130号 2019/04

 

ケアマネニュース(19年4月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回は2019年10月の消費税引上げに伴う介護報酬改定で創設される介護職員などの特定処遇改善加算の解釈と2020年度診療報酬改定の論点について掲載する。

□厚労省が介護職員の特定処遇改善加算質疑応答を発出――加算は、介護職員の確保・定着につなげる目的も

厚生労働省は4月12日付で、今年10月の消費税引き上げに伴う介護報酬改定で創設する介護職員などの特定処遇改善加算(加算)に関する通知を発出した。加算の基本的な考え方と事務処理手順などを解説する内容。通知は10月1日から適用する。申し込み〆切は8月末日となる。なお、2020年度からは4月から1年間適応となるため、2020年2月末日が〆切となる。

加算は、介護職員の確保・定着につなげる目的があるとし、経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、併せて他の職種も一定程度処遇改善できる「柔軟な運用を認める」とした。サービス別の基本サービス費に現行の処遇改善加算を除く各種加算減算を加えた「1月当たりの総単位数」に「サービス別加算率」を乗じた単位数を算定する。区分支給限度基準額の算定対象にはしない。また、安定的な処遇改善が重要であるため、基本給による賃金の改善が「望ましい」とした。以下に通知のポイントを掲載する。

(参考1)介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(2019年10月1日から適用)(抜粋)

1 基本的考え方

現行加算は、平成23年度まで実施されていた介護職員処遇改善交付金(以下「交付金」という。)による賃金改善の効果を継続する観点から、平成24年度に、当該交付金の対象であった介護サービスに従事する介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設され、その後数次にわたり拡充を図ってきたものである。

2019年度の介護報酬改定においては、介護職員の確保・定着につなげていくため、現行加算に加え、特定加算を創設することとし、経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、職員の更なる処遇改善を行うとともに、介護職員の更なる処遇改善という趣旨を損なわない程度において、一定程度他の職種の処遇改善も行うことができる柔軟な運用を認めることとしたものである。

なお、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、特定福祉用具販売並びに介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売並びに居宅介護支援及び介護予防支援は算定対象外とする。

当該加算は、区分支給限度基準額の算定対象から除外。

2 介護職員等特定処遇改善加算配分対象と配分方法

①配分対象と配分方法

一 賃金改善の対象となるグループ

a 経験・技能のある介護職員

介護福祉士であって、経験・技能を有する介護職員と認められる者をいう。

具体的には、介護福祉士の資格を有するとともに、所属する法人等における勤続年数10年以上の介護職員を基本としつつ、他の法人における経験や、当該職員の業務や技能等を踏まえ、各事業所の裁量で設定することとする。

b 他の介護職員

経験・技能のある介護職員を除く介護職員をいう。

c その他の職種

介護職員以外の職員をいう。

二 事業所における配分方法

実際に配分するに当たっては、一a~cそれぞれにおける平均賃金改善額等について、以下のとおりとすること。この場合において、二a~c内での一人ひとりの賃金改善額は、柔軟な設定が可能であること。

a 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善に要する費用の見込額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする。以下同じ。)以上又は賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であること(現に賃金が年額440万円以上の者がいる場合にはこの限りでない)。ただし、以下の場合など例外的に当該賃金改善が困難な場合は合理的な説明を求めることとすること。

・小規模事業所等で加算額全体が少額である場合

・職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合

・8万円等の賃金改善を行うに当たり、これまで以上に事業所内の階層・役職やそのための能力・処遇を明確化することが必要になるため、規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要する場合

b 当該事業所における経験・技能のある介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均が、他の介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること。

c 他の介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均が、その他の職種の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること。ただし、その他の職種の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合はこの限りでないこと。

d その他の職種の賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円を上回らないこと(賃金改善前の賃金がすでに年額440万円を上回る場合には、当該職員は特定加算による賃金改善の対象とならない)。

 

併せて、同日厚労省が発出した「2019年度介護報酬改定に関するQ&A」の第1弾では、加算の1)取得要件、2)配分対象と配分ルール、3)指定権者への届け出―に関する15項目を掲載している。

