134号 2019/06

6月22日の定時総会で新しい役員が決まりました。詳しくはこちらをご覧ください。


ケアマネニュース(19年6月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」
 

 今回は2020年4月診療報酬改定に関連して「働き方改革と労働基準法改正」についてケアマネジャーにも関連するポイントを記載する。

□働き方改革と医療の在り方について議論を開始――知っておきたい労働基準法の改正のポイント

5月29日に開催された中央社会保険医療協議会総会(以下、「総会」という。)は、働き方改革と医療の在り方をテーマに議論を進めた。厚生労働省からは医療機関内の取組みの課題と論点を提示した。このうち課題では「医療機関の院内での労務管理や労働環境改善のマネジメントシステムのあり方についてどう考えるか。また、これまで診療報酬で対応している、勤務環境改善に資する取組みや、算定の要件として求めている業務内容について、働き方改革の方向性や医療の質を確保する観点等を踏まえながら、どう考えるか」となっている。この課題からみて医療機関のみならず介護保険事業所にも関連する課題であり、2021年度介護報酬改定にも関連するだろう。
また総会では診療側委員より「4月からの医師を除く職員の時間外労働上限規制で、明らかに人件費が増加している。病院経営の点からも入院基本料がどうあるべきかの議論をしなければならない」と強調したと報じられている。

そこで労働基準法の改正について、医療機関のみならず介護保険事業所に関わる2つの課題について整理しておきたい。(厚労省ホームページ「年5日の年次有給休暇の確実な取得――わかりやすい解説」より抜粋)

1つ目は2019年4月より全事業所に「年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者や有期雇用労働者も含む)に対し、年次有給休暇日数のうち年5日は、使用者が時季を指定して取得させること」が義務付けらたことだ。とりまとめると①「使用者による時季指定」、②「労働者自らの請求・取得」、③「計画年休」のいずれかの方法で労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させれば足りる。これら①から③いずれかの方法で取得させた年次有給休暇の合計が5日に達した時点で、使用者からの時季指定をする必要はなく、また、することもできないということになる。

2つ目は時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定されたことだ。4⽉からは、まずは⼤企業が対象だが、病院や介護施設でも、常時雇⽤する⼈数が100⼈以上なら対象となる。なお、中⼩企業については2020年4⽉から適⽤される。サービス業では、資本⾦5000万円以下または「常時使⽤する労働者の数」が100⼈以下の場合、中⼩企業とされる。(厚労省ホームページ「時間外労働の上限規制――わかりやすい解説」より抜粋)併せて、上限規制の適⽤が5年間猶予されるのが、医師をはじめ、建設業、⾃動⾞運転の業務などが該当する。したがって医師の上限規定は2024年から適用となる。

今改正で、時間外労働の上限は原則⽉45時間、年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ上限を超えることができない。また、臨時的な特別の事情があり、特別条項を設けていても、以下(1)から(4)のルールを遵守する必要がある。違反した場合、罰則(6カ⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)が科されるおそれもありうる。
(1)時間外労働が年720時間以内
(2)時間外労働と休⽇労働は合計で⽉100時間未満
(3)時間外労働と休⽇労働の合計は、「2カ⽉平均」「3カ⽉平均」「4カ⽉平均」「5カ⽉平均」「6カ⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
(4)⽉45時間を超えられるのは年6カ⽉まで
ここでいう(2)の「時間外労働と休⽇労働は合計で⽉100時間未満」とは、例えば時間外労働が⽉44時間でも、休⽇労働が56時間なら、合計100時間以上になるので労基法違反となる。また(3)については、例えば連続する3カ⽉で85時間、70時間、90時間の時間外労働をさせた場合、違反となるため、最終⽉は85時間以下に抑えねばならない。

