181号 2022/05

MCI(2022年5月号)(最終回)

財務省が次期介護保険制度改定に向け提言――自己負担増など介護給付費抑制策とは

2024年は2年に1回の診療報酬と3年に1回の介護報酬の同時改定を迎える。併せて6年に1回実施される介護保険制度改定の時期でもある。早くも財務省は、4月13日に「社会保障」をテーマとして開催した財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会)で、介護保険制度改定課題を提示した。今回も、居宅介護支援のケアマネジメントをやり玉にあげている。加えて要介護の高齢者らが積極的にサービスを使えるように10割給付としている現状も問題視した。具体的には「サービス利用が定着し、他のサービスで利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然」と主張し、(次期)第9期(2024年度〜2026年度)からの実現を強く要望している。さらに財務省は、分科会で従来通りの持論も主張している。具体的には「法人・上司からの圧力で自法人のサービス利用を求められた、という経験を見聞きしたケアマネジャーがいる」ことや「介護保険サービスをケアプランに入れなければ報酬を受け取れないため、必要のない福祉用具貸与などを入れるケアマネジャーが一定数いる」などと指摘。公正・中立の観点から問題があるとして、「利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることは、サービスのチェックと質の向上にも資する」と強調しているのだ。

財務省は、従来から主張してきた(1)利用者負担の見直し、(2)ケアマネジメントの利用者負担の導入、(3)多床室の室料負担の見直し、(4)地域支援事業のあり方の見直し、(5)軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等に加えて、新たに(6)区分支給限度額のあり方の見直し、(7)軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化と(8)福祉用具貸与のみの居宅介護支援費の引下げを提案した。

 (参考)財務省が提案した介護保険制度改正の8項目の要望(抜粋)

(1)利用者負担の見直し

○利用者負担は、2割・3割の導入を進めきたが今般の後期高齢者医療における患者負担割合見直し等を踏まえ、①介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を図ること、②現役世代との均衡観点から現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことについて、第9期介護保険事業計画に向け結論を得るべく検討していくべきである。

(2)ケアマネジメントの利用者負担の導入

○居宅介護支援(ケアマネジメント)は、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、利用者負担をとらない例外的取扱いがなされてきた。しかしながら、介護保険制度創設から20年を超えサービス利用が定着し、他のサービスでは利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然である。

○利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることは、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資することから、第9期介護保険事業計画から、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべきである。

(3)多床室の室料負担の見直し

〇2015年度に、特別養護老人ホームの多床室料負担を基本サービス費から除く見直し行った。しかながら、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室については、室料相当分が介護保険給付基本サービス費に含まれたままとなっている。

○居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても公平な居住費(室料+光熱水費)求めていく観点から(保険)給付対象となっている多床室料相当額について、第9期介護保険事業計画から基本サービス費等から除外する見直しを行うべき。

(4)地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)のあり方の見直し

〇地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、各自治体が高齢者の伸び率を勘案した事業費の上限内で事業を実施し、その枠内で交付金を措置する仕組みとしているが、厚労省が定めるガイドライン上、「一定の特殊事情」がある場合には、個別の判断により事業費が上限を超えても交付金の措置を認めることとされていることを見直し、第9期介護保険事業計画に向けて、更に実効性を確保すべく、法制上の措置を含め検討すべきである。

(5)軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等

〇第9期介護保険事業計画間に向けて、要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討し、生活援助型サービスをはじめとて全国一律の基準ではなく地域実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供可能にすべきである。

(6)区分支給限度額のあり方の見直し

○制度創設以降様々な政策上の配慮を理由に、区分支給限度額対象外位置付けられている加算が増加している。

〇制度創設時に企図したよう、設定された限度額の範囲内で給付を受けること徹底すべきあり居宅での生活継続支援目的とした加算をはじめ、第9期介護保険事業計画に向けて加算の区分支給限度額例外措置を見直すべき。

(7)軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化

○居宅療養管理指導は薬局の薬剤師よる軽度者へサービス費用が大きく増加し「必要以上に管理指導を利用するプランを作成した」ケアマネジャーが一定数いることが確認されており、「少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、居宅療養管理指導費算定できない」と要件が明確化されたことも踏まえ、第9期介護保険事業計画を待つことなく算定要件を満たす請求のみが適切に行われるようべきである。

(8)福祉用具貸与のみの居宅介護支援費の引下げ

○福祉用具の貸与のみを行うケースについては報酬の引下げを行うなどサービスの内容に応じた報酬体系とすることも、あわせて2024年度報酬改定において実現すべきである。

(出典 財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会(2022年4月13日)財務省ホームページより抜粋)

財務省の提案を見るとケアマネジャーの業務拡大と、居宅介護支援事業所の経営難に直結することは間違いない。今後各種調査結果などを踏まえて、厚生労働省の介護給付費分科会でも検討される。今後の動向に注目していただきたい。

(長きにわたりご愛読いただきましてありがとうございました)

(顧問 宮坂 佳紀)


5月17日は高血圧の日

5月17日は「世界高血圧デー」だそうです。日本では「世界高血圧デー」に准じて、特定非営利活動法人の日本高血圧学会と日本高血圧協会が2007年(平成19年)に「高血圧の日」として制定されました。高血圧(最高血圧140/最低血圧90mmHg以上)は、日本人の三大死因の内の二つである心臓病や脳卒中など、命に関わる病気を引き起こす主要な原因となっています。また、生活習慣病の一つとされ、日本には高血圧の人が約4,000万人いると推定されています。高血圧はサイレント・キラーと呼ばれ、自覚症状がないことが多く、実際に治療を受けているのはわずか2割の約800万人と言われていそうです。

この高血圧の日に実務研修に出講させていただきました。改めてケアマネジメントプロセスを受講生の方々と共に確認しあう機会を持たせていただきました。

言うまでもありませんが、モニタリングとは、居宅サービス計画書に沿って提供されている介護サービスが利用者本人や家族のニーズに合っているかを定期的にチェックすることをいいます。利用者本人の状態や生活状況は刻々と変化するため、モニタリングによって当初のケアプランどおりでよいのかどうかを確認していきます。

研修では血圧の高い方をモニタリングしますが、どのように行うのかという場面があります。「血圧どうですか」と聞くだけでなく、血圧手帳を見せてもらう、服薬確認や塩分摂取の状況を確認するなど、方法がたくさんある事を確認しました。モニタリングを重ねるうち、目新しい情報は少なくなりがちです。同じ事ばかり聞くようでは、モニタリングの本来の意味がなくなってしまうことになります。高血圧は自覚症状がないといわれますが、何か変化に気づければ高血圧対策にも取り組むことに繋がります。

高血圧の治療においては食塩制限が重要ですが、毎月17日は日本高血圧学会が制定した「減塩の日」となっているそうです。モニタリング訪問の時やご自身でも一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

(広報委員 橋本 かおり)

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