179号 2022/3

ケアマネメールニュース(2022年3月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

2022年4月は、2年に1回見直しされる診療報酬改定を迎える。今回もケアマネジャーとして知っておきたい「2022年度診療報酬改定動向」のうち見直しされた「オンライン診療」などに焦点をあてポイントを解説したい。

オンライン資格確認システムを通じた患者情報等の活用――初診料や再診料に加算が新設

2022年度診療報酬改定では、オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することを評価した「電子的保健医療情報活用加算」(初診7点、再診4点・いずれか1月1回限り)が新設された。対象患者は「オンライン資格確認システムを活用する医療機関」を受診した患者。いわばマイナンバーカードの保険証を読み取れる顔認証付きカードリーダーを設置、特定健診や薬剤情報を活用して診療する医療機関に受診した患者となる。マイナンバーカードを活用しない場合でも、設置医療機関は体制加算として算定する。ただマイナンバーは用いず、マイナンバーカードのICチップ内の電子証明書を用いる。ICチップに資格情報や健康情報を保存するわけではない。また4月から特定健診や薬剤情報は保険者が情報登録し、支払基金や国保中央会の資格確認等提供システムから医療機関が情報などを照会できる体制にはない。本格的な活用は当面先送りとなる。なお、閲覧できる医療情報の拡大や電子処方箋の仕組みの構築等を予定されており、政府では、2023年3月末までに概ね全ての医療機関・薬局での導入を目指している。4月からは患者診療情報等の取得が困難な場合又は他の医療機関から患者の診療情報の提供を受けた場合等は、初診に限り2024年3月31日までの間、3点を加算する扱いとなる。

情報通信機器を用いたオンライン初診、再診料の新設――慢性疾患指導料もオンライン点数が評価

 「オンライン診療」とは、医療機関がインターネットを通じて患者の診療を行うこと。診療の際は、PCやスマートフォン、タブレット端末を通じ、ビデオチャットを行う形で医師による診療が行われる。診断結果の伝達や処方箋の発行も、そのままオンライン上で行われる仕組み。厚生労働省では4年前からオンライン診療の指針などの策定や見直しをすすめてきた。前回の改定でオンライン診療料や指導料が新設されたが、初診では認められず、再診でも3月に1回は対面診療を求めることや、全診療患者のうちオンライン診療料の患者数の上限が定められていたため、取り扱い医療機関は限定されていた。一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う時限的・特例的な対応(電話初診や電話再診でもオンライン診療の特例として診療報酬の算定と処方箋の交付などを認める)が2020年4月から実施されたことに伴う影響、さらに、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しが行われたこと等を踏まえて、今回の改定でオンライン初診料(251点)や再診料(73点)が新設されたもの。対面の初診料や再診料よりは点数評価は低いものの、算定要件などが緩和されている。初診の場合の算定要件と施設基準は以下のとおり。

(参考 初診料(情報通信機器を用いた場合)の算定要件と施設基準)

[算定要件](初診の場合)

(1)別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た医療機関において、情報通信機器を用いた初診を行った場合には、251点を算定する。

(2)情報通信機器を用いた診療は、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行った場合に算定する。なお、この場合において、診療内容、診療日及び診療時間等の要点を診療録に記載する。

(3)情報通信機器を用いた診療は、原則として、医療機関に所属医師が医療機関内で実施する。なお、医療機関外で情報通信機器を用いた診療を実施する場合でも、指針に沿った適切な診療が行われるものであり、情報通信機器を用いた診療を実施した場所は、事後的に確認可能な場所である。

(4)情報通信機器を用いた診療を行う医療機関について、患者の急変時等の緊急時には、原則として、当該医療機関が必要な対応を行う。ただし、夜間や休日など、医療機関がやむを得ず対応できない場合は、患者が速やかに受診できる医療機関において対面診療を行えるよう、事前に受診可能な医療機関を患者に説明した上で、以下の内容について、診療録に記載しておく。

ア 患者に「かかりつけの医師」がいる場合には、当該医師が所属する医療機関名

イ 患者に「かかりつけの医師」がいない場合には、対面診療により診療できない理由、適切な医療機関としての紹介先の医療機関名、紹介方法及び患者の同意

(5)指針において、「対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」とされていることから、医療機関においては、対面診療を提供できる体制を有すること。また、「オンライン診療を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合には、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる」とされていることから、患者の状況によって対応することが困難な場合には、ほかの医療機関と連携して対応できる体制を有すること。

(6)情報通信機器を用いた診療を行う際には、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行い、指針において示されている一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえ、診療が指針に沿った適切な診療であったことを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載する。また、処方を行う際には、当該指針に沿って処方を行い、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを踏まえ、当該処方が指針に沿った適切な処方であったことを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載する。

[施設基準]

(1)情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されている。

(2)厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行う体制を有する医療機関である。

かかりつけ医師がない場合やかかりつけ医師以外が初診からオンライン診療を行う場合――診療前相談を実施

「かかりつけの医師」以外が、初診からのオンライン診療を行おうとするときは、「診療前相談」を行う必要がある。「診療前相談」は、医師と患者間で映像を用いたリアルタイムのやりとりを行い、医師が患者の症状及び医学的情報を確認する行為だ。適切な情報が把握でき、医師・患者双方がオンラインでの診療が可能であると判断し、相互に合意した場合にオンライン診療を実施することができる。

