が配置されている場合は、専任の看護師を配置 |
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病棟への入退院支援職員の配置 | 各病棟に入退院支援等の業務に専従として従事する専任の看護師又は社会福祉士を配置(2病棟に1名以上) | |
連携機関との面会 | 連携機関(保険医療機関、介護保険法に定める居宅サービス業者等)の数が20以上かつ、連携機関の職員と面会を年3回以上実施 | |
介護保険サービスとの連携 | ケアマネジャーや相談支援専門員との連携等の実績 |
診療報酬改定について議論をしている中央社会保険医療協議会(中医協)が11月12日に開催された。この中医協総会で、厚生労働省から入退院支援についての課題として「ヤングケアラーは家庭内のデリケートな問題であること等から表面化しにくく、福祉、介護、医療、教育等の関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるための取組の推進が必要である」ことを掲げた。論点でも「ヤングケアラーについては、早期発見や、適切な支援へつなげることが必要であり、関係機関の連携が重要とされていることから、退院困難な要因を有している患者を抽出し、地域の関係者と協力する仕組みを評価している入退院支援加算において、どのように考えるか」と提案したのだ。中医協では診療側委員も支払い側委員とも、方向性には支持する意見が目立ったという。委員からは、ヤングケアラーの支援策について「幅広い取り組みが必要。診療報酬以外の支援策を含めて総合的に検討すべき」と求めたと報じられている。具体的にどのような形で落ち着くだろうか、さらにケアマネジャーにも大きく関連する内容であり今後の動向に注視していただきたい。
(顧問 宮坂 佳紀)
【連載企画】各ブロックの地域活動について(第10回:丹後ブロック)
2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。
第10回となる今回ご紹介させていただくのは、丹後ブロックでの活動です。
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丹後ブロックの活動状況を紹介させていただきます。
丹後ブロックは、宮津市、京丹後市、与謝野町、伊根町の2市2町で構成されており、各市町から選出したブロック委員8名で活動しております。ブロック理事の選出はできていませんが、近隣地域のブロック理事や事務局と連携をとり活動を進めています。
活動内容としては、年2回のブロック研修会を開催し、ブロック会員や地域のケアマネジャーの皆様に役立てていただける内容を企画していましたが、昨年は、コロナ禍でブロック会議と研修会を開催することができませんでした。
今後もしばらく、対面研修は難しい状況にあると考え、コロナ禍でもできる活動についてブロック委員で話し合い、新しい活動方法として10月27日(水)にオンライン研修を開催しました。初めての試みでしたので諸々の課題はありましたが、多くの方に参加いただくことができました。丹後地域は以前から、学びの地域格差が課題でした。研修参加のための距離、移動の問題は大きく、希望する研修も諦めざるをえない状況がありました。しかし、Web環境があればオンラインで研修に参加することができるようになり、丹後地域におけるケアマネジャーが学びの機会を得、資質向上に繋がるものと感じました。コロナ禍においてもプラスの産物となりました。今後も対面研修とオンライン研修のそれぞれの良さを活かし、研修企画、地域のケアマネジャーとの交流を拡げる活動を行っていきたいと思います。
他の活動としては、行政や地域の医療関係者と地域包括ケアシステム構築の為の活動に参画し、昨年度は、地域で活用する入退院時情報提供書の見直しと統一様式の作成を行い、丹後地域にある6病院と連携して丹後版在宅連携マニュアルの作成も行い、運用開始に至りました。コロナ禍で、面会制限や対面カンファレンス開催が難しい中で、地域6病院のスタッフと実際の運用について説明会を実施することが出来ない状態で、活用が始まってしまいましたが、作成を通して各関係機関や関係職種の皆様から協力を得た事により、普段つながりの少ない方とも連携し繋がることができたと思います。
地域包括ケアシステムの構築の為に、各地域の医師会、薬剤師会をはじめ保健所、各市町村、地域の医療、介護の関係者と連携して、ACPの取り組みを地域ですすめる取り組みが行われており、人生の最終段階を見据え、ACPにおけるケアマネジャーの役割が大変重要なものと考えています。ご本人の想いに寄り添い、在宅看取りを積極的にすすめる取り組みが各地域でなされています。
丹後地域の強みは、行政・医療・介護の関係者が長年積み上げてきた顔の見える関係づくりが大きいものと思っています。さまざまな課題や取り組みを一丸となって進めていくことが出来る地域力が丹後にはあるのではないかと思っています。
昨今、介護人材の不足が叫ばれ、丹後地域でも福祉業界の働き手の不足からサービス料の減少に繋がり、重大な課題になりつつあります。ケアマネジャーも同様に担い手となる人材の育成課題に直面しつつあります。地域のケアマネジャーの皆様の声を聴き、ともに学び、ケアマネジメント力を高めていくために、丹後ブロック活動が少しでも貢献できるよう、今後とも活動を続けていきたいと考えております。
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地理的条件により、学びの機会が均等に得られないというのは、丹後ブロックの切実な課題だと思います。
コロナ禍にあってさまざまな困難に直面してきたわたしたちですが、Zoomなどを活用してオンライン環境を整えようと試みてきたことは、効率的な会議運営の促進だけでなく、地理的条件にかかわらず平等に研修に参加することをも可能にしてくれました。コロナ禍の思わぬ副産物のようでもありますが、ケアマネジャーの不屈の精神の賜であると思います。
また、「地域包括ケアシステム」構築のための書式整理や連携マニュアル作成・ACPについての取り組みも行っておられるとのこと。それらの成果物はまことに価値あるものですが、その取り組みのプロセスにおいては、職域を超えた協働作業があったわけで、その間に育まれた多職種間の信頼関係や共通認識は、成果物同様に、あるいはそれ以上に尊いものといえるのではないでしょうか。
丹後ブロックの活動報告を受けて、ケアマネジャーが地域に貢献できる可能性について、あらためて意を強くしました。
(理事 西村 聡)