140号 2019/11

ケアマネニュース(19年11月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

2018年度介護保険法改定により、居宅介護支援事業所管理者は主任ケアマネジャーに限定することが決まった。これは質の高いケアマネジメントの展開につなげることが狙いだ。現在は3年間の経過措置(2018年度から2020年度)が定められているものの、主任ケアマネジャーの養成や確保をうまく進められていない事業所が少なくないという調査結果もある。11月13日に開催された衆議院・厚生労働委員会で委員から、来年度中に経過措置が終了する現行スケジュールに対して厚生労働大臣は「今の動向をみていると、想定していたよりも主任ケアマネジャー配置の割合が低いというのが実態。それは我々も共有している」とした。そのうえで「そうした現場を踏まえながら、現状をみながら対応を考えていかなければいけない」言及。再考する意向を示したと報じられている。

その2日後の11月15日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会(分科会)でも、居宅介護支援事業所の管理者要件について厚労省より「主任ケアマネジャーでない職員が21年度末時点で管理者を務めている事業所については、主任ケアマネジャーを管理者とする要件を2021年度末から2027年度末まで延長する」、「2021年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所であっても主任ケアマネジャーであることが求められる」との検討案が提示された。

□居宅介護支援事業所の管理者要件――本年度調査結果から経過措置延長がほぼ決定

分科会で厚労省が提示した資料によると管理者が主任ケアマネジャー資格を保有する割合は2016年度の44.9%から2018年度は51.2%に僅かに増加している。一方2019年8月~9月に実施された調査速報値では、本年7月末日時点で(1)主任ケアマネジャーではない、かつ「経歴4年未満」の管理者は10.1%。(2)主任ケアマネジャーではない、かつ「経歴1年未満」の管理者は1.6%。(3)ケアマネジャーの実人員が「1人」の事業所の管理者のうち、主任ケアマネジャーではない、かつ業務経験年数が「4年未満」の割合は16.2%、(4)管理者が主任ケアマネジャーではない事業所のうち、ケアマネジャーの実人員が少ない事業所ほど業務経験年数の「1年未満」のケアマネジャーが管理者であると回答した割合が高く、ケアマネジャーの実人員が「1人」の事業所の場合、2.6%(5)管理者が主任ケアマネジャーではない管理者のうち、主任介護支援専門員研修を「経過措置期間中に修了できる見込みがない」割合は13.4%、終了の見込みについて「わからない」と回答した割合は7.7%との現状が明らかになった。

以上の調査結果から厚労省は以下の3項目の対応案を提示した。

①2019年度の「居宅介護支援及び介護予防支援における2018年度介護報酬改定の影響に関する調査「管理者要件に関する調査」」の結果を踏まえ、2021年3月31日時点で主任ケアマネジャーでない者が管理者の事業所は、当該管理者が管理者である限り、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を2027年3月31日まで猶予することとしてはどうか。

結果として、2021年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所であっても主任ケアマネジャーであることが求められることとなる。

②ただし、特別地域居宅介護支援加算又は中山間地域等における小規模事業所加算を取得している事業所については、管理者を主任ケアマネジャーとしない取扱いも可能としてはどうか。

③また、2021年4月1日以降、不測の事態により、主任ケアマネジャーを管理者とできなくなってしまった事業所については、当該事業所がその理由と「改善計画書」(仮称)を保険者に届出た場合は、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を1年間猶予することとしてはどうか。

分科会委員から厚労省の検討案を大筋で認めたという。ただ、経過措置延長そのものに対する意見ではなく、主任ケアマネジャーの資質を担保する仕組みを見直しすべきという意見があったと報じられている。すなわち、研修を受講すれば「主任ケアマネジャー」資格を取得できるという現行の仕組みを見直し、研修終了後に試験を実施してはどうかというものだ。これらの意見を元に主任ケアマネジャー研修制度の見直しが実施されるのか、資質の向上に向けた研修内容見直しなど新たな課題が生じる可能性もあり得る。

分科会の審議経過を見る限り、管理者要件の経過措置延長についてはほぼ決定だろう。ただケアマネジャーの平均年齢は上昇傾向にあり、管理者交代が必要な事業所や近い将来独立をして事業所経営を希望するケアマネジャーにおかれては、「2021年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所であっても主任ケアマネジャーであることが求められる」ことも見逃さないでいただきたい。      □(顧問 宮坂佳紀)


『ゼロイチ』ではなくグラデーションだからこその行動変容

今から2年前の誕生日。気がつけば磯野波平さんと同じ年齢になった。ちょっとした衝撃、と言えば大げさに聞こえるかもしれないが、なかなかのインパクトある出来事だった。波平さんがおいくつなのかを知らなかったことが大きいが、まさかあの国民的テレビアニメに登場するご一家の大黒柱と“おない”になる日が来るなんて!そんな驚きの感覚だった。思っていたよりお若いんだなぁと感じたのが正直なところだったが、よくよく考えてみれば、長女・サザエさんはタラちゃんという愛息の子育てだし、長男・カツオくん、次女・ワカメちゃんはまだ小学生。奥様・フネさんと当の波平さんの普段のいでたちが和装なので、キャラクター設定上の年齢よりも当方の勝手な思い込みで年齢を引き上げていたのだろう。

歳をとる。これは避けては通れない事実だ。『人生100年時代』というフレーズをそこかしこで見るようになったが、自分の歳に当てはめてみると折り返し点を過ぎたことになる。歳をとった状態はややもすればネガティブなイメージを伴うが、その代表的なものの一つが“フレイル”だろう。厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)総括研究報告書後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究(研究代表者・鈴木隆雄氏)では、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態」とされている。和訳の“虚弱”だと身体的な面だけがクローズアップされがちなため、精神心理的・社会的側面のニュアンスも含まれるように“フレイル”という言葉が用いられるようになったようである。

家から事業所まで車通勤のdoor to doorの毎日の私は、歩くスピードも落ちてフレイル予備軍の自覚はある。骨折は日常生活機能の急変をもたらすのにくらべて、フレイルはいわゆる『ゼロイチ』ではなくグラデーション状に変化していくため、「以前に比べてなんとなく変わった(低下した)」という自覚はあるだろうが、初期には日常生活機能に大きな支障が出ないために「早く気づき、早期に、そして適切な時期に介入して対策を行えば以前の健康な状態、すなわち生活機能の維持・向上が図れるに戻る可能性もある」という教科書的な行動変容を起こしにくい。

日頃ご縁のある利用者さんに自立支援という名のセルフコントロール、たとえば通所リハビリなどで習った運動をご自宅でも自主トレーニングする、そうしたことをお奨めしているが、自分自身の体たらくもあって言葉に説得力がないようである。日曜日の夕方、この原稿を書いていたらテレビ画面の向こうには近所の公園で体操をする波平さんの姿があった。ご同輩を見習って、ウォーキングを再開して、あらためて利用者さん一人ひとりと向き合っていこう、そう思う次第である。                                        (理事  北野 太朗)

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