169号 2021/07

ケアマネメールニュース(2021年7月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

 今月はケアマネジャーとして知っておきたい8月からの施設入所者などの食費引上げなどの話題と、新型コロナ感染症対策として施設向けに再発出された厚生労働省通知のポイントを紹介したい。

2021年4月介護報酬改定を迎えて(4)「施設入所者とショートステイ利用者の食費引上げが8月1日から実施」

2021年4月介護報酬改定時には判明していたものの、8月から第2弾といえる改定が適用される。それは介護保険施設入所者とショートステイ利用者の食費負担額の変更だ。居住費(滞在費)は据え置かれるものの、補足給付としての食費は、これまでの年間所得額とは別に資産要件が新設されたもの。資産要件の変更では、補⾜給付の対象となる預貯⾦額の基準が各段階で引き下げられた。現行の資産要件は単身1,000万円、夫婦2,000万円。これが公的年金収入等に応じて以下に細分化される。
(以下表は厚生労働省ホームページ「介護保険施設における負担限度額が変わります」より抜粋)

項目/金額(認定要件) 現行 2021年8月~
年金収入等80万円以下(第2段階) 単身1000万円
夫婦2000万円
単身650万円、夫婦1650万円
年金収入等80万円超120万円以下(第3段階①) 単身550万円、夫婦1550万円
年金収入等120万円超(第3段階②) 単身500万円、夫婦1500万円

預貯金額の取り扱いの留意点として、今年8月から見直しされるため「申請時点」の預貯金額ではなく、8月1日時点での預貯金額の見込み額が適用される。したがって申請日以降に預貯金等の変動が生じる見込みがある場合、申請者がその旨窓口等で申出する必要がある。ケアマネジャーとして相談を受けた場合の対応も必要となるだろう。

施設入所者とショートステイ利用者の食費については以下のとおり改定される。

食費の負担限度額 施設入所者 ショートステイ利用者
現行 2021年8月~ 現行 2021年8月~
年金収入等80万円以下(第2段階) 390円 390円 600円
年金収入等80万円超120万円以下(第3段階①) 650円 650円 1000円
年金収入等120万円超(第3段階②) 650円 1360円 650円 1300円
食事の提供に要する平均費用額(基準費用額)は、1392円から1445円(日額)に改定
補足給付対象者以外は施設との契約で決める。

食費の見直しについて施設入所者のうち第3段階②は大きな引上げとなる。加えてショートステイ利用者の食費負担額は大幅な引上げだ。厚生労働省によると「⾷費が給付対象外となっているデイサービスとの均衡等の観点から引上げ」としている。確かにという感はするものの、同じ論理で言えば次期制度改定では、居住費(滞在費)の引上げも予測できよう。
その他事前周知されていたものの、8月1日以降に利用したサービス分より一定年収以上の高所得者の負担限度額引上げという⾼額介護サービス費の改定もある。

新設区分は
(1)課税所得690万円(年収約1,160万円以上)が140,100円(世帯)
(2)課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満が93,000円。
所得や預貯金による自己負担増を求める「介護保険制度改定」となったことを再認識いただきたい。

厚生労働省が新型コロナ感染症対策として高齢者施設での面会時留意事項を再周知――面会の実施事例は、対面、ガラス越し、オンラインの3パターン

厚生労働省は7月19日付で、「高齢者施設等における面会に係る事例集及び留意事項等の再周知について」を都道府県などに事務連絡を発出。高齢者施設での面会の実施事例や留意事項をあらためて整理している。面会の実施事例は、対面、ガラス越し、オンラインの3パターンに分けて示した。対面の場合は予約制で1組3人まで15分とし、換気できる相談室で行い、看取りの場合は居室でドアを開けた状態で実施するなどの方法があるとしている。工夫している点としては、家族に手紙で注意事項をあらかじめ送付することを挙げている。留意事項としては、面会者の氏名、来訪日時、連絡先は感染者が発生した場合に積極的疫学調査への協力が可能となるよう記録を残しておく必要があるなどとしている。以下「高齢者施設等における面会に係る事例集及び留意事項等の再周知について」のポイントを列挙するので、各事業所の感染症対策としての視点でご一読いただきたい。

