133号 2019/05

ケアマネニュース(19年5月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回は財務省が提案した社会保障制度改革と2020年度診療報酬改定動向などについて掲載する。

□財務省が提案した社会保障制度改革とは――財政制度等審議会・財政制度分科会資料から

4月23日、財務省主計局は、社会保障がテーマになった財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会)で、増加傾向にある高額な医療用医薬品・医療技術を念頭に「保険収載を見合わせた際の受け皿として、保険外併用療養費制度や民間保険の積極的な活用も含めて検討していく必要がある」と提言した。保険給付範囲を縮小し、自己負担を増やすべきとの考えだ。OTCが存在する医療用医薬品については、保険外併用療養費制度を活用して全額自己負担にすべきとの構えを示した。医療費が増大する中、国民皆保険制度を維持するため「共助の対象として適切な保険給付の在り方を検討していく必要がある」と主張している。
財務省は、薬事承認された新規医薬品について「事実上、全てが90日以内に保険収載される仕組みとなっており、収載に当たって財政影響がどの程度生じるか十分検証されていない」と指摘。新たな医療技術についても「収載に当たって経済性は考慮されていない」と問題視する。
このため医薬品・医療技術について「安全性・有効性に加え、費用対効果や財政影響などの経済性の面からの評価も踏まえて、保険収載の可否も含め公的保険での対応の在り方を決める仕組みとしていくべき」と提言。保険収載とならなかった医薬品・医療技術について「安全性・有効性があれば、保険外併用療養費制度により柔軟に対応するか否かの検討も行うべき。その際、経済性の面からの評価に見合う価格までは保険適用と同等の給付を行う新たな受け皿の類型(保険外併用療養費制度の柔軟化)を設定すべき」とした。保険外併用療養費制度の新たな分類を提案したことになる。
現役世代の患者が高額医薬品を用いた場合、保険診療部分については3割自己負担とする。これとは別に高額医薬品については、費用対効果の判断に基づいて「経済性の面からの評価に見合う価格」までは保険適用と同等の3割自己負担とし、「経済性の面からの評価に見合う価格」を上回る部分は全額自己負担とする、というイメージだ。
財務省は、OTCが存在する医療用医薬品については「医療機関で処方されることにより、自らOTCを求めるよりも大幅に低い負担で入手が可能である点で、セルフメディケーションの推進に逆行し、公平性も損ねている」と問題視。これも保険外併用療養費制度を活用し、OTCが存在する医療用医薬品についてのみ、全額自己負担とすべきとの方向性を打ち出した。

さらに財務省はこの日の分科会で、地域医療構想について「各構想区域で合意された具体的対応方針の内容が2025年における病床の必要量と整合的であるか厳しく精査を行い、不十分な場合には期限を設定した上で再度の合意を求めるべき」と提言した。財務省は、合理的でない「合意」が多く生じているとの問題意識を抱いており、そうした事例に対しては再検討を促すべきとの考えだ。
「自主的な取り組みが進まない場合には、保険医療機関の指定等に当たり、民間医療機関に対する他の病床機能への転換命令に係る権限等を付与するなど都道府県の権限を一層強化すべき」とも提言。場合によっては、保険医療機関の指定取り消しも視野に入れるべきとの構えを示している。
財務省は「団塊の世代が後期高齢者になり始める22年、全て後期高齢者となる25年に向けて、地域医療構想に沿って、高度急性期・急性期から回復期や在宅医療等に大幅な医療機能の転換を進めていく必要がある」と主張する。
しかし、実際には「構想区域内の全ての公立・公的病院等に係る具体的対応方針が合意されていても、単にほぼ現状維持の方針が示されているだけにすぎないケースも存在している」と問題視している。
また、厚生労働省が昨年10月に開いた「地域医療構想に関するワーキンググループ」の資料を参考に、届け出はしているが実際には使っていない非稼働病床が214床減っている一方、すでに25年の必要量を満たしているとされる急性期病床が161床増えていると指摘。「本来であれば、25年までに減らすべき病床数に応じた『合理的な合意』が行われるべきだが、単に『合意』だけした構想区域が多くあることが分かってきた」との認識を持っている。
財務省は、国内の医療提供体制について「他の先進諸国と比較して人口当たりの病床数が非常に多く、都道府県ごとの地域差も大きい」とあらためて問題意識を表明。病床数の地域差は1人当たり医療費の地域差とも「強い相関」があると指摘したほか、人口当たり病床数の多さは「病院勤務医の働き方改革も妨げている」と主張している。

