168号 2021/06

ケアマネメールニュース(2021年6月号)

令和3年度定時総会(令和3年6月19日)において新しい役員が決まりました。詳しくはこちらをご覧ください。


「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
2021年4月介護報酬改定を迎えて(3)「LIFEへの情報提出の疑義解釈と栄養マネジメント加算」

厚生労働省は6月9日付で、2021年度介護報酬改定に関するQ&Aの第10弾を発出した。今回は科学的介護情報システム「LIFE」関連に関するデータ提出の取り扱いについて取りまとめたもの。「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き」によれば、LIFEは、介護サービスの利⽤者の状態等について科学的に分析し、エビデンスを構築するとともに、PDCAサイクルの推進と、介護の質の向上を⽬的とするシステムと定義付けしている。さらに「LIFEにより収集・蓄積したデータは、フィードバック情報としての活用に加えて、厚生労働省等において、施策の効果や課題等の把握、見直しのための分析にも活用される。LIFEにデータが蓄積し、分析が進むことによって、エビデンスに基づいた施策につながる」とも強調している。

ただ3月以降短期間で多数の利用申請があり、LIFEヘルプデスクに電話やメールをしても繋がらないなど混乱の幕開けであった。これらの対応としてLIFEへのデータ提出の期限を延長しても加算は算定可能などの取り扱いが示された。このこともあってか、LIFE登録事業所数は、4月末時点で約6万事業所となっているとも報じられている。

提出されたデータのフィードバックは事業所単位、利用者単位で実施される予定。ただ初回では一時点の情報のみとなるので、2回目以降の経時的比較も必要となり、活用できるフィードバックデータの公表は来年以降になると想定できる。このフィードバックデータをLIFE関連加算届出事業所と情報共有することも、ケアマネジャーの業務となりうるため、ご留意いただきたい。

今回の質疑応答では、科学的介護推進体制加算、自立支援促進加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算について、入院などにより一定期間のサービス利用がなかった場合のデータ提出の取り扱いを明示。居住・施設系サービスで再入所を前提に30日未満の中断があった場合、加算の算定要件であるサービス終了・開始時に求める項目のデータ提出は必要ないとした。30日以上にわたりサービスの利用がなかった場合は、サービス終了時に求める項目のデータ提出が必要になる。その後、あらためてサービス利用を再開した場合もサービス開始時に求める項目のデータ提出が必要としている。

新設された栄養アセスメント加算の取り扱い―――複数事業所が算定する場合サービス担当者会議で決定

LIFE関連加算として、通所介護、(介護予防)通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護、看護小規模多機能型居宅介護サービスに新設された「栄養アセスメント加算」(50単位/月)の取り扱いも今回の質疑応答で示された。栄養アセスメント加算算定要件として事業所に管理栄養士の配置が必要なため、算定事業所数は限定されるだろう。ただ、データ提出は初回と3月ごとに提出することで、毎月全利用者に算定可能となり、利用者数に応じてみれば経営面での効果は高い。

質疑応答では、利用者が、複数の通所事業所等を利用している場合は、栄養アセスメントを行う事業所について(1)サービス担当者会議等で、利用者が利用している各種サービスと栄養状態との関連性や実施時間の実績、利用者又は家族の希望等も踏まえて検討した上で、(2)ケアマネジャーが事業所間の調整を行い、決定し、原則として、事業所が継続的に栄養アセスメントを実施する、とされた。今回の改定で名称と取り扱いが見直しされた「口腔・栄養スクリーニング加算」の複数事業所利用の場合と同じ取り扱いとなった。ただ、口腔・栄養スクリーニング加算は6月に1回の算定となり、管理栄養士の配置も不要なため、栄養アセスメント加算算定事業所は限定されるだろう。

栄養アセスメント加算の算定要件――栄養改善加算に繋げることが厚生労働省の狙い

栄養アセスメント加算とケアマネジャーの関連でみると、栄養アセスメントの結果、栄養改善サービス(栄養改善加算200単位)の提供を検討することをケアマネジャーに依頼するとなっている。栄養改善加算算定事業所などから管理栄養士の派遣という連携により、加算算定可能となる。今後事業所間連携が進むことで、栄養アセスメント加算算定事業所の増加も見込まれる。厚生労働省の狙いは、栄養改善加算算定事業所を増加させることもあると見ていいだろう。

そこでケアマネジャーとして知っておきたい栄養アセスメント加算の算定上のポイントを整理しておきたい。

<栄養アセスメント加算の体制要件など>

(1)事業所の従業者として又は外部(※)との連携により管理栄養士を1名以上配置。

(2)利用者ごとに、管理栄養士、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して栄養アセスメントを実施し、利用者又はその家族に対してその結果を説明し、相談等に必要に応じ対応する。

(3)利用者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出し、栄養管理の実施に当たって、当該情報その他栄養管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用している。

※他の介護事業所、医療機関、介護保険施設、日本栄養士会や都道府県栄養士会が設置・運営する「栄養ケア・ステーション」。ただし、介護保険施設は、常勤で1名以上又は栄養マネジメント強化加算の算定要件の数を超えて管理栄養士を配置している施設に限る。

<栄養アセスメント加算の算定要件など>

1)栄養アセスメントについては、3月に1回以上、イからニまでに掲げる手順により行うこと。あわせて、利用者の体重については、1月毎に測定する。

イ 利用者ごとの低栄養状態のリスクを、利用開始時に把握する。

ロ 管理栄養士、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、利用者ごとの摂食・嚥下機能及び食形態にも配慮しつつ、解決すべき栄養管理上の課題の把握を行う。

