164号 2021/02

ケアマネメールニュース(2021年2月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
2021年4月介護報酬改定を控えて(9)「2021年度介護報酬改定の運営基準内容に注視」

厚生労働省は1月25日の官報で、2021年度介護報酬改定に関する「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令」を公布した。施行日は2021年4月1日。今回は、ケアマネジャーとして知っておきたい運営基準の改定ポイントを概説する。

各サービスに関連する5項目の共通事項――運営規程には「虐待の防止のための措置に関する事項」を追加

今回の改正では、各サービス共通事項として(1)利用者の人権の擁護、虐待防止などのための措置を運営規程に定めること、(2)ハラスメント対策として職員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等必要な措置をとること、(3)感染症や非常災害発生時でも継続的なサービス提供や早期の業務再開のための計画の策定と措置をとること、(4)事業所内の運営規程の掲示に代えて運営規程の書面を備え付け自由に閲覧させること、(5)無資格者の介護職員に対する認知症介護基礎研修受講させることなどが定められている。

居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の「基本方針」には、以下の2項目が追加された。

(1)居宅介護支援事業者は、利用者の人権の擁護、虐待の防止等のため、必要な体制の整備を行うとともに、その従業者に対し、研修を実施する等の措置を講じなければならない。

(2)居宅介護支援事業者は、居宅介護支援を提供するに当たって、法第百十八条の二第一項に規定する介護保険等関連情報その他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行うよう努めなければならない。

このうち(1)は「虐待防止のための措置に関する事項」であり全てのサービス事業所で運営規程に定めることが必要とされた。具体的には、①事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができる)を定期的に開催するとともに、その結果について介護支援専門員に周知徹底を図る。②事業所における虐待の防止のための指針を整備する。③事業所において、介護支援専門員に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する。④措置を適切に実施するための担当者を置く。以上4項目を実施することが必要となる。3年間の経過措置があるものの、対応準備が不可欠となるだろう。

介護分野のデータベース「CHASE」「VISIT」の活用――CHASEへのデータ提出項目に注目

基本方針の2つ目に定められた項目は、居宅、訪問系サービス以外に新設された「データ提出」と「フィードバッグ」を受け、事業所単位でのPDCAサイクル・ケアの質の向上の取組を推進することを評価した介護分野のデータベース「CHASE」「VISIT」への取組みだ。介護分野のデータベース「CHASE」「VISIT」は2021年度から一体的に運用していくことに当たり、科学的介護情報システム「LIFE(Long-term care Information system For Evidence;ライフ)」に名称統一される。介護療養型医療施設を除く施設系、通所系、多機能系、居住系の事業所単位でのデータ活用の取り組みを評価する加算も新設。事業所の全ての利用者に係るデータ(ADL、栄養、口腔・嚥下、認知症等)をCHASEに提出してフィードバックを受け、事業所単位でのPDCAサイクル・ケアの質の向上の取組を推進することを評価するもの。

今回の改定では、介護関連データの収集・活用及びPDCAサイクルによる科学的介護を推進していく観点から、全てのサービス(居宅介護支援を除く)について、CHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上の取組を推奨している。居宅介護支援については、各利用者のデータ及びフィードバック情報のケアマネジメントへの活用を推奨するとされた。この「推奨」が基本方針に規定された「介護保険等関連情報その他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行うよう努めなければならない」ということになる。

以下参考までにこれまでモデル事業で実施されてきたCHASEへのデータ提出項目を抜粋紹介する。どのような項目(情報)が厚生労働省に提出され、フィードバックを受けるのか、その結果をケアプランにおいて、具体的に反映させていくことになるのかを想定してほしい。

(参考)CHASEのデータに用いられる予定の「基本的項目」(抜粋)
1)総論
保険者番号、被保険者番号、事業所番号、性別、生年月日、既往歴、服薬情報、同居人等の数・本人との関係性、在宅復帰の有無、褥瘡の有無・ステージ、Barthel Index(移乗、移動、食事、排泄コントロールなどの基本ADL)
1)アセスメント等に関する情報:
「排泄」「寝返り」「食事」などに課題はあるか、「自分の名前はわかるか」「長期記憶が保たれているか」「介護に対する抵抗はあるか」「過去3か月に入院をしたか」など
2)各アセスメント様式等に関する情報:
「入浴」「排泄」「更衣」「寝返り」などに関する各アセスメント様式の評価結果など、食事の形態、誤嚥性肺炎の既往歴等
2)口腔
1)口腔機能向上に関する情報:「『口のかわき』や『食べこぼし』などの課題」「30秒間の反復唾液嚥下回数(RSST)」「口腔機能向上に関する指導内容」など
2)経口移行・維持に関する情報:「経口摂取の状況」「『食事を楽しみにしていない』などの気づいた点」「経口移行・維持に関する指導内容」など
(3)認知症
認知症の既往歴等、DBD13(認知症行動障害尺度)、Vitality Index(意欲の指標)
(4)栄養
身長、体重、栄養補給法、提供栄養量(エネルギー)、提供栄養量(タンパク質)、主食の摂取量、副食の摂取量、血清アルブミン値、本人の意欲、食事の留意事項の有無、食事時の摂取・嚥下状況、食欲・食事の満足感、食事に対する意識、多職種による栄養ケアの課題
1)栄養マネジメントに関する情報:
「血清アルブミン値」「食事摂取量」「食事の留意事項の有無」「食事時の摂食・嚥下状況」「水分摂取量」「握力」など
(出典)介護分野の新データベース「CHASE」のモデル事業「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会取りまとめ」2019年7月16日開催(厚労省ホームページ)より編著者抜粋