さらに財務省は分科会で、介護の在宅サービスについて「ケアマネジャーの活用等により、介護サービスの価格の透明性を高めていくための取り組み等を通じて、サービスの質を確保しつつ、確実に価格競争が行われる仕組み(より良いサービスがより安価に提供される仕組み)を構築すべき」と提言した。
財務省は、介護保険制度の創設以来、在宅・施設サービスのいずれについても「事業者は介護報酬を下回る価格を設定することが可能」と指摘。営利法人の参入が進む一方で、4月現在、介護報酬を下回る価格を設定している事業者は確認できないと問題意識を示した。ケアマネジャーが複数の事業所のサービス内容と利用者負担について説明するよう義務化し、「サービス価格の透明性を向上すべき」としている。

財務省は分科会で、医療機関の収入の伸びは、医療費(薬剤費等除く)の伸びと同じだとして、2016年度までの10年の平均は2.2%増だったとの見解を示した。財務省は「単に賃金・物価と診療報酬を比較するだけでなく、医療機関の収入の伸び全体としてどう報酬を考えるか、ということも忘れてはならない視点だ」と説明している。
財務省は医療費の伸びについて、「医療費の単価の伸び」と「患者数等の人口要因の伸び」で構成されると説明。「医療費の単価の伸び」の一部を構成する診療報酬本体改定率は10年平均で0.6%増だった一方、一般的な人件費・物件費の伸びを示す「賃金・物価の伸び」の加重平均値は10年平均で0.02%増で、前者が上回っているとしている。

