161号 2020/12

ケアマネメールニュース(2020年12月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
2021
年4月介護報酬改定を控えて(7)「0.7%プラス改定の恩恵を受けるのはデータ提出に限定」

 12月9日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会は、これまでの審議報告案を公表し、次期改定項目が明らかになった。12月17日には、2021年度介護報酬改定について、新型コロナウイルス感染症によるかかり増し経費分0.05%増も含めた改定率が、0.70%増となることが正式に決定した。


新型コロナ感染症対応は通所サービスに限定――特例措置は3月末で廃止へ

かかり増し経費は、通所系サービスにのみ適用される。通所系サービスで新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて実施してきた報酬区分を2段階上乗せして請求できる特例措置は、2021年3月末で廃止となる。かわって、利用者の減少があった場合の減収を補うため、新たな報酬上の対応が導入される。利用者実績が回復するまでの時限的な措置とし、以下のとおり実際に利用者が減った月の2カ月後から適用される。

① 事業所規模別の報酬区分の決定にあたって、より小さい規模区分がある大規模型は、前年度の平均延べ利用者数ではなく延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができる(利用者減の翌月に届出、翌々月から適用を想定)とするとともに、

② 通常規模型は、延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から一定割合以上減少している場合、一定期間、臨時的な利用者の減少による利用者1人当たりの経費の増加に対応するための評価を行う(利用者減の翌月に届出、翌々月から適用を想定)

②については、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護及び介護予防認知症対応型通所介護も同様の対応をする。また、②の評価は、区分支給限度基準額の算定に含めない。減少数など具体的な取り扱いは正式告示待ちとなる。


プラス改定の条件は「データ提出」――CHASE
・VISITの一体的な運用とCHASEの評価は新加算で

改定率0.7%増のうち0.05%は通所系サービスの新型コロナ感染症対策としての財源となる。併せて0.05%の取り扱いは、現時点では2021年9月までの期間に限られるという。したがって多くの事業所に配分されるプラス改定財源は、0.65%ということになる。前回の改定0.54%増を上回ることになったが、プラス改定の恩恵を受けるためには「データ提出」が要件となりそうだ。

VISITは、全国の通所・訪問リハビリテーションの事業所からリハビリテーションマネジメントデータを任意に収集するもの。収集するデータの内容は対象利用者の心身機能、活動、参加、環境因子といったICF(国際生活機能分類)に沿った情報や、リハビリ計画書、サービスの実施内容などが主な項目。次期改定では通所・訪問リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算の要件となる。「CHASE」(Care HeAlth Status&Events)は、「VISIT」に不足している情報を補完するためのデータベース。既往歴や栄養状態、ADLなどの項目が挙げられている。ただし、電子カルテなどから直接入力可能な場合はあるにしても、多くの事業所では「手入力」での提出が不可欠だ。

したがって加算が新設されてもそれに見合う経費がどの程度かかるかも課題となる。また、2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定時には「データ提出」が義務化に近い形で導入されることも想定すべきだ。その理由は診療報酬において、既に「データ提出」が急性期・回復期病院などでも算定要件となっているからである。

審議報告案では以下の「データ提出」による新加算項目が提示された。

(1)施設系サービス、通所系サービス、居住系サービス、多機能系サービスについて、CHASEの収集項目の各領域(総論(ADL)、栄養、口腔・嚥下、認知症)について、事業所の全ての利用者に係るデータを横断的にCHASEに提出してフィードバックを受け、それに基づき事業所の特性やケアの在り方等を検証して、利用者のケアプランや計画に反映させる、事業所単位でのPDCAサイクルの推進・ケアの質の向上の取組を評価する新たな加算を創設する。その際、提出・活用するデータは、サービスごとの特性や事業所の入力負担等を勘案した項目とする。加えて、詳細な既往歴や服薬情報、家族の情報等より精度の高いフィードバックを受けることができる項目を提出・活用した場合には、更なる評価を行う区分を設ける。

(2)施設系サービス、通所系サービス、居住系サービス、多機能系サービスについて、CHASEの収集項目の各領域に関連する加算等において、利用者ごとの計画書の作成とそれに基づくケアの実施・評価・改善等を通じたPDCAサイクルの取組に加えて、CHASE・VISITへのデータ提出とフィードバックの活用により更なるPDCAサイクルの推進・ケアの質の向上を図ることを評価・推進する。

(1)について基本報酬には、機能訓練、リハビリテーションなどの総論(ADL等)の情報に加えて、栄養・口腔・認知症のデータ提出による評価。(2)では既存の各種加算についても、算定要件が見直されるとともに、データ提出を促すことで新区分の加算が評価される見込み。施設サービスでは、介護老人福祉施設の個別機能訓練加算に、データ提出を要件にした新区分評価や、栄養・口腔管理加算見直しとデータ提出への評価。介護老人福祉施設と介護老人保健施設に前回の改定で新設された褥瘡管理、介護保険施設に新設された排せつ支援加算についてもデータ提出を促すことで、算定対象や算定期間の見直しが行われる見込みだ。介護老人保健施設と介護医療院でも「データ提出」によるリハビリテーションマネジメントに対して新加算が新設される。

