176号 2022/01

ケアマネメールニュース(2022年1月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

2022年4月は、2年に1回見直しされる診療報酬改定を迎える。今回もケアマネジャーとして知っておきたい「2022年度診療報酬改定動向」のうち入院料に焦点をあてポイントを解説する。

2022年度診療報酬改定率、項目から見て評価対象はごく僅か――見直し・評価項目にも注視

2022年度診療報酬改定率は、年間200人以上を受け入れる救急病院で勤務する看護職員の処遇改善や不妊治療の保険適用を含めてプラス0.43%となった。一方薬価は1.35%、材料価格は0.02%の引下げ。診療報酬全体ではマイナス0.94%となり、今回も実質マイナス改定で決着した。看護職員処遇改善や不妊治療を除く「真水」と言われる改定率は、0.23%増、医科では0.26%増だ。加えて「真水」確保ため2項目の財源がある。一つ目は2022年3月末が算定期限となっている6歳未満の小児感染症予防対策加算廃止でマイナス0.10%分が充当される。二つ目の財源としてリフィル処方箋の導入・活用促進による効率化のマイナス0.10%分が当てられる。これは処方せん発行元の再診料を減少させることでの適正化だ。中医協総会資料によればリフィル処方せん(反復利用できる処方せん)は、症状が安定している患者に、医師の処方により、医療機関に行かずとも、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方せんを反復利用できるというもの。また、リフィル処方箋の診療報酬も新設される。

1月14日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、これまでの議論の整理項目が公表。入院・外来・在宅の他、精神・難病・周産期・障害・小児・ICT関連など「広く浅く」項目が絞り込まれた。項目を見ると従前の改定と同様、適正化、すなわち算定要件などの見直しにより、実質マイナス改定となる項目も少なくはない。また今回の改定も入院に関連する項目が多く、外来での新設項目はごく僅かだ。併せて実施頻度が高い検査料などの引下げもある。

(参考1)2022年度診療報酬改定について
1.診療報酬+0.43%
※1うち、※2~5を除く改定分+0.23%
各科改定率 医科+0.26% 歯科+0.29% 調剤+0.08%
※2うち、看護の処遇改善のための特例的な対応+0.20%
※3うち、リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進による効率化▲0.10%
※4うち、不妊治療の保険適用のための特例的な対応+0.20%
※5うち、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来▲0.10%
2.薬価等
①薬価▲1.35%
※1うち、実勢価等改定▲1.44%
※2うち、不妊治療の保険適用のための特例的な対応+0.09%
②材料価格▲0.02%

(出典=第508回中医協総会(2021年12月24日)厚労省ホームページ)

急性期・回復期・慢性期の評価と適正化――超急性期病院のみの評価に限定か

「急性期一般入院料1届出病院」は、全身麻酔の手術、人工心肺を用いた手術、悪性腫瘍の手術、腹腔鏡下手術、心臓カテーテル法による手術、消化管内視鏡による手術、時間外に実施された手術、救急搬送受入件数のいずれにおいても、治療室(特定集中治療室管理料等)を届出病院の方が、治療室なしの病院と比較して実績が多かった。このことから急性期一般入院料1届出の手術件数の実績を踏まえた「メリハリ」評価が想定できる。

回復期入院料のうち、地域包括ケア病棟には1)急性期治療を経過した患者の受け入れ、2)在宅療養を行っている患者の受け入れ、3)在宅復帰支援―の3つの役割が求められている。これらの役割を踏まえ、これまでの調査結果で、自院の一般病棟からの転棟割合や、自宅などからの転棟割合、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1および3の要件となっている地域包括ケアの実績要件などについて、施設によるばらつきが大きいことなどが問題視。(1)自院の一般病棟からの転棟割合の分布は、自院の一般病棟からの転棟割合が高い傾向。病床規模で分けると、90%以上の病院は、400床未満病院が多かった。(2)自宅等からの入棟患者と自院の一般病棟からの入棟患者の割合の分布を見た場合、例えば、自院の一般病棟から多数の患者を受け入れ、自宅等からの受入が少ない病棟が一定数存在した。さらに、自院又は他院の一般病棟からの転棟の内訳では、当該割合が高い病棟においては自院の一般病棟からの転棟割合が多くを占め、逆に、当該割合の低い病棟は、他院の一般病棟からの転棟割合が多くを占めるという傾向にあった。これらの現状を踏まえた適正化とも言える算定要件の厳格化が予測できる。

回復期リハビリテーション病棟の評価の行方――入院料56の扱いは経過措置で廃止も

現行回復期リハビリ病棟入院料を新規に届出する場合、入院料5または6を届出する扱いとなっている。この扱いを巡っては、実績指数が低いことやFIMの変化が小さいことなどから、他の入院料を届け出られないまま何年も入院料5・6を届け出ているケースがあることを踏まえ、対応を検討すべきと指摘されていた。したがって一定の経過措置をもって廃止も予測できる。さらに管理栄養士の病棟配置の義務つけについても課題となっている。管理栄養士の配置が努力義務である入院料2、3において、2019年調査と比較して、2020年調査では、管理栄養士を配置している病棟の割合がわずかに増加している。加えて入院料2~6は、管理栄養士が配置されている場合、リハビリ計画書の栄養項目の記載をすることが望ましいとされており、管理栄養士が配置されている場合、記載されている割合が高いとの現状もある。