この日の分科会で、財務省主計局が医療分野で主張した主な内容は以下の通り。
●医薬品・医療技術については、安全性・有効性に加え費用対効果や財政影響などの経済性の面からの評価も踏まえて、保険収載の可否も含め公的保険での対応の在り方を決める仕組みとしていくべき。保険収載とならなかった医薬品等については、安全性・有効性があれば保険外併用療養費制度により柔軟に対応するか否かの検討も行うべき。その際、経済性の面からの評価に見合う価格までは保険適用と同等の給付を行う新たな受け皿の類型(保険外併用療養費制度の柔軟化)を設定すべき。
●薬剤の種類に応じた保険償還率の設定や一定額までの全額自己負担といった諸外国の例も参考としつつ、市販品と医療用医薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点等を踏まえ、薬剤の自己負担引き上げについて具体的な案を作成・実施すべき。その際、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大についても併せて検討を行うべき。
●制度の持続可能性の観点から、少額の受診等に一定程度の追加負担を求めていくべき。その際、かかりつけ医やかかりつけ薬局への患者の誘導策として定額負担に差を設定することについても、検討を進めるべき。
●保険給付に応じた保険料負担を求める本来の仕組みとする観点から、国民健康保険改革に伴う財政支援の拡充等を活用した先進事例も参考にしつつ、速やかに法定外一般会計繰入等を解消し、保険財政運営の健全性を確保すべき。国保の保険者努力支援制度の公費配分に当たっては、法定外一般会計繰入等の解消と連動するような仕組みを設けるべき。
●国保の普通調整交付金の配分に当たっては、実際の医療費ではなく、各自治体の年齢構成のみを勘案した標準的な医療費水準を前提として交付額を決定する仕組みに改めるべき(年齢構成では説明できない地域差は、その地域の保険料水準に反映されるべき)。
●保険者努力支援制度において、例えば、自治体内の被保険者の有病率や特定健診における結果の値など適切なアウトカムベースの指標を設定・活用することなどを通じ、医療費の適正化に向けたインセンティブに資するような制度とすべき。
●地域医療構想について、2025年までの中間的なKPI(評価指標)の達成状況を評価するとともに、合意された具体的対応方針の内容が25年における病床の必要量と整合的であるか厳しく精査を行い、不十分な場合には期限を設定した上で再度の合意を求めるべき。自主的な取り組みが進まない場合には、保険医療機関の指定等に当たり、民間医療機関に対する他の病床機能への転換命令に係る権限等を付与するなど都道府県の権限を一層強化すべき。
●地域医療介護総合確保基金や国保の保険者努力支援制度において地域医療構想の進捗状況を評価するに当たっては、議論や形式的な合意の有無を指標に用いるのではなく、合意された具体的対応方針の内容と25年における病床の必要量の整合性や、病床機能の分化・連携の進捗状況、医療費の適正化状況などを指標に用いるべき。また、指標の水準は年度ごとに着実に引き上げていくべき。基金については、地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設整備等に引き続き重点化しつつ、基金創設前から存在している事業か否かに関わらず、めりはりのある配分調整を行うべき。また、各事業が病床の機能分化・連携にどのようにつながっているか検証するとともに、併せて病床のダウンサイジングに係る追加的な支援策を検討すべき。
●18年度診療報酬改定が、全体としてどの程度、地域医療構想に沿った病床の再編、急性期入院医療費の削減につながっているかについて進捗を評価し、必要に応じてさらなる要件厳格化等を次期改定において実施すべき。
●適切かつ効率的な外来診療体制の提供を進める観点から、かかりつけ機能の評価の整理を行いつつ、かかりつけ医やかかりつけ薬局以外に外来受診等をした際の定額負担を導入すべき。また、大病院受診時の選定療養による定額負担について、対象範囲・金額をさらに拡大しつつ、診療報酬への上乗せ収入とするのではなく保険財政の負担軽減につながるよう診療報酬の中で定額負担を求めるなど、仕組みの見直しを行うべき。
●都道府県における医療費適正化の取り組みに資する実効的な手段を付与し、都道府県のガバナンスを強化する観点も踏まえ、医療費適正化に向けた地域別の診療報酬の具体的に活用可能なメニューを国として示すとともに、第3期医療費適正化計画の達成に向けても柔軟に活用していくための枠組みを整備すべき。
●薬価制度の抜本改革のうち、残された検討課題について、スケジュールに沿って着実に検討を進めていくべき。イノベーションの推進に向けて、さまざまな施策も活用しつつ、創薬コストの低減、製薬企業の費用構造の見直しや業界再編に取り組むべき。
●21年度における薬価改定の対象範囲については、金額ベースで見て国民負担の軽減に十分につながることとなるようなものとすべき。
●薬局の多様な在り方や経営環境を踏まえた調剤報酬の評価を行う観点から、かかりつけ機能の在り方を改めて検討した上で、地域においてかかりつけ機能を担っている薬局を適切に評価する一方、こうした機能を果たしていない薬局の報酬水準は適正化が必要。その際、かかりつけ機能の評価次第では受けるサービス以上に患者負担が増加することにも留意する必要がある。対物業務に関し、近年の技術進歩等を踏まえた投与日数や剤数に比例する調剤料設定の妥当性や、調剤業務の在り方の見直しによる業務効率化といった状況への対応も含め、引き続き調剤報酬の見直しを行っていくべき。
●世代間の公平性や制度の持続可能性を確保していく観点から、まずはできる限り速やかに75歳以上の後期高齢者の自己負担について原則2割負担とすべき。その際、70~74歳について段階的に実施してきた自己負担割合の2割への引き上げと同様に、75歳に到達した後も自己負担割合を2割のままとすることに加えて、すでに後期高齢者となっている者についても、数年かけて段階的に2割負担に引き上げるべき。
●まずは、現行制度の下での取り組みとして、入院時生活療養費等の負担能力の判定に際しても、補足給付と同様の仕組みを適用すべき。さらに、医療保険・介護保険における負担の在り方全般について、マイナンバーを活用して、所得のみならず、金融資産の保有状況も勘案して負担能力を判定するための具体的な制度設計について検討を進めていくべき。
●後期高齢者医療制度の「現役並み所得」の判定基準について、能力に応じた負担としつつ現役世代との公平性を図る観点から、世帯収入要件について見直しを行うとともに、現役世代の所得水準の変化も反映すべき。
●支え手の中核を担う勤労世代が減少し、その負担能力が低下する中で、改革に関する国民的理解を形成する観点から、保険給付率(保険料・公費負担)と患者負担率のバランス等を定期的に見える化しつつ、診療報酬とともに保険料・公費負担、患者負担について総合的な対応を検討していくべき。