オンライン診療を実施する場合は、診療前相談で得た情報を診療録に記載する必要がある。オンライン診療に至らなかった場合にも診療前相談の記録は保存しておくことが望ましいとされている。なお、診療前相談は、診断、処方その他の診療行為は含まないため自費診療となる。

「かかりつけの医師」以外が初診からのオンライン診療を行うのは、

(1)かかりつけの医師がオンライン診療を行っていない場合や、休日夜間等でオンライン診療に対応できない場合、患者にかかりつけの医師がいない場合

(2)かかりつけの医師が専門的な医療等を提供する医療機関に紹介する場合や、セカンドオピニオンのために受診する場合―が想定されるとしている。

処方については「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の診療ガイドラインを参考に行い、以下の処方はできない。(1)麻薬および向精神薬の処方、(2)基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品の処方、(3)基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方。

また今回の改定では在宅患者のオンライン診療と訪問診療の組合せ評価も見直し緩和された。これまでは在宅時医学総合管理料の訪問による対面診療とオンライン診療を組み合わせて実施した場合の評価における要件について、事前の対面診療の期間を3月とされていたところを、廃止。1月2回の訪問のうち1回を訪問診療(対面)、もう1回をオンラインで診療した場合の在宅時医学総合管理料が新設されている。併せてサービス付高齢者住宅や有料老人ホームの入所者が対象となる施設入居時医学総合管理料も見直しされている。算定要件では2月に1回訪問診療とオンライン診療(例えば5月訪問1回、6月オンライン診療1回)でも算定可能な点数の新設もある。

オンライン診療は電話診療でなく情報通信機器を用いて診療を行う必要がある。したがって、情報通信機器を活用する環境が患者宅や施設での整備が必要だ。ただ、今後新興感染症などの対応や患者の利便性の向上に向け、オンライン診療を拡大させていくという政府・厚生労働省の狙いも念頭にいれていただきたい。併せて次回介護報酬改定でもオンラインを用いたケアマネジャーの業務内容見直しに連動する可能性も念頭にいれておいてほしい。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第14回:中部ブロック)
――――――

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。

第14回となる今回ご紹介させていただくのは、中部ブロックでの活動です。

――――――

中部ブロックは、亀岡市、南丹市、京丹波町の南丹圏域になります。それぞれの地区より選出された9名のブロック委員が活動していますが、新型コロナ感染症の流行で活動が行えなかったため、南丹市4町(八木町・園部町・日吉町・美山町)で取り組まれている住民主体型移動支援等の取り組みを紹介したいと思います。

南丹市は平成18年1月に八木町・園部町・日吉町・美山町が合併しました。

南丹市の面積は616.4㎢、亀岡市(224.8㎢)の2.7倍、京丹波町(303.1㎢)の約2倍あります。

2020年、京都府内の36の市区町村の高齢化率の南丹市の順位は10位と高いです。

面積は広く交通手段もとぼしく、高齢化が進み免許の返納等で自力での外出の機会が少ないのが現状でしたが、それぞれの地域に合った地域住民による移動支援が始まっています。

移動支援の箇所は八木町には1カ所、園部町には5カ所、日吉町には6カ所、美山町には8カ所立ち上がっています。

活動内容は商店やスーパー等へのお買い物、サロン、健康教室、脳トレ教室、介護者の会、地域事業、通院、銀行等への送迎です。

利用対象者はその地区の住民やサロン等の参加者で、利用料金は無料のところが多く、有料でも100円~500円ほどで年会費が必要なところもあります。車から降りて移動時の見守り料として往復100円のところもあります。料金はチケット制で支払うところが多いです。

運転手は有償ボランティア、施設職員等が担当され、車両は自家用車や社会福祉協議会の公用車、福祉施設車両等が使用されています。

「美山町のお出かけツアー」の参加者からは

・車内では世間話をしている。動きながら井戸端会議をしているような感じ。

・出かけた際には自分が運転していた頃の思い出を思い返している。

・自分の目で見てショッピングができることが嬉しい。なんとなく歩くだけでも楽しいです。

との声が寄せられています。

今後も地区役員会などで買い物や通院など移動支援について検討されている地域もあり、過疎化や高齢化が進む南丹市で地域住民による移動支援により、顔見知りで安心できる支援を受けることで高齢者の日常生活の継続につながっていると思いました。

――――――

中部ブロックだけでなく、山間部や過疎化の地域は多く存在しています。京都市にも介護保険のサービスが届きにくい地域や過疎化の地域があり、人口が多いからというだけでは判断できない状況です。今回の取り組みは、よりミクロな視点で個々が抱えている課題やニーズを拾い上げ、地域に同じ状況の方がおられないかを考え、住民主体で解決に向けて動かれている素晴らしい取り組みだと感じました。主任介護支援専門員としても、地域課題に目を向け社会資源の開発や地域課題の解決に向けた取り組みが求められていますので、専門職が関わりながらも住民主体で取り組みを進めていく方法について学ぶべき部分が多いと思います。地域福祉の推進を目的とする社会福祉協議会などとも協力し、より地域に密着した活動ができるよう努めて参りたいと思います。

(広報委員長 中嶋 優)

 

 

ページの先頭へ