171号 2021/09

ケアマネメールニュース(2021年9月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

2024年度介護報酬改定準備作業がスタート――4項目の調査内容とはmm171

早くも2024年度介護報酬改定に向けた準備作業がスタートした。9月10日に開催された厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会「介護報酬改定検証・研究委員会」は、2021年度介護報酬改定の効果検証・調査研究事業に関する今年度の調査内容を了承。調査内容は今後、介護給付費分科会にも諮り正式に決定する。今回の調査項目は(1)介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査研究事業、(2)LIFEを活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFEの活用可能性の検証に関する調査研究事業、(3)文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減に関する調査研究事業、(4)福祉用具貸与価格の適正化に関する調査研究事業の4項目だ。とりわけ(2)の科学的介護情報システム「LIFE」の取り組み状況の把握や訪問系サービス・居宅介護支援事業所での活用の可能性と(3)の文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減調査結果は、ケアマネジャーにとっても大きな影響を及ぼすはずだ。今回は調査内容のポイントを紹介する。

調査は訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFEの活用可能性の検証が目的――モデル事業の実施も

LIFEに関する調査では、加算を算定している事業所のうち約5000カ所、LIFEへのデータ登録がない事業所のうち約2500カ所を対象としてアンケート調査を実施。このうちフィードバックを効果的に活用している事業所と、LIFEの活用に課題を感じている事業所をそれぞれ約25カ所ずつ拾い上げてヒアリングも行う。併せて訪問介護・看護事業所10カ所をモデル事業所としてLIFEへのアカウント登録、データ登録(科学的介護推進体制加算の項目)を実施。居宅介護支援事業所約10カ所にも、通所介護等の居宅系サービスでLIFEにデータ提出を行っている利用者の担当ケアマネジャーが存在する対象事業所を特定の上、モデル事業所として選定する。さらに各事業所(通所介護事業所等)が入力したフィードバック票を居宅介護支援事業所に提供の上、ケアプランの見直し等に活用するための技術的助言等を行ったうえで、ケアの質の向上に向けた取り組みを実施し、次期改定での導入に向けた課題を整理するというもの。

LIFEのアンケート調査には、利用者の介護へのフィードバックの状況やLIFE導入の課題、利用者のアセスメントに関するLIFE導入前後の変化といった内容を盛り込んだ。さらに次期介護報酬改定において、訪問系サービスおよび居宅介護支援事業所を対象とするLIFEへのデータ提出とフィードバック等の活用を要件とした加算を導入する意義を検討し、その実現可能性、課題等を示すという。

ケアマネジャー向け調査項目を見ると(1)LIFEの認知度、(2)通常時のアセスメントの実施状況、(3)LIFEを活用したPDCAの取組の状況、①介護過程の展開における効果、②モニタリングへの影響、③フィードバック票がケアのプロセスに与えた影響、(4)利用者フィードバック票の活用、(5)フィードバック票を活用したケアの質の向上に関する課題など、2024年度介護報酬改定で導入評価される項目があると言っても過言ではない。調査結果内容に応じて、追加調査などが実施されることも予測できよう。はたしてLIFEデータの提出及びデータを活用した場合のケアプラン作成費用の評価に繋がるだろうか?

介護現場の業務負担軽減に関する調査研究事業――更なる文書負担軽減や手続きの効率化のための介護現場の実態および課題の把握

2021年度介護報酬改定では、①利用者への説明・同意等に係る見直し、②記録の保存等に係る見直し、③運営規程等における従業者の員数の記載に関する見直し、④運営規程等の重要事項の掲示に関する見直しが実施された。これらの見直しによる業務への影響を明らかにし、更なる文書負担軽減や手続きの効率化のための課題等を調査することが目的だ。

調査は訪問系サービス、通所系サービス、居宅介護支援事業所、施設・居住系サービスそれぞれ1200カ所が対象。調査内容は①利用者への説明・同意等に関する電磁的方法の利用状況と文書量・業務量の変化、②各種記録の電磁的記録の利用状況と文書量・業務量の変化、③運営規程や重要事項説明書における従業者の員数の記載の見直しを踏まえた対応状況と業務量(自治体への届出の頻度)の変化、④運営規程等の重要事項の掲示の見直しを踏まえた対応状況、➄更なる文書負担軽減や手続きの効率化のための介護現場の実態および課題の把握等。