□2020年4月診療報酬改定を先読みする(2)――中医協総会で年代別の論点が出揃う
4月に開催された中央社会保険医療協議会総会(総会)で、年代別の課題や論点が出揃った。4月10日に開催された総会で厚生労働省(厚労省)は、小児でアレルギー関連疾患の受診が目立つほか、20歳未満での精神疾患や行動障害が大きく増加傾向にあるデータなどを報告した。報告を受け、支払い・診療各側の委員は、成人期への移行医療の在り方も含め、学童期・思春期で増加傾向にある精神疾患への問題意識を表明している。ただ、精神疾患に限らず、乳幼児期から思春期までの疾患を診療報酬で評価すべきか、それ以外の補助金など公費で対応するのかを整理すべきとの意見が出たとも報じられている。厚労省は総会で、乳幼児期から学童期・思春期を巡る課題について、1)15歳未満の入院患者や小児科を標榜する病院が減少傾向だが、PICUなど小児の一部の入院料は届出機関数、病床数が増加、2)小児ではアレルギー関連疾患の受診が多く、小児用医薬品もアレルギー用薬が最も多い、3)精神および行動障害の疾病が増加、4)小児の精神疾患等の診療報酬上の算定回数は年々増加傾向、5)小児の疾患特性から継続的な介入および本人の成長や環境に応じた形で適切に対応するなどを挙げた。

(参考1)乳幼児期~学童期・思春期に関する課題と論点
【現状・課題】
○我が国の出生数・出生率は減少傾向にあり、15歳未満の入院患者数や小児科を標榜する病院は減少傾向にある。他方、小児に係る一部の入院料については届出を行う医療機関数、病床数は増加している。
○新生児集中治療室管理料の届出を行う医療器関数は増加傾向であり、3床未満等、小規模の届出を行う医療機関がある。
○小児においては、アレルギー関連疾患の受診が多く、小児に用いられる医薬品はアレルギー用薬が最も多い。また、精神及び行動の障害といった疾病が増加している。
○小児の疾患特性を鑑みると、質の高い医療を提供するためには、継続的な介入及び本人の成長や周囲の環境変化等に適切に対応することが重要。
○小児のう歯数、う蝕有病率は減少傾向にある。他方、歯肉に炎症のある患者は増加傾向。
○小児における訪問看護利用者のうち、難病や医療的ケアに該当する者の割合は増加している。
平成30年度改定では、これらの児に関する学校との情報連携について評価を行っている。
【論点】
○少子化が進行し、入院から外来を主体とした医療へ変化する中で、小児の入院・外来のあり方についてどう考えるか。
○主な受診理由(疾患等)や小児の疾病特性を踏まえ、質の高い医療を確保するために、適切な医療のあり方についてどう考えるか。
○継続的な管理が必要な疾患等についてどう考えるか。
(出典 第412回中央社会保険医療協議会総会(2019年4月10日開催)資料より抜粋作成)(参考2も同じ)

議論では、支払い側委員が、小児期の医療の在り方について「論点を出す前に診療報酬で評価すべきことと、自治体等で対応すべきなのかを整理し、めりはりのついた対応を進めていくべき」と主張したという。一方、診療側委員は、乳幼児期から学童期・思春期について「予防と継続的な介入の視点が重要。精神疾患の概念が大きく変わる中で、誰が診ていくのかという点は大きな課題である。乳児検診等を利用してしっかり診ていくことが必要であり、小児科医などを支える診療報酬は現在でも十分とは言えず、今後検討すべきだ」と強調したと報じられている。