ハラスメント対策や感染症対策も運営基準に追加――新設された内容に留意

居宅介護支援事業所を含む全サービス事業所には、ハラスメント対策の強化が求められる。居宅介護支援事業の運営基準にも「勤務体制の確保」として「職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより介護支援専門員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない」ことが規定されている。また、業務継続計画の策定として「感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する居宅介護支援の提供を継続的に実施するため及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(「業務継続計画」)を策定し、業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない」ことも新設されている。具体的には、おおむね6月に1回以上委員会を開催。指針を整備し研修会も定期的に実施する、訓練(シミュレーション)も(定期的)実施することなどが必要となる。本件についても3年間の経過措置期間を設けられるものの、対応準備が必要となる。

訪問介護など集中率についても説明と同意を求めること――具体的取扱方針へ新設項目

今回の改定により特定事業所加算届出事業所には前6月間に作成した訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の利用割合と、同一事業所によって提供された割合について、介護情報システムの運営情報で公表することが要件化された。併せて運営基準には「内容及び手続の説明及び同意」の内容に、「居宅介護支援事業者は、居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、居宅サービス計画が第1条の2に規定する基本方針及び利用者の希望に基づき作成されるものであり、利用者は複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること、前6月間に当該居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画の総数のうちに訪問介護、通所介護、福祉用具貸与及び地域密着型通所介護(以下この項において「訪問介護等」という。)がそれぞれ位置付けられた居宅サービス計画の数が占める割合、前6月間に当該居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護等ごとの回数のうちに同一の指定居宅サービス事業者又は指定地域密着型サービス事業者によって提供されたものが占める割合等につき説明を行い、理解を得なければならない。」(下線部追加)が新設されている。本件は特定事業所加算届出事業所を含む全居宅介護支援事業所が、訪問介護等の集中率について説明し、同意を求めることが必要となる。

併せて、生活援助の訪問回数の多い利用者のケアプラン検証も2021年10月から施行される。居宅介護支援の具体的取扱方針には「介護支援専門員は、その勤務する居宅介護支援事業所において作成された居宅サービス計画に位置付けられた居宅サービス等に係る居宅介護サービス費、特例居宅介護サービス費、地域密着型介護サービス費及び特例地域密着型介護サービス費(「サービス費」)の総額が法第43条第2項に規定する居宅介護サービス費等区分支給限度基準額に占める割合及び訪問介護に係る居宅介護サービス費がサービス費の総額に占める割合が、厚生労働大臣が定める基準に該当する場合であって、かつ、市町村からの求めがあった場合には、当該居宅介護支援事業所の居宅サービス計画の利用の妥当性を検討し、居宅サービス計画に訪問介護が必要な理由等を記載するとともに、居宅サービス計画を市町村に届け出なければならない」ことも新設されている。
その他サービス担当者会議については、他の会議と同様「テレビ電話」を用いた場合でも認められる。ただし利用者または家族が参加する場合は、事前に同意を得ることも必要となる。

今回の改定で居宅介護支援費の報酬は引上げられたが、併せてケアマネジャーの業務が拡大していることも再認識していただきたい。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第1回:京都市南西ブロック)

今回からメールマガジンで地域の活動を紹介させていただくことを企画いたしました。第1回の今回は京都市南西ブロック内の伏見区桃山地域の「ももネット」を紹介させていただます。地域に根差し自治会の活動やお祭りにも参加するなど幅広い活動を行っておられます。今回はももネット副代表で当会広報委員会の特派員の中西哲也氏より紹介していただきます。
――――――
平成26年、私が地域包括支援センターで介護支援専門員として勤務していた頃、担当する地域において2件の死亡事故が起きた。どちらも認知症が引き金となった高齢者の事故であった。この方たちがもしも誰かと出会っていたら、障がいによって阻まれることなくもっと「依存」する先があったなら結果はどうだったのか考える事があった。この問題は表面化していないだけで苦しんでいる人はもっといるはず。だから誰か一緒に考えて欲しいと地域で声をかけて回った。みんな快く応じてくれた。点が線になった時だった。今ではそれが約30以上の介護や医療福祉法人で組織化され、地域の「依存」先として、5つの事業を寄付で運営する「ももネット」という名称の地域ネットワークとなった。

<事業>
①人の集まる居場所を各所に設置
②行方不明者の捜索訓練
③認知症の普及啓発
④高齢者相談協力所を各所に
⑤我々専門職の業務を改善効率化し、余力を地域福祉に費やせるようICT技術の向上を図る

事業活動の根拠は社会福祉法の第一章総則「地域福祉の推進」と「社会福祉の増進」だ。決して一人や一事業所では成し得ない事だと思う。線が面となったからこその強さもあるが、継続できるのは悲しい事故を防ぎたいといった目的が一緒だからだと思う。そして地域の文化ある既存組織に受け入れられたのは、5つの事業を通じて誰もが見える形に面を立体化してきたからだろう。
人との出会いは人生の豊かさと聞いた事がある。今私は介護医療福祉の現場から離れているが、資格や職種にとらわれず、同じ想いを持つ人たちと地域福祉を豊かに築いていく一員でありたいと思う。そして住む場所や障がいにより依存先が限定されないよう、コロナ禍の今はいずれの解放を見越して我々の知識や技術を蓄積していく時期だと捉えている。
――――――
ももネットには私も立ち上げ時から参加させていただいています。最初から熱い思いで何かできる事をと名称を決めロゴマークを作り、何ができるか一から考えて歩んできました。地域の方々が思い出の詰まった地域でいつまでも幸せに暮らすことが出来るように活動し続けています。
今回のように地域で活動されている内容をブロック単位で発信していきたいと思います。次回は山城ブロック内の地域での取り組みについてご紹介します。

(理事 橋本 かおり)

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