148号 2020/05

ケアマネメールニュース(2020年5月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回は、ケアマネジャーとして知っておきたいコロナウイルス対策の特例として認められた電話再診による処方せん交付のポイントを整理してみたい。

新型コロナウイルス対応でオンライン診療が増加――慢性疾患をもつ再診患者の特例

原稿作成時、京都府の新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は解除されていない。併せて4月中頃から下旬にかけ、新型コロナウイルス対策として、オンライン診療の特例を認める事務連絡が、矢継ぎ早に発出された。緊急事態宣言が発出されて以来、不要不急の外出を抑えるべく、著者の顧問先医療機関でも電話による慢性疾患患者の処方せん交付事例が後を立たない。

診療報酬請求及び医師法では対面診療(問診、視診、触診)が要件となっている。オンライン診療でもビデオ通信により問診に加えて視診が要件だ。ただ今回の特例は電話診療、すなわち問診のみでの処方せん交付を認めた形になった。今回はビデオ通信など情報通信機器以外の電話による診察の特例、今後さらに診療報酬上設定されたオンライン診療が増加せざるを得ないこと、オンライン診療が増えることを仮定して、これまでの外来患者の特例経過のポイントを整理してみたい。

院外処方せんの交付方法の基本とは――慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療等

厚労省が発出した事務連絡によると、慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療の前提として、電話や情報通信機器を用いた診療により生じるおそれのある不利益、発症が容易に予測される症状の変化、処方する医薬品等について、患者に説明、合意を得ておくことが必要とした。併せて、その説明内容について診療録に記載し裏付けを残すことになっている。院外処方せんの取り扱いでは、患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にファクシミリ等により処方せん情報を送付することとして差し支えないとした。その上で(1)医療機関は、処方せんを保管し、後日、薬局に処方せんを送付するか、患者が医療機関を受診した際に当該処方せんを手渡し、薬局に持参させる。(2)医師は、ファクシミリ等により処方せん情報を薬局に送付した場合、診療録に送付先の薬局を記録することが求められている。なお、処方せん原本を送付する場合、郵送代は「療養の給付に直接関係ないサービス」として自費徴収できる。院内処方では、薬剤の品質保持や確実な授与等がなされる方法(書留郵便等)で行い、薬剤が確実に授与されたことを電話等により確認する。この場合の郵送代も「療養の給付に直接関係ないサービス」として自費徴収できるとしている。

さらに慢性疾患(特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料、生活習慣病管理料など算定対象)患者は、4月9日まではオンライン医学管理料(100点)1月1回、4月10日からは「特定疾患療養管理料」など情報通信機器を用いた場合の評価がある管理料を算定していた患者を、電話等で引き続き管理する場合147点(特定疾患療養管理料、病床数などに関わらず)が算定可能とした。加えて4月22日以降、通院・在宅精神療法も当該取扱いの対象となった。元来電話等再診では特定疾患療養管理料などは算定不可である。したがって今回の対応は医療機関経営上の補填といっても過言ではないだろう。

また、在宅自己注射指導管理料や在宅酸素療法指導管理料など在宅療養指導管理料および在宅療養指導管理材料加算についても、過去3月以内に在宅療養指導管理料を算定した患者またはその家族に対して、電話等再診により指導管理を行い、かつ、必要十分な量の衛生材料及び保険医療材料を支給(機器の貸与中も含む)した場合に、算定できる。

電話や情報通信機器は初診患者も認める――保険証など資格確認、なりすましの防止策

4月10日の事務連絡では、時限的・特例的な対応として、患者からの求めがあり、医師の責任の下、可能と判断し、診断や処方を行った場合、初診でも算定可とした。この場合の初診料は214点となり通常の初診料(288点)よりも低い評価だ。院外処方せんも交付可能であるが、麻薬、向精神薬の処方は不可。さらに過去の診療録等により、基礎疾患の情報を把握・確認できない場合、処方日数は7日限り。また、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤などの「ハイリスク薬」の処方は不可だ。

仮に今回の緊急事態宣言が解除されたとしても、第2波、第3波として新型コロナウイルスが蔓延する可能性は低くない。とすれば、3月に1回は対面診療を行っている慢性疾患等を有する再診患者に限定して、問診のみによる電話再診でも処方せん交付を認めるという取り扱いや、問診、視診を加えた情報通信機器を活用したオンライン初診患者診療の取り扱いも更なる緩和が予測できる。