これらのことからすべての回復期入院料で管理栄養士の病棟配置が要件化されるとみていい。また、回復期リハビリテーションを要する状態に心大血管疾患リハビリテーションの対象患者が含まれていないが、回復期リハビリテーション病棟入院料算定病院において、心大血管疾患リハビリテーション料を届け出ている医療機関が存在したという。このため次期改定からは心大血管疾患リハビリテーション料届出した回復期病院の評価を新設することも想定できる。

慢性期入院料では療養病棟入院基本料経過措置廃止も論点に――障害者施設等入院基本料の見直し課題に注視

慢性期入院医療のうち療養病棟入院基本料は、2022年3月末で終了予定の経過措置「注11」の届出施設数や病床数ともに減少傾向にあるものの、2020年7月1日時点で109施設、5425床となっている。また、入院の理由について、経過措置(注11)では「リハビリテーションのため」が最多であった。また療養病棟における、1日当たりのリハビリテーション単位数は、入院料1及び2と比較して経過措置(注11)において多かった。入院料毎に平均在院日数について、平均値及び中央値で比較すると、入院料1を届け出ている病棟が最も長く、経過措置(注11)を届け出ている病棟が短かったという。このことから経過措置は継続されるもののリハビリテーション料が包括される可能性もある。

障害者施設等入院基本料では、「対象患者」以外の患者のうちの脳卒中患者の状態等を踏まえ、評価の在り方についてどのように考えるかが提案された。具体的には出来高ではなく対象患者以外の脳卒中患者は療養病棟の医療区分別の包括請求することになり適正化される見込みだ。

今回の改定は診療報酬本体プラス改定となったが、プラス改定の恩恵を受ける医療機関は限定される。一方要件見直しにより入院では、算定要件見直しや厳格化によりマイナス改定となる可能性も高いだろう。

(顧問 宮坂 佳紀) 


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第12回:山城ブロック)

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2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。

第12回となる今回ご紹介させていただくのは、山城ブロックでの活動です。

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山城ブロックは、宇治市・城陽市・京田辺市・八幡市・井手町・久御山町・宇治田原町の4市3町で構成されており、7名のブロック委員で活動しています。定期的に会議を開催し、毎年1回は研修会を開催していたのですが、昨年度はコロナ禍で中止せざるを得ない状況でした。

今年度は令和4年2月14日(月)に井上基会長を講師にお招きし、「居宅介護支援の法令遵守“新しい様式”が示された意図とは」と題し、介護報酬改定ポイント、運営基準に沿った実務、居宅サービス計画書標準様式について、お話をいただく予定です。企画にあたっては、従来のメーリングリストに加えてZoomを活用してオンライン会議を実施することができました。研修会もオンラインで開催予定としています。

多職種連携の取り組みとして、山城北圏域リハビリテーション支援センターの事業である、介護施設従事者連絡会(通称:やまきたのつどい)の事務局メンバーにブロック委員が参画しています。この“やまきたのつどい”では、専門職同士の「相互理解」を基盤に「垣根のない顔の見える関係づくり」「共通言語・共通指標」「相互相談機能」を深めていくことで、地域包括ケアシステムの構築を推進していくことを目的としています。主にリハビリ専門職と介護支援専門員が毎月打ち合わせを行い、年に複数回の研修会を開催しています。令和4年1月25日(火)には「オンラインで行う模擬退院前カンファレンス」と題したオンライン研修会を開催し、退院カンファレンス・リハビリ会議・担当者会議のオンライン化について、多職種の意見交換が行われています。

他のブロックも同じ状況ではないかと思いますが、違う市町村の介護支援専門員同士は、面識がなく交流機会もあまりないのが現状です。今後も研修会や多職種連携の取り組みを継続し、他市町村の介護支援専門員同士が繋がり、安定的に交流機会が作れるように取り組みたいと思います。

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山城北圏域の「やまきたのつどい」の活動を続けて来られたことで、職種の垣根を超えた地域ネットワークが構築され、この地域の介護支援専門員が困難事例等に遭遇した時の相談窓口の一つになっていることがわかりました。また「共通言語・共通指標」を意識することで、ご利用者への支援が更に包括的なものになっていることを学びました。リハビリテーション関係者や、それらに関わる多職種が連携することで、地域にお住いのご利用者やその支援者の生活の質の維持・向上にもつながっている、素晴らしい取り組みだと感じました。コロナ禍で交流機会を持ちにくい時期ですが、繋がり続けることの大切さを改めて学ぶことができました。

(広報委員 濱頭 香里)

 

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