167号 2021/05

ケアマネメールニュース(2021年5月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
2021年4月介護報酬改定を迎えて(2)「通所系サービスの入浴介助加算(Ⅱ)の疑義解釈」

2021年度介護報酬改定で最後まで不明確であった通所系サービスの入浴介助加算(Ⅱ)の取り扱いが、4月26日付けの質疑応答でようやく解消した。入浴介助加算(Ⅱ)の新設については、家庭に浴槽設備がない利用者や通所事業所でのみ入浴している利用者、事業所に個浴設備がない場合などの算定の可否について疑義があった。

今回の質疑応答発出後、これらの取り扱いが明確化され、入浴介助加算(Ⅱ)の算定件数は増加すると考えられる。今回は通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護で新設された入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件と質疑応答のポイント整理をしておきたい。

入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件――利用者の居宅の定義が質疑応答で緩和

入浴介助加算(Ⅱ)は、利用者が居宅において、自身で又は家族若しくは居宅で入浴介助を行うことが想定される訪問介護員等(「家族・訪問介護員等」)の介助によって入浴ができるようになることを目的として新設された。併せて以下の3項目を実施することを評価したものだ。通所介護を例にすると

(1)医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員等(利用者の動作及び浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員を含む。)が利用者の居宅を訪問(個別機能訓練加算を取得するにあたっての訪問等を含む。)し、利用者の状態をふまえ、浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を評価する。その際、利用者の居宅を訪問し評価した者が、入浴に係る適切な介護技術に基づいて、利用者の動作を踏まえ、利用者自身で又は家族・訪問介護員等の介助により入浴を行うことが可能であると判断した場合、通所介護事業所に対しその旨情報共有する。また、利用者の居宅を訪問し評価した者が、通所介護事業所の従業者以外の者である場合は、書面等を活用し、十分な情報共有を行うよう留意する。

なお、利用者の居宅を訪問し評価した者が、入浴の適切な介護技術に基づいて、利用者の動作を踏まえ、利用者自身で又は家族・訪問介護員等の介助により入浴を行うことが難しいと判断した場合は、居宅介護支援事業所の介護支援専門員又は福祉用具貸与事業所若しくは特定福祉用具販売事業所の福祉用具専門相談員と連携し、利用者及び利用者を担当する介護支援専門員等に対し、福祉用具の貸与若しくは購入又は住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行う。

(2)通所介護事業所の機能訓練指導員等が共同して、利用者の居宅を訪問し評価した者との連携の下で、利用者の身体の状況や訪問により把握した利用者の居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成する。なお、個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載する場合は、その記載をもって個別の入浴計画の作成に代えることができる。

(3)(2)の入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行う。なお、この場合の「個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境」とは、手すりなど入浴に要する福祉用具等を活用し利用者の居宅の浴室の環境を個別に模したものとして差し支えない。また、入浴介助を行う際は、関係計画等の達成状況や利用者の状態をふまえて、自身で又は家族・訪問介護員等の介助によって入浴することができるようになるよう、必要な介護技術の習得に努め、これを用いて行われるものであること。なお、必要な介護技術の習得には、既存の研修等を参考にする。

質疑応答では自宅に浴槽がない場合などを考慮してか、居宅の定義と入浴の自立を図ることを目的として、通所介護事業所を例に、以下の5項目をみたせば算定できるとしている。

①通所介護等事業所の浴室において、医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員等(利用者の動作及び浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員を含む。)が利用者の動作を評価する。

②通所介護等事業所において、自立して入浴することができるよう必要な設備(入浴に関する福祉用具等)を備える。

③通所介護等事業所の機能訓練指導員等が共同して、利用者の動作を評価した者等との連携の下で、利用者の身体の状況や通所介護等事業所の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成する。なお、個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載する場合は、その記載をもって個別の入浴計画の作成に代えることができるものとする。

④個別の入浴計画に基づき、通所介護等事業所において、入浴介助を行う。

⑤入浴設備の導入や心身機能の回復等により、通所介護等以外の場面での入浴が想定できるようになっているかどうか、個別の利用者の状況に照らし確認する。

加えて質疑応答では入浴計画の見直しのタイミングについて「利用者の身体状況や居宅の浴室の環境に変化が認められた場合に再評価や個別の入浴計画の見直しを行う」と明確化している。