前回の改定で通所介護に新設された「ADL維持等加算」は認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設にも新設される。通所介護の個別機能訓練加算は人員配置要件緩和により、一本化され「データ提出」を新たに評価する加算も新設される見込み。ただしCHASEを用いて利用者のADLの情報を厚労省に提出し、フィードバックを受けることが要件化される。訪問・通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算の算定要件も同様に見直しされる。


主なマイナス改定項目にも注視--プラス改定財源は適正化で確保

 次期介護報酬がプラス改定といっても、これまでとおり「財政中立」の考え方で実施される。すなわちプラス改定財源は、適正化策でも確保するということだ。審議報告案では「適正化」策として以下の項目が掲げられている。

(1)同一建物減算適用時等の区分支給限度基準額の計算方法の適正化
① 通所系サービス、多機能系サービスでは同一建物等居住者に係る減算の適用を受ける者と当該減算の適用を受けない者との公平性の観点から、減算等の適用を受ける者の区分支給限度基準額の管理において、減算等の適用前の単位数を用いる。
② 通所介護、通所リハビリテーションでは、通常規模型サービスを利用者と大規模型サービス利用者との公平性の観点から、大規模型の報酬が適用される事業所を利用する者の区分支給限度基準額の管理において、通常規模型の単位数を用いる。

(2)夜間対応型訪問介護の基本報酬の見直し
月に一度も訪問サービスを受けていない利用者の定額オペレーションサービス部分適正化。

(3)訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問看護及び介護予防訪問看護について、評価や提供回数等の見直し

(4)介護予防サービス通所・訪問リハビリテーションについて利用開始から一定期間が経過した後の評価の見直し

(5)事業所医師が診療しない場合の減算(未実施減算)の額の引上げ

(6)居宅療養管理指導の単一建物居住者の人数に応じた評価について見直し

(7)介護療養型医療施設の基本報酬の見直し(引下げ)及び介護医療院の移行定着支援加算の廃止

(8)介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)の廃止

以上の他にサービス付き高齢者向け住宅等利用者のうち、区分支給限度基準額の利用割合が高い者が多い場合に、併設事業所の特定を行いつつ、ケアプランを作成する居宅介護支援事業者を事業所単位で抽出するなどの点検・検証、家賃の確認や利用者のケアプランの確認を行うことなどがあることも認識していただきたい。

(顧問 宮坂 佳紀)


「めいわくかけて ありがとう」

年の瀬に近づき、みなさまも年末に向けてお忙しくされていることだろう。

冬の風物詩である今年の漢字(公益財団法人日本漢字能力検定協会)も、大方の予想通り「密」に決まった。新型コロナウイルス感染症が日本を含め世界的に流行し、年初から現在に至るまで日々の活動が制約された一年。多くの方が「密」という漢字一字を意識し続けた。三密回避が新たな生活様式となっているが、そう考えると、昨年までは密着とまではいかないまでも、人と密に暮らしていたのだと実感する。人が社会生活をおくる中で必要なことであり、「ぽつんと一軒家」に出てくる人も、何らかの知人や親族が関わっている様子が映し出されている。人は人と密に生きてきたのだ。

「めいわくかけて ありがとう」元プロボクサーで昭和のコメディアンたこ八郎(本名:故 斉藤 清作氏)の座右の銘である。「迷惑かけてありがとう」というタイトルで、たこ八郎の半生をモデルとしたドラマも1984年にNHKで放映されている。
迷惑かけているのにありがとうだなんて太々しい、と思われる方もいるかもしれないが、朝日新聞「折々のことば 2015.4.2」で鷲田清一氏は次のように述べている。

(前略)迷惑かけて「すみません」ではなくて、「ありがとう」。荒れて、酔っぱらって、くだを巻き、周囲の人に迷惑をかけるばかりだったけれど、みんなはぼやき、怒鳴りながらも、見限らずに迷惑をかけられつづけてくれた、そのことへの感謝である。迷惑かけずに生きられる人なんていない。だからこれはだれが口にしてもおかしくない。(後略)

たこ八郎は毎晩酒を飲み歩いていたようであるが、ボクシングで負ったダメージの蓄積でパンチドランカーとなり、芝居の台詞覚えが悪く夜間失禁や呂律が回らないことがあったという。言葉が出てこなくて間のことばを短縮していたのかもしれないが、周囲にはこれだけで伝わったのは親密な関係があったからだろう。

(常任理事 村上 晶之)

ページの先頭へ