1.面会に係る事例集

「介護施設・事業所等における新型コロナウイルス感染症対応等に係る事例の共有について」(令和3年3月9日付厚生労働省健康局結核感染症課ほか連名事務連絡)においてお示しした「高齢者施設等における新型コロナウイルス感染症に関する事例集(令和3年3月9日版)」のうち、介護施設・事業所等における新しい生活様式を取り入れた面会の実施例に係る内容について、面会の手法別(対面での面会、ガラス越しでの面会等)に改めて整理をしたので、参考にされたい。

2.高齢者施設等の施設内で面会を実施する場合の留意事項(令和2年10月15日付事務連絡より一部抜粋)

○面会者に対して、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には面会を断ること。
○面会者がのどの痛み、咳、倦怠感、下痢、嗅覚・味覚障害等の感染症が疑われる症状を有する場合やその他体調不良を訴える場合には面会を断ること。
○面会者の氏名・来訪日時・連絡先については、感染者が発生した場合に積極的疫学調査への協力が可能となるよう記録しておくこと。
○面会者は原則として以下の条件を満たす者であること。
・感染者との濃厚接触者でないこと
・同居家族や身近な方に、発熱や咳・咽頭痛などの症状がないこと
・過去2週間内に感染者、感染の疑いがある者との接触がないこと
・過去2週間以内に発熱等の症状がないこと
・過去2週間以内に、政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国・地域等への渡航歴がないこと。
・人数を必要最小限とすること。
○面会者には、面会時間を通じてマスク着用、面会前後の手指消毒を求めること。
○面会者の手指や飛沫等が入所者の目、鼻、口に触れないように配慮すること。
○寝たきりや看取り期以外の場合は居室での面会は避け、換気可能な別室で行うこと。
○面会場所での飲食は可能な限り控えること。大声での会話は控えること。
○面会者は施設内のトイレを極力使用しないようにすること。やむを得ず使用した場合はトイレのドアノブも含め清掃及び必要に応じて消毒を行うこと。
○面会時間は必要最小限とし、1日あたりの面会回数を制限すること。
○面会後は、必要に応じて面会者が使用した机、椅子、ドアノブ等の清掃又は消毒を行うこと。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第6回:京都市北東ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。
第6回となる今回ご紹介させていただくのは、京都市北東ブロックでの活動です。

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こんにちは、北区・上京区在宅医療・介護連携支援センターです。
当センターは、「在宅医療と介護の連携を推進する」という目的で、京都北医師会と京都市西陣医師会、上京東部医師会が京都市からの委託を受け、2018年に開設されました。以来、医師会、地域包括支援センター、介護保険事業所、行政、そして民生委員や老人福祉員さん等、地域づくりを最前線で担っている皆さんの協力をいただきながら、「顔の見える関係で安心して住み続けられる地域をつくる」ことを掲げ、相談事業や多職種交流の機会の創出などを行っています。
この度、貴メールマガジンに投稿の機会をいただき、当センターがメンバーとして参加している京都市北区で展開中の新型コロナウイルス感染症への対応プロジェクトについてご紹介させていただきます。

<新型コロナウイルス感染症の拡大が地域の緊急課題に>
当センターが活動しているエリアには、長い年月をかけて地道に築き上げてきた「地域づくり」の土壌があり、専門職や住民の方が協力しあって活動しています。そんな中、新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の事態が勃発したのです。1月から始まった感染は拡大し続け、時間の経過とともに、地域で働く多職種の間に「地域の緊急課題として何かしなくては」という共通の思いが広がっていきました。
ケアマネジャーの方から「ヘルパーの方々が感染症対応に大きな不安を感じていて在宅療養の継続が難しくなりそうなケースも出ている」という声も上がりました。

<プロジェクトチームの結成と活動の展開>
このような現場からの声を受け、昨年8月、介護事業所、訪問看護ステーション、京都北医師会、京都府薬剤師会、そして当センターなど、紫竹包括圏域地域ケア会議を構成するメンバーを中心に、京都市域京都府地域リハビリテーション支援センターの参加も得て、プロジェクトチームを立ち上げました。名称を「新型コロナウイルス感染からヘルパー(介護職)を守り、在宅療養者の在宅生活継続をサポートする会」とし、事務局を紫竹地域包括支援センターに置き、クラウドファンディング READYFORの「新型コロナウイルス感染症拡大防止基金」の助成を得て、活動資金としました。
「現場ですぐに役立つ」ことを第一原則とし、ヘルパーの方々へヒアリングを手始めに、①指針の作成、②知識と技術の研修、③物品の配布、④情報共有と相互協力のネットワークづくりという4つの目標に向かって活動を開始しました。また繰り返し見て確認できるように、携帯可能なハンドブックと研修内容の動画作成も計画しました。
9月から11月にかけては、プロジェクトチームの中で、役割分担を決め、オンラインや対面のミーティングを重ねながら作業を進めました。
12月からは、作成した「訪問時の対応フローチャートと対応の基礎知識」(以下ハンドブック)をテキストに、ガウンの着脱等の実践を含む研修を各事業所への出張や参集、オンラインの形で開催。計9回120名余の現場のヘルパーの方々に参加していただきました。大変な業務の後の夜の時間帯や休日にもかかわらず、熱心に参加してくださった皆さんの熱意にチームメンバーも大いに力づけられました。