周産期などの論点は基礎疾患がある妊産婦への支援――妊婦加算の再算定は夏にも結論

この日の総会で厚労省は、周産期医療も取り上げられた。昨年末に凍結された妊婦加算について、診療側、支払い側ともに「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」の取りまとめを基に議論すべきとの見解で一致したという。同検討会は6月までに意見を取りまとめる予定である。周産期医療の現状は、妊産婦の高齢化に伴い偶発合併症(妊娠していなくても発症する疾患)が増加傾向にあり、身体的疾患に加えて精神疾患がある妊産婦も少なくない。出生数の減少とともに、分娩取り扱い医療機関も減少しており、分娩を取り扱っていない診療所の割合が高くなっている。厚労省はこれらを踏まえ、基礎疾患がある妊産婦への支援などを論点として提示。また参考資料として妊婦加算の概要も示した。

(参考2)周産期等に関する課題と論点
【現状・課題】
○初産年齢の高齢化や、産婦の高齢化を背景に、基礎疾患や精神疾患等をもつ妊婦が増加している。
○これに伴って、ハイリスクな妊婦への対応がさらに求められているところ。
○この間、周産期の医療提供体制の構築にあたっては、周産期母子医療センターの整備、また、診療報酬においては、ハイリスク妊婦の診療に係る加算等を行ってきた。
○また、妊産婦に対する歯科健診や薬の相談等、妊婦を取り巻く健康上の不安や問題等への対応についても、保健サービスとの連携等の取り組みを進めている。
○さらに、産後の乳腺炎等、包括的なケアを要する場面への対応を進めてきたところ。
○妊産婦本人にとっても、納得の得られるような医療提供のあり方が求められている。
【論点】
○周産期における評価は、これまで入院医療を中心とした提供体制の評価や、ハイリスクの妊婦への評価を重点的に行ってきたが、主に外来医療での対応が中心となる基礎疾患をもつ妊婦等に対する支援ついてどう考えるか。
○その他、妊産婦を取り巻く環境の変化を踏まえ、どのような取り組みが必要と考えるか。

支払い側委員は、妊婦加算について「患者の視点が欠けていた」と指摘し、患者の納得感が重要だと発言している。妊産婦の支援に関しては、診療報酬だけでなく補助金による支援も併せて考える必要があるとした。そのため、検討会の取りまとめを基に議論すべきとした。診療側委員は「妊婦加算の方向性は間違っていなかった」とし、検討会での議論を踏まえて再度議論すべきだと主張した。併せて、妊産婦の精神疾患は虐待につながる恐れもあると指摘し、周産期母子医療センターなどへの支援が必要だと強調したという。他の診療側委員は、院内助産の開設状況が都道府県ごとに大きくばらついていると指摘し、要因を分析して必要な手当を検討すべきだと提言した。

青年期から中高年期までの課題――生活習慣病への早期かつ継続的な管理のための取り組み

4月24日の総会では、厚労省から、「青年期~中年期」「高齢期」「人生の最終段階」の3段階に分けて論点を提示された。「青年期~中年期」では1)生活習慣病への早期かつ継続的な管理のための取り組み、2)生活習慣病のみならず、精神疾患、女性特有の疾患、がん等を含め、治療と仕事の両立のための産業保健との連携への取り組み―などを課題に挙げた。課題を取り巻く現状としては、生活習慣病管理料では2015年以降、算定回数が減少傾向にあることや、治療と仕事の両立では、国内労働人口の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら就業している実態があることなどを報告した。
議論で支払い側委員は、生活習慣病への継続的な対応や、治療と職業生活の両立支援を進めるためにもオンライン診療のさらなる算定要件緩和等の必要性を訴えた。診療側委員はオンライン診療の拡大につながる要件緩和には慎重姿勢を示したという。

