150号 2020/07

ケアマネメールニュース(2020年7月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回も、2021年度介護報酬改定動向について社会保障審議会介護給付費分科会(分科会)資料をもとに解説したい。

2021年4月介護報酬改定を控えて (2)      「自立支援・重度化防止推進の評価とは」――多職種連携による総合的なサービス提供

6月25日に開催された分科会は、前回に引き続き「横断的な検討事項」を議論した。この日は、1) 自立支援・重度化防止の推進、2) 介護人材の確保・介護現場の革新、3) 制度の安定性・持続可能性の確保―の3つのテーマを取り上げている。厚労省から、1) 自立支援・重度化防止では、リハビリテーション、栄養、口腔の3項目について一体的に取り組むことが効果的ではないかと提案。リハビリによる口腔機能の向上が食生活の改善につながる。これにより効果的な「自立支援・重度化防止」にも繋がるとしたうえで、医師や歯科医師、リハビリ専門職、管理栄養士といった多職種連携による総合的なサービス提供が求められるとした。この、厚労省の提案は2021年度介護報酬での新設項目ではない。前回の改定で通所リハビリテーションについては「医療から介護への円滑移行を図るため」面積・人員等の要件を緩和され、通所・訪問リハビリテーションでは、それぞれリハビリテーション計画書の様式を変更し互換性がもたれた。また介護予防リハビリテーションでは「事業所評価加算」も新設されている。一方で通所リハビリテーションのサービス提供時間の見直しによる適正化もあった。介護予防に新設された事業所評価加算については、対象利用者数が少なく算定率も低迷している。その結果通所リハビリテーション事業所では、新設加算のプラス影響はごく僅かに止まり、マイナス改定の影響は計り知れない。

通所介護や訪問介護、短期入所生活介護サービスに新設された「生活機能向上連携加算」は、外部の通所リハビリテーション事業所等のリハビリテーション専門職や医師が通所介護事業所等を訪問し、共同でアセスメントを行い、個別機能訓練計画等を作成することを評価したものだった。しかし現実には外部事業所からの理学療法士などの派遣を受けて「生活機能向上連携加算」を算定できる事業所も限られており「画餅」の評価といわざるを得ない。算定率の低迷などにより、次期改定でこれらの加算算定要件の見直しが想定できよう。事業所側にとって効果的な緩和が望まれるところだ。

介護人材の確保・介護現場の革新の狙いはどこに――介護職員等特定処遇改善加算は継続か

介護人材の確保・介護現場の革新では、2019年10月に創設された介護職員等特定処遇改善加算の算定率が、今年1月審査分の全サービス合計で57.0%にとどまっている現状を紹介した。厚労省は論点として 1) 介護職員のやりがいの醸成や処遇改善、雇用管理面や職場環境の改善など引き続き総合的な人材確保の取組を進めていくことが求められるが、介護報酬や人員、運営基準等において、どのような方策が考えられるか、2) 介護ロボットについては、2018年度介護報酬改定に関する審議報告において、「幅広い活用に向けて、安全性の確保や介護職員の負担軽減・効率的な配置の観点も含めた効果実証や効果的な活用方法の検討を進めるべき」とされている。検証結果も踏まえつつ、その活用の推進に向けてどのような方策が考えられるか。3) 2018年度介護報酬改定や、2020年度診療報酬改定の動きを踏まえ、会議や研修等においてICT等を活用し、業務改善を図っていくことが考えられるが、どのような方策が考えられるか。4) 文書量の削減による負担軽減などに向け、「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」における指摘も踏まえ、報酬請求文書をはじめとする文書の簡素化、標準化、ICT化等について、サービス横断的及び各サービスにどのような方策が可能か検討を進めていくこととしてはどうか、の4点を掲げた。

介護職員等処遇改善加算の算定率の低迷は、医療系サービス事業所の現状にあるといえる。その理由は処遇改善加算を算定することで、他の介護職員以外の職種の給与の見直し(引上げ)が必要となること。事業所の裁量で同加算を介護職員以外に活用できないことの2点につきる。さらに訪問看護や訪問リハビリテーション、居宅介護支援事業所など介護職員の雇用がない事業所には、全く恩恵がない加算だからだ。これまでも加算算定要件見直しを求める声があったが、今回の分科会の論点を見ている限り、大幅な加算要件の見直しや基本報酬に積み上げするなどの大胆な改定案はない。