<活動のひろがり>
2月にはハンドブックを北区、上京区の関係機関に配布しました。また、ハンドブックのPDFを北区役所のホームページに掲載していただいたり、YouTube動画を掲載するなどして、より多くの皆さんにお伝えすることができました。
チームメンバーの薬剤師、リハビリ専門職の方の声掛けで各職域での研修が実現しました。さらに、地域の役員の方々からもお声掛けをいただき、感染防止や感染症に対する差別偏見をなくすために住民の皆さまへお話しする機会を得ることもできました。
このように、一つの圏域から始まった取り組みは、人と人のネットワークを通じて北区全体、上京区全体に広がっていきました。

<現在の進捗状況と今後の計画>
助成金を受けてのプロジェクトは今年3月末をもって終了しました。ですが、いまだに感染の終息については先が見えません。いつ、どこで、だれにも起こり得ることとして私たちの暮らしを圧迫しています。
感染拡大の始まりから1年7か月、私たちの地域でも、陽性者やクラスターの発生、そこから波及する各方面への影響等さまざまな経験をしてきました。
そして、その中から学んだことは「感染者とその家族、関連する人々を守るためには初動がいかに大切か」ということでした。また初動を的確に行うためには、「情報共有と相互の協力関係」が不可欠なことも明らかになりました。
ヘルパーの方への支援を目標として立ち上がったプロジェクトは、現在「事象発生時の初動対応をいかに的確に行うか」というテーマに発展し、地域包括支援センター、医療介護関係機関や当センター等が協力しながら取り組んでいます。具体的には、通所系、施設系、ケアマネジャ―という3つのカテゴリーに分け、発生から解除に至るまでの基本的な流れを示す3種類のフローチャートを作成しました。作成にあたっては、医師の方々にも多大な協力をいただきました。
今後は、さらに各事業所がフローチャートをもとにそれぞれの実情に合わせた個別バージョンを作成していくという計画です。
また、限られた範囲ではありますが、「発生時の情報共有のためのツール」の運用も開始しています。

<目指すもの>
新型コロナウイルス感染症の拡大は、「安心して住み続けられる地域づくり」を推進してきたメンバーにとって、大きな打撃となりました。ですが、一方でこの状況に対するプロジェクトが地域の多職種の皆さんや住民の皆さまのつながりを深めたことは確かです。そして、このつながりは今も続くコロナ禍に対し、確実に力を発揮し始めています。
「地域づくり」という共通の意識によるつながりは、コロナ禍だけでなく、今後いつ起こるかわからない他の感染症や災害に対しても、大きな力です。
このプロジェクトがきっかけとなり、コロナ禍を越え、さらに地域のつながりを深めていくことを願っています。

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このような取り組みが行政区を超えて実践されていることは、多くの介護医療関係者・地域住民に安心をもたらしていると感じました。コロナ禍で横の繋がりが薄くなってしまい、どこでどのような取り組みがなされているのか、誰がどこでどのように動かれているのかが見えなくなってしまいます。事業所単位で考えても、それぞれの事業所によって感染症対策が異なったり、濃厚接触者への対応が異なったりしています。その都度確認し、関係機関とやり取りをすることは膨大な時間を要します。今回ご紹介いただいた活動は、地域として一定の取り決めの中で関係機関が動けるようにすること、不安や余計な混乱を抑えスムーズに対応できる基盤作りになったのではと思います。各医師会も協力いただけたということは、京都府全体を考えた時にもオール京都としての取り組みに発展させていく可能性を秘めていると思います。当会としても、府民の皆さまが安心して生活できるよう、このような取り組みをしっかりと発信していく必要があると改めて感じました。すばらしい活動をご紹介いただきありがとうございました。

(広報委員長 中嶋 優)

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