(参考3)青年期~中年期(20~30代、40~60代)の論点
○生活習慣病に対する早期かつ継続的な管理のために、どのような取組を進めるべきか。
○生活習慣病のみならず、精神疾患、女性特有の疾患、がん等を含め、治療と仕事の両立のための産業保健との連携として、どのような取組が考えられるか。
○成人に対するう蝕、歯周病、破折による抜歯等を減少させるために、どのような取組が考えられるか。
○成人の歯周病の重症化を予防するために、どのような取組が考えられるか。
(出典 第413回中央社会保険医療協議会総会(2019年4月24日開催)資料より抜粋作成)(参考4、5も同じ)
また、支払い側委員がオンライン診療に関連して「生活習慣病の初期段階の管理は保険者の責務だが、さまざまな形で医療機関への受診を促しているがなかなか難しい。働きながら疾病管理を継続するためにオンライン診療を有効に活用することは、保険者としては選択肢と考えている。算定要件を緩和して疾病管理に活用できるようにすべきだ」と主張。別の支払い側委員は「小規模事業所でも治療しながら継続して従事できるようオンライン診療の在り方についての検討を深めるべきだ」と発言し、支払い側の他の委員からも次期改定を見据えた算定要件等の見直しの議論を求める意見が出たという。
診療側委員は「働き方改革とも関連するが、患者としっかり対面診療ができる環境づくりが重要と考える。利便性のみに着目してオンライン診療を語ることには慎重であるべき」と、支払い側の主張を牽制した格好だ。診療側委員は「医療になかなかアクセスできない場合にオンライン診療は活用されるべきもの。便利だからといって議論を進めることは難しい」などとこれまでとおりの主張をした。その上で「オンライン診療が対面診療と同等のエビデンスがあるのか、学会ベースでそれぞれの診療の専門家からエビデンスを示していただき、それに基づき議論を進めるべきだ」と述べた。一方で支払い側委員は「利便性というのは、治療の継続性を担保する観点からも必要な視点だ」と述べ、オンライン診療の算定要件等は改定に向けた一つの焦点になるとの見方を示し、まだまだ統一した見解としての意見はまとまっていない。

高齢期の論点はポリファーマシー対策への取り組み――高齢者の生活環境の変化への取り組みなど

この日の総会で厚労省は、高齢期の論点として、高齢者のポリファーマシー(多剤投与による有害事象の発生)対策への取り組みや、高齢者の生活環境の変化への取り組みなどを挙げた。厚労省は総会で、高齢者の薬剤使用状況の実態などを報告。75歳以上の高齢者が1カ月間に1つの医療機関から処方される薬剤の種類は約25%で7種類以上、40%が5種類以上であるなどのデータを提示している。

(参考4)高齢期の論点
○高齢化の状況や高齢者の生活環境の変化を踏まえ、高齢期の特性に応じた取組について、どのように考えるか。
○高齢期の治療・療養の希望や現状の医療提供体制を踏まえ、今後の体制の構築について、どのように考えるか。
○全年齢を通じたう蝕治療等は重要だが、特に高齢者に特徴的な根面う蝕の対策についてどのような取組が考えられるか。
○高齢者等に対する口腔機能管理の推進について、どのような取組が考えられるか。
○口腔の健康に問題を抱えていても歯科医療機関への通院が困難な高齢者に対してどのような取組が考えられるか。
○薬局の訪問薬剤管理指導について、様々な患者のニーズに対応するためにどのような取組が考えられるか。
○高齢者のポリファーマシー対策のために、どのような取組が考えられるか。

(参考5)人生の最終段階の論点
○患者の意思を尊重した人生の最終段階における医療体制について、患者の意思決定支援の取組(ACP等)の普及状況等を踏まえ、どのように考えるか。
○多職種による医療・ケアの取組については、平成30年度診療報酬改定において一定の評価を行ったことを踏まえ、どのように考えるか。
議論で診療側委員は「高齢者医療の現場では、処方薬の種類が増えてしまうのは自然なことで、現場の主治医は多剤処方を余儀なくされている。多剤処方で減算されるのは時代に逆行するもので、多剤処方減算は、かかりつけ医の強化と相いれない」と問題意識を示した。ポリファーマシーの対応では「厚労省が高齢者の医薬品適正使用指針をまとめているが、多職種連携による定期的な確認作業と、患者家族との話し合いが重要で、それを含めた服薬管理にすべきだ」などと述べたと報じられている。