上記のポイントを踏まえて労働時間管理策をまとめると、
①「1日」「1か月」「1年」のそれぞれの時間外労働が、36協定で定めた時間を超えないよう管理。
②休日労働の回数・時間が、36協定で定めた回数・時間を超えないよう管理。
③特別条項の回数が
‍ 〇残っていれば⇒(①の)時間外労働の残時間数まで
〇残っていなければ⇒原則の上限時間(=限度時間)まで(※時間外労働の残時間が限度時間以下なら残時間数まで)となるよう月の時間外労働を管理。
④毎月の時間外労働と休日労働の合計が、100時間以上にならないよう管理。
⑤月の時間外労働と休日労働の合計について、前2~5か月の合計と合算して、月数(2~6)×80時間を超えないよう管理して対応しなければいけないことになる。

その他36協定の締結などの留意点は厚労省ホームページを参照されたい。

また上記以外に医療機関や介護保険事業所に関わる働き方改革には、(1)労働時間の状況の把握(19年4月より適用)と(2)産業医が実施した健康管理等の勧告内容を衛生委員会へ報告する(19年4月より適用。ただし産業医専任義務のある事業所)が含まれる。

(顧問 宮坂佳紀)


“門掃き”からはじめる地域とのコミュニケーション

休日とお天気の悪い日をのぞいて、朝、事業所の前を掃き掃除している。以前は、月に一回、曜日を決めて時間をつくって掃除していたが、ほぼ毎日するようになって変化したのは、地域の人たちとの距離感だ。駐車場の桜の木の花びらや街路樹のイチョウの木の落ち葉、道路に捨てられたタバコの吸い殻を掃き集めたり、アスファルトの継ぎ目から生える雑草を抜きながら、ほんの20分少しのことだが、道行く人とちょっとした挨拶を交わすこともしばしばだ。決まった時間に決まって同じことをしていると、ときには足を止めて「おはようございます」「いってらっしゃい」「暑なってきましたね」「夕方に雨が降るらしいですね」と声をかけくださる方もいる。ヘッドホンを外して挨拶してくださる方もいて、こちらも掃除の手をとめてご挨拶。なにもやりとりはなかったはずの人でも、その後に相談支援のご縁を得て、最初のご自宅での面談のときに「朝、掃除してる人」と顔を覚えてくださっている場合もある。

そんな日常の変化をおだやかに感じながら、そういえば、京都には古くから“京の門掃き”という言葉があるのを思い出した。“京の門掃き”は単なる掃除だけではなく、地域の人たちの気の利いたコミュニケーション手段にもなっているらしい。『門掃きは うつつのなかに 朝ごはん』という昔の川柳が伝えるように、もともとは早朝にし始めるのが門掃きだったようだが、自分の家の前だけではなく「お隣さんとの境界の“お隣側へ半間(およそ90センチ)ほど”入ったところまでお隣さんの家の前も“ちょっと”掃いておく」のが京流と言われている(諸説あり)。

地域包括ケアシステムの深化は、医療・介護の連携も重要なカギの一つだが、共助を含めた地域コミュニティの再生もまた大切な要素だと言われている。とはいえ、もともと親しい人たち同士ならともかく、すれ違っても言葉を交わさず、交わしたとしても無言で会釈する程度の仲であれば、「おせっかい」「やりすぎ」と感じず、感じさせない気遣いや助け合いは、なかなか難しい。でも、それぞれが、“ちょっとずつ”気配りをもって、知恵を働かせながら毎日少しの時間の行いを続けることで、街はきれいになり、やさしくなっていくような気がする。

「ほとんどの人が他府県からの転入者」という北摂ニュータウン(大阪)で育った私には、京都の街も、地域包括ケアシステムが目指す姿も少し新鮮に映る。気負ってやると続かないだろうが、人と人の関係性、相乗効果という楽しさも感じられて、私の“門掃き”は今も続いている。古の京の人たちの“門掃き”から、あらためて、地域でのコミュニケーションの秘訣を学ぼうと思う。

(理事  北野 太朗)

 

 

ページの先頭へ