具体的な入浴介助とは――浴槽の環境は利用者の居宅の浴室近い環境であれば可能

入浴介助加算(Ⅱ)は、個別の入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行うこととなっている。質疑応答では、具体的な入浴介助について「利用者の入浴に係る自立を図る観点から、入浴に係る一連の動作のうち、利用者が自身の身体機能のみを活用し行うことができる動作については、引き続き実施できるよう見守り的援助を、介助を行う必要がある動作については、利用者の状態に応じた身体介助を行う。なお、入浴介助加算(Ⅱ)の算定にあたっての関係者は、利用者の尊厳の保持に配慮し、その状態に応じ、利用者自身で又は家族等の介助により入浴ができるようになるよう、常日頃から必要な介護技術の習得に努める、とした。併せて利用者の状態に応じた身体介助の例を掲げているがあくまで一例として加算算定にあたり必ず実施しなければないものではないともしている。

また通所事業所に大浴槽しかない場合でも、利用者の居宅の浴室の手すりの位置や浴槽の深さ・高さ等にあわせて、可動式手すり、浴槽内台、すのこ等を設置することにより、利用者の居宅の浴室の状況に近い環境が再現されていれば、差し支えないとしている。加えて同一事業所において、入浴介助加算(Ⅰ)を算定する者と入浴介助加算(Ⅱ)を算定する者が混在しても差し支えないことも明文化している。

自宅に浴槽がない利用者や通所介護事業所等でのみ入浴をしている利用者は、自宅を訪問しなくとも、想定した入浴計画を立案してサービス提供すれば、入浴介助加算(Ⅱ)を算定可能とも解釈できる。腑に落ちない質疑応答となった。

 

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第4回:中部ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。第4回となる今回ご紹介させていただくのは、中部ブロックでの活動です。ブロック理事の吉田桂子氏から寄稿いただきました。

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中部ブロックは、亀岡市、南丹市、京丹波町の2市1町の南丹圏域になります。それぞれの地区より選出されたブロック委員6名が活動しています。令和2年度は、コロナ禍で例年のような活動が行えなかった為、今回は南丹市でのトピックスをご紹介します。

南丹市社会福祉協議会では、コロナ禍で外出や交流の機会の少なくなった高齢者の孤立を防ぐ目的で、【みんなで一歩プロジェクト】として今年の2月、“健康すごろく”が作成されました。

http://care-net.biz/26/nantanshakyo/data2/2021/0216/01.pdf
(※社会福祉法人南丹市社会福祉協議会ホームページへ移動します。)

“健康すごろく”には

  1. 一人ではないと感じる
  2. 日々の暮らしを明るく
  3. 介護予防や運動不足解消
  4. 交流のきっかけに

という4つのポイントがあり、

公立南丹看護専門学校の学生さんが『運動』『食事』『交流』『脳トレ』の項目ごとに参加者に取り組んでほしいことを作成してくれました。

〇ラジオ体操をする   〇家の外に出て5回深呼吸をする

〇挨拶をする      〇電話をかける

〇新聞を読む      〇日記を書く

〇1日3食たべる    〇歯磨きをする  など。

たとえば、「ラジオ体操をして、友だちに電話をかけて、新聞を読んだ」としたら3つのことがクリア出来たことになるので“健康すごろく”のコマも3コマ進めることができます。スタートのるり渓から南丹市内の4町をめぐり、コマを進め、ゴールの芦生原生林まで100マス。達成者には、抽選で豪華賞品がプレゼントされる事になっていました。コロナ禍にも関わらず、南丹市内の48もの企業や団体により478個の景品が提供されました。“健康すごろく”用紙の配布には、民生委員や地域の見守りを行うふれあい委員も協力してくださいました。ご利用者がケアマネジャーの訪問時に、どこまで進んだのかを話して下さったり、一緒にどの景品に応募しようかなどを話したり、いつもとは違う話題に花が咲きました。事業開始から応募締切りまで約2カ月間、3歳から100歳の579名(延べ722名:複数あり)の方がチャレンジ。一生懸命取り組まれ、きっと、ゴールした後も項目をクリアし、自分なりの“健康すごろく”を進んでおられる方も多いのではないかと思っています。

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コロナ禍で地域活動がストップしてしまっている地域が多い中、市を上げて取り組みを進めておられるのには驚きました。また、地域で重要な役割を担う病院の看護学生も巻き込みながら取り組みがなされていることは、過疎が進む地域においてモデル的な取り組みだと感じます。地域支援の視点は主任介護支援専門員に必要な部分として法定研修でもその視点が盛り込まれています。ただ、案を出すだけでなく実践へとつなげていくとなると簡単な事ではありません。地域課題が何かを見つけ出すこと、ミクロな視点からマクロな視点へと転換していく方法を習得するためには、今回ご紹介いただいたような成功事例から得たことを我が事として自身の地域でやってみることから始まると思います。「コロナ禍で何もできない」から「コロナ禍だからこそできることがある」という視点の転換を普段の業務の中でも意識しながら、成功事例を真似てみるところから始めたいと思います。

(広報委員長 中嶋 優)

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