年代別の課題整理と論点から見て取れること――診療報酬のみでの評価は限界

4月の総会で「周産期・乳幼児期」や「学童期・思春期」などを含め、5段階に分けた年代別の課題整理の議論が一巡した。5月からは昨今の医療と関連性の高いテーマについての課題整理の議論に入る。年代別・世代別の論点から見て取れることは、すべて診療報酬で評価されるほどの財源がないという現状だ。総会委員からの意見にもあるように、例えば乳児検診等の結果と小児科医の報酬との関連性や、高齢者の介護予防やフレイル対策・医療は、市町村や保険者の事業としてそれぞれ役割分担し、総合的に評価する必要がある。こうした取り組みに医療機関が参加する場合は、財源を診療報酬に求めるのではなく、地方交付金等で対応すべきたろう。さらに、妊婦加算について妊婦は、産科以外の医療機関での対応に心配りが少ない、または劣るなどとの妊婦患者の意見もあり、再算定される場合、患者負担金相当額も公費負担とする必要があるのではないか。いずれにせよ今後の動向に注視していただきたい。

顧問 宮坂佳紀(メディカル・テン代表)


「日本語と向き合う」

介護支援専門員の仕事上、他者が記入した書類を読む機会が多い。卓越した文章に出会うと感動を覚える。本人の希望に添った介護の内容が描かれているケアプラン、介護支援専門員の考察が良く分かる課題整理総括表、これまでの人生がストーリーとして描かれているアセスメントシート、ロジカルに記入された医師の意見書などだ。稚拙な文章しか書けない自分を恥じることも多いが、聞き手の語彙力によってアセスメントは深まるものだと思い、研鑽を積みたいと思っている。職場では、日々起こっている複雑な事象について「今の事象を具体的に言語化してみて!」→「う~ん。~~ということかな。」という会話を楽しんでいる。

日本語の表現は奥深く、その言葉の変遷に興味がある。言語学研究においては、言語は変化するものであって正誤はなく、より恣意的な表現に変わっていくものであるとされている。特に若者世代が新しい言葉を創造する傾向にあり、より合理的で端的な表現に変わり、早口になる傾向があるそうだ。日本語で例えると、「有り難きこと・かたじけない」→「ありがとう」や、「凄い・美味しい・驚いた」→「やばい」等であろうか。

どの時代も言葉の使い方の正誤や、若者世代の言葉の乱れが指摘される。言葉には国家の公用語という考え方に基づく正誤があり、品格や人間性が反映されるという面がある。「的を“射た”意見」と「的を“得た”意見」は、公用語の日本語の観点からは前者が正しいとされることが多く、後者を使うと誤用であると指摘を受ける。しかし言語研究の観点では正誤はなく、今後も変化していくだろうとされる。いずれは後者も市民権を得るかもしれないし、どちらも使われなくなるかもしれない。このあたりの考え方の対比から、言葉は生きていると捉えることができて面白い。

ネイティヴスピーカーの数(母語話者)が多い言語で、日本語は世界第9位(1億3400万人)となっている。2位・英語(5億3000万人)、4位・スペイン語(4億2000万人)は複数地域で公用語として使われるが、日本語は日本でしか使われていない。日本の在留外国人数は2018年6月末時点で約263万人とある、過去最高だそうだ。介護人材不足等の対策として、2018年12月、新たな在留資格の創設を盛り込んだ改正入国管理法が成立した。2019年4月の同法施行により、今後5年間に最大34.5万人の新たな外国人材の受入れが想定されている。外国人労働者を受け入れる国内の日本語教育環境は十分でなく、社会の安定のためには真摯に取り組んでいかなければならない問題だろう。

                               理事  中吉 克則

 

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