制度の安定性・持続可能性の確保の狙いはどこに――感染症など発生時にもサービスを安定的・継続的に提供

制度の安定性・持続可能性の確保の論点では「感染症や災害の発生時も含めサービスが安定的・継続的に提供されるようしていくことが必要であるが、介護報酬や人員、運営基準等において、どのような対応が考えられるか」とした。新規の適正化策について現状では示されていない。ただ前回改定時に示された「その他の課題」には 1) 介護サービスの適正化や重点化 … 介護保険制度の安定性・持続可能性を高める観点から、サービス提供の実態や利用者に与える影響などを十分に踏まえながら、きめ細かく対応していくことを、引き続き検討していくべきである。2) 報酬体系の簡素化 … 今回の介護報酬改定で各種の加算が設けられることとなるが、利用者のわかりやすさという観点や介護サービス事業所の事務負担軽減の観点から、報酬体系の簡素化について、引き続き検討していくべきである、の2項目がある。1つめの適正化策については、前回の改定で取り入れられた「集合住宅への訪問介護サービス」と「通所系サービス」の取り扱いが気になる。2つめの加算を基本報酬に包括するという手法は、これまでも取り入れられてきた。この方策も結果としてマイナス改定になり、適正化に繋がるはずだ。

また現時点の論点では明らかになっていないものの、新型コロナ感染症による補正予算後の財政状況や、改定前にも想定できる感染症拡大の影響もあるだろう。いずれにしても「小幅な改定」もしくは基本報酬「据置」改定になることも推定できる。

(顧問 宮坂 佳紀)

“withコロナ” “afterコロナ”と慣れ

新型コロナウイルスが世界流行してから半年が過ぎた。それがなければ東京オリンピックが開催されみなさんもTVに釘付けとなっていたと思う。時差が無いので寝不足にはならないだろうなどと昨年考えていたが、よもや延期になるとは誰も予測できなかっただろう。

新しい生活様式が推奨され、完璧に実践できていないことに気付くことくらいは認識できるようになったが、個人的に大きく生活様式を変えたのはマスク、ソーシャルディスタンス、ICTである。人間には適応能力が備わっているが実際にはどこか無理しているところがあると思う。馴染むまでには時間がいるし、それなりの意識改革も必要である。その状況におかれる個人の必要性によって意識の改革が進むと思うが、命の危機に直面するものが最優先となる。暑くて息苦しいマスクも見栄えの悪いビニールカーテンもごく当たり前になっており、命を守るのにそれが必要だと認識しているから皆受け入れているのだろう。平成30年7月豪雨の際に京都DWATとして岡山県に派遣された時に粉塵や砂埃を防ぐため当初マスクを着用していたが、暑すぎて数時間で外して使わなかったことを記憶している。熱中症の心配と急にマスクを着けた不快感が勝ったのだと思う。その時に使わなかったマスクが今役立っているのはいいことだが、夏場のマスク着用を経験しておけば今の自分にもっとプラスになっていたのではないかとも考える。思えば、マスクを着けておられる避難者の方もおられたが慣れで克服できるのだろうか…

この半年で沢山のことが変わり、代わりのきかないものに気付かされる場面が多くなった。これを機に、なんとなく続いていた地域の風習も見直されるきっかけになり、地域社会も節目を迎えているのかもしれない。居宅介護支援事業所の実務でも、在宅看取りを選択する方が増え全体的に入院期間が短くなった。いずれも面会制限の影響と思われるが、そこには家族の絆や家族愛が変わらないものとしてあるように感じる。今後、そういった方がもっと増えていくことを考えると、自身や地域が変わっていかなければならないことがみえてくる。ソーシャルディスタンスを保ちつつ切れ目ない支援を提供する難しい課題ではあるが、ICTの活用や新たな連携方法を実証していかねばならない。とりわけ、ZOOMなどのWEB会議・研修は増えていくものと思われるが、スマホを使い始めた頃のように慣れと少しアドバイスをくれる人物が傍にいるとすぐに使えるようになる。遠くの人とも気軽に顔を見て複数で近況報告できるのは同窓会のような感覚であり、画面上でお話ができるのは近未来な感覚で奇妙に感じるが、やはりこれにも慣れていくのだろう。また、直接人と会えない期間が長かったからか意外とWEB飲み会は面白いので、未体験の方は友人・知人と始めてみてもいいかもしれない。

(常任理事 村上 晶之)

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