ハ イ及びロの結果を利用者又はその家族に対して説明し、必要に応じ解決すべき栄養管理上の課題に応じた栄養食事相談、情報提供等を行う。

ニ 低栄養状態にある利用者又はそのおそれのある利用者には、ケアマネジャーと情報共有を行い、栄養改善加算に係る栄養改善サービスの提供を検討するように依頼する。

(2)原則として、利用者が栄養改善加算の算定に係る栄養改善サービスを受けている間及び栄養改善サービスが終了した日の属する月は、栄養アセスメント加算は算定しないが、栄養アセスメント加算に基づく栄養アセスメントの結果、栄養改善加算に係る栄養改善サービスの提供が必要と判断された場合は、栄養アセスメント加算の算定月でも栄養改善加算を算定できる。

なお、今回の改定で栄養改善加算は150単位から200単位(原則3月以内、月2回を限度)に引き上げられた。加えて「必要に応じ居宅を訪問することと居宅での食事環境等の具体的な課題の把握や、主として食事の準備をする者に対する栄養食事相談等の栄養改善サービスを提供する」ことが要件化されている。

通所系サービスはリハビリテーション(機能訓練)、口腔ケア、栄養管理の3つのサービスを提供し、質の向上を図るという厚生労働省の政策誘導にも積極的に乗るべきだろう。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第5回:京都市北西ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。第5回となる今回ご紹介させていただくのは、京都市北西ブロックでの活動です。ブロック理事の北川裕之氏から寄稿いただきました。

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京都市北西ブロックは、上京区、中京区、右京区の3つの行政区で構成されます。

元々、どの区も介護サービスの質の向上や事業所間の交流を目的にサービス事業者連絡会(以下、「連絡会」と略す)の取り組みをしていましたが,新型コロナウイルスの感染拡大を機に活動が休止する状態となっていました。

令和2年に『京都市介護サービス事業者等連絡会開催支援事業』として「連絡会」の活動に対し補助金がついたことで、ブロック委員が「連絡会」の運営委員会に参加し、活動の再開に向けて着手することになりました。集合型の研修が困難な状況下で、どの区もZoomやアンケート等、書面での研修に取り組んできており、活動も従来通り定例化されつつあります。そのような中、今回は、「ハラスメント」と「大規模災害の備え」の取り組みを紹介します。

介護事業所に係る「ハラスメント」については、利用者の疾患によるものやハラスメントの行為者が支援を必要とする利用者本人やその家族であることから、その対応の難しさが挙げられることと、防止策の取り組みが不十分な点が挙げられました。

ハラスメントが起きる原因は、法人や会社の組織運営、管理職のマネジメント、利用者家族への説明、職員の教育研修、利用者家族といくつかの課題(問題)が背景にあります。ハラスメントを防ぐためには、これらそれぞれの課題に向き合う必要がありますが、スタッフ自身がハラスメントの知識を持つこと、利用者家族に契約時等にわかりやすい形で説明すること、1人で抱え込まずに職場で共有し、組織的に対応することが重要であることを学びました。

「大規模災害の備え」は、今年度の制度改定でも業務継続に向けた取り組みとして計画の策定や研修・訓練の実施が義務づけられたところですが、ある事業所の取り組みが紹介されました。大規模災害時はケアマネも被災者になるため「平常時の備え」が重要として、「地域住民や自主防災関係者等との連携」「利用者が暮らす地域の防災状況の確認」「避難場所の情報共有と確認」「職員間の連絡方法」「災害時想定訓練の実施」等が挙げられました。

また、災害直後の救命・救助活動や避難所生活で必要となる情報を『緊急時連絡カード』として作成し、利用者自身で情報共有が行えるよう整え、「災害時安否確認リスト」を作成し毎月点検する等の取り組みもされているとのことです。地域を視野に含めてアセスメントをすることの重要性を感じました。

現在のところ、ブロック委員が各区の「連絡会」に参加し、介護支援専門員会とのパイプ役を果たすことが活動の中心となっていますが、各区の活動を全体で共有することや当会の組織拡大等について共有する機会も創っていきたいと思います。

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止まっていたものを動き出すには何かの原動力が必要ですが、京都市介護サービス事業者等連絡会開催支援事業を契機に、研修の書面開催やZoomの活用などその時にできることを取り組まれ、活動が定例化できるまでにもどれたのはブロック理事・委員の多大な労力と熱い思いがあったからではないでしょうか。また、「大規模災害の備え」で事業所が報告されていた、「平常時の備え」のように、コロナ禍前の「連絡会」での活動が活かされたのだと思います。

令和3年4月の介護報酬改定では事業所ひいては法人の強化が望まれる内容になっていると思います。それは、経営者や管理者のみが取り組めば解決できるものではなく、職員全員の参加と認識の共有を図る必要がありますし、おそらく、何かが欠けていれば様々な取り決めも「絵に描いた餅」に終わるのではないでしょうか。今、この時に達成できるかといえば難しいと思いますが、だからこそ課題(問題)なのだと思います。継続して時間をかけ醸成したその知恵をお裾分けしあえる、つながりのある関係が連絡会の醍醐味に感じました。ぜひ参考にさせていただきたいと思います。

(常任理事 村上 晶之)

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