調査の分析の視点としては、①各種見直しにより、過去と比較して事業所の文書量・業務量がどのように変化したか、②利用者への説明・同意等に関する電磁的方法や、各種記録の電磁的記録を利用するにあたりどのような課題があるか、となっている。

本件は直接報酬としての目に見えた評価はない。ただケアマネジャーにとって利用者への説明・同意を求める機会が多く、これまで以上の負担軽減となる調査結果をまちたい。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第8回:乙訓ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。
第8回となる今回ご紹介させていただくのは、乙訓ブロックでの活動です。

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乙訓ブロックは、向日市、長岡京市、大山崎町の2市1町で構成されており、各市町から選出したブロック理事を合わせて5名の委員で活動しております。これまでは概ね年に1~2回ブロック研修会を開催し、ケアマネジメントなどについて学ぶ機会やブロック会員の皆様と交流する機会となっておりました。しかしながら、最近ではコロナ禍において集まる事ができず、定期的にWebで委員会を開催し、ブロック活動について検討しています。今年度は、医療関係者との連携を目的に研修会を開催する予定をしておりますが、コロナ対応のため延期も余儀ない状況です。

そのような中、今回は乙訓地域における医師会との繋がりについてお話しします。

この地域には乙訓医師会があります。医師会の先生方は、昔から地域医療の推進においても熱心に取り組んでおられ、その1つでもある「在宅療養手帳」を活用した医療・介護の連携については、皆様どこかで耳にされた方も多いのではないでしょうか。「在宅療養手帳」は、本人が保管し、この手帳を通じて本人・家族と共に支援関係者が情報共有し、連携するためのツールです。更に良い連携支援ができるよう「在宅療養手帳委員会」という会議が継続的に開催されています。

その他、乙訓医師会を中心に、『「私の医療に対する希望」記入の手引き』の作成や、認知症懇話会、地域包括ケアシンポジウムの開催等様々な取り組みが行われています。

また、地域包括ケアシステムの構築を目的として行政関係者も参画し、医師会の先生方を中心に、地域包括支援センター、保健所、薬剤師会や歯科医師会、地域の病院関係者、介護施設、介護サービス事業所の代表者等が集まり「地域包括ケアシステム推進交流会」も開催されています。この会議では、その時の医療・介護分野における地域課題や、参加者からの情報提供、解決に向けた検討等様々な事項が取り上げられています。

例えば、戦々恐々となった昨年からのコロナ感染対応については、早々に感染予防対策に係る研修会が開催され、私達も感染対策について再認識し、現場での対応に活かすことができました。

コロナ禍以前は、これらの会議は集合形式で開催されており、介護・福祉側からすると、会議の場で少し緊張しながらも医師会の先生方と直接意見交換ができることで、顔の見える関係が構築できる良い機会でもありました。しかしながら、昨今のコロナ禍では、感染予防のため密にならないよう、Web会議が主流となっておりますが、引き続き定期的にこれらの会議を行うことで医療・介護連携を充実させ、誰もが住み慣れた地域でその人らしい生活の実現に向けた支援ができると考えています。

この様に、この地域では乙訓医師会が中心となって地域医療を引っ張ってくださっていると感じており、私達ケアマネジャーは、地域の医師会の先生方や多職種の方々とこれまで培った関係を活かし、利用者の立場に立ち、寄り添い支援していきたいと思っています。

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乙訓ブロックは古くから行政と乙訓医師会が協力してこられた地域で、「“よりよい在宅医療・介護”の実現には情報共有が重要」との関係者共通の認識により、平成7年から行政と乙訓医師会が共同で作成・配布されたのが「在宅療養手帳」とお聞きしている。「要介護状態になっても、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、介護はもちろん、医療、予防、住まい、生活支援の一体的な提供が必要」と提起された地域包括ケアシステム。その源流の一つとされているのが平成20年に発足した地域包括ケア研究会ということであるから、その10年以上も前に、乙訓ブロックは当時から先見の明を生み出す土壌があったということだろう。 “作って終わり”ではなく、在宅療養手帳委員会でケアマネジャーも含めた関係者がさらにベターな「在宅療養手帳」へと協議し、その活用のあり方を継続的に検討されているなど、見習うべき取り組みが一体となって推進されている乙訓ブロックに今後も目が離せそうにない。

(理事 北野 太朗)

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