(顧問 宮坂 佳紀)


“withコロナ” “afterコロナ”とモニタリング

この原稿を書いている今日は、令和2年5月20日。新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて出された緊急事態宣言が継続している東京都など8都道府県について、政府は明日、21日にも専門家の意見をもとに“解除”の可否を判断するという。京都・大阪・兵庫の近畿の3府県では、直近1週間の10万人当たり累積新規感染者数が専門家の示す基準“0.5人未満程度”を下回っているため、ひょっとしたら、このメールマガジンが配信される頃には、一旦、解除されている可能性はある。
さて、厚生労働省は、『新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて』を2月17日に発出して以降、現時点では第10報(4月24日付けの事務連絡通知)に及んでいる。それらの内容を受けて京都府内の各市町村においても“具体的取扱”が通知として出されているかと思う。15市10町1村すべての関連通知を確認したわけではないが、市町村によっては微妙に“言い回し”を変えていることもあるようだ。実際には、個別の具体的な取扱いについては各市町村にその都度確認された方がよいと思うが、この原稿を書くにあたってあらためて、モニタリングについて考えてみた。
居宅介護支援におけるモニタリングは、みなさんもよくご存じのとおり、「特段の事情のない限り、少なくとも月1回、利用者の居宅を訪問し、利用者に面接すること」となっている。この場合の“特段の事情”とは、利用者の事情により利用者の居宅を訪問し、利用者に面接することが出来ない場合を指すものであり、介護支援専門員に起因する事情は含まれないとされている。新型コロナウイルス感染症の脅威に大いに揺れ動く日本は、世界の国々のなかでも超高齢社会の極みと言っても言い過ぎではない状況ゆえに、感染による高齢者への影響は慎重に考えなければならない。国は『令和元年台風第19号に伴う災害における介護報酬の取扱いについての考え方』を参考に、今回の新型コロナウイルス感染症についても「利用者の居宅を訪問できない等、やむを得ず一時的に基準による運用が困難な場合は、居宅介護支援費の減額を行わないことが可能である」としている(詳しくは、当会ホームページ『【Q&A】「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の対応方針」に関する問い合わせへの対応について』を参照されたい)。
http://www.kyotocm.jp/informations/covid-19_qa/
たとえば、一例をあげると、ケアマネジャーが訪問する際には感染対策(マスクの着用など)を行った上で行うことを説明しても、利用者から了解が得られなかった場合は、電話等によりモニタリングの視点に沿って利用者の状況を聞き取ることで“特段の事情”に該当する(介護報酬の減額を行う必要はない)との考え方だ。
では、「モニタリングの視点に沿って利用者の状況を“しっかりと”聞き取る」にはどうすればいいのか。モニタリングで重要なことの一つには、変化を見逃さないことだと思うが、利用者と実際にお会いせずに変化を見逃さないのは、実はそう簡単ではない。 “前回の訪問時(または、電話での聞き取り時)と比べて”、“普段の健康状態と比べて”、“介護者の体調や置かれている環境に変化はどうか”など相対的な視点が必要なのは言うまでもないが、それでも見逃してしまう(聞き逃してしまう)かもしれない。そんななか、京都市が4月20日付で発出した「新型コロナウイルスの感染拡大防止のための利用者の居宅等への訪問、面接及び会議の開催を求める運営基準、介護報酬等の臨時的取扱いについて」(京都市保健福祉局健康長寿のまち・京都推進室介護ケア推進課)の文中に、電話以外に“テレビ電話”などによる必要な確認云々という記載を見つけた。変化を見逃さないためには、数値化できない表情やメンタルコンディションなどを読み取ることも必要だろう。なにより、顔を互いに見ながらというスタイルがもたらしてくれる相談支援の効果は、絶妙に大きいように思う。新型コロナウイルス感染症という得体のしれない、厄介なものが私たちの生活と仕事の様式を大きく変えようとしている。withコロナ、afterコロナの考え方は、居宅介護支援事業を対象にしたICT化の動きについても、ひょっとしたら、加速させるのかもしれない。

(理事 北野 太朗)

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