指定権者への届け出では、法人単位での取り扱いが認められる事項を「月額8万円の処遇改善となる者または処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上となる者を設定・確保」と「経験・技能のある介護職員、他の介護職員、その他の職種」とした。ただし、月額8万円の処遇改善となる者などの設定については、一括で申請する事業所の数に応じて設定する必要がある。

(参考2)「2019年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成31年4月12日)」

【介護職員等特定処遇改善加算】

1)取得要件について

問1 介護職員等特定処遇改善加算は、勤続10年以上の介護福祉士がいなければ取得できないのか。

(答)

介護職員等特定処遇改善加算については、

・現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得していること

・介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること

・介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること

を満たす事業所が取得できることから、勤続10年以上の介護福祉士がいない場合であっても取得可能である。

問2 職場環境等要件について、現行の介護職員処遇改善加算の要件を満たすものとして実施している取組とは別の取組を実施する必要があるのか。

(答)

・介護職員等特定処遇改善加算における職場環境等要件については、職場環境等の改善が行われることを担保し、一層推進する観点から、複数の取組を行っていることとし、具体的には、「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」及び「その他」の区分ごとに一以上の取組を行うことが必要である。

・これまで介護職員処遇改善加算を算定するに当たって実施してきた取組をもってこの要件を満たす場合、介護職員等特定処遇改善加算の取扱いと同様、これまでの取組に加えて新たな取組を行うことまでを求めているものではない。

問3 ホームページ等を通じた見える化については、情報公表制度を活用しないことも可能か。

(答)

事業所において、ホームページを有する場合、そのホームページを活用し、

・介護職員等特定処遇改善加算の取得状況

・賃金改善以外の処遇改善に関する具体的な取組内容

を公表することも可能である。

 

2)配分対象と配分ルールについて

問4 経験・技能のある介護職員について、勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方については、事業所の裁量で設定できることとされているが、どのように考えるのか。

(答)

「勤続10年の考え方」については、

・勤続年数を計算するにあたり、同一法人のみだけでなく、他法人や医療機関等での経験等も通算する

・すでに事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなど、10年以上の勤続年数を有しない者であっても業務や技能等を勘案して対象とする

など、各事業所の裁量により柔軟に設定可能である。

問5 経験・技能のある介護職員に該当する介護職員がいないこととすることも想定されるのか。その場合、月額8万円の賃金改善となる者又は処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)以上となる者を設定・確保することは必要か。

(答)

・経験・技能のある介護職員については、勤続年数10年以上の介護福祉士を基本とし、各事業所の裁量において設定することとなり、処遇改善計画書及び実績報告書において、その基準設定の考え方について記載することとしている。

・今回、公費1000億円程度(事業費2000 億円程度)を投じ、経験・技能のある介護職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を行うという介護職員等特定処遇改善加算の趣旨を踏まえ、事業所内で相対的に経験・技能の高い介護職員を「経験・技能のある介護職員」のグループとして設定し、その中で月額8万円の賃金改善となる者等を設定することが基本となる。

・ただし、介護福祉士の資格を有する者がいない場合や、比較的新たに開設した事業所で、研修・実務経験の蓄積等に一定期間を要するなど、介護職員間における経験・技能に明らかな差がない場合などは、この限りでない。なお、このような「経験・技能のある介護職員」のグループを設定しない理由についても、処遇改善計画書及び実績報告書に具体的に記載する必要がある。

・どのような経験・技能があれば「経験・技能のある介護職員」のグループに該当するかについては、労使でよく話し合いの上、事業所ごとに判断することが重要である。

 

問6 月額8万円の処遇改善を計算するに当たり、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することは可能か。

(答)

月額8万円の処遇改善の計算に当たっては、介護職員等特定処遇改善加算にもよる賃金改善分で判断するため、現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分とは分けて判断することが必要である。

問7 処遇改善後の賃金が、役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上かを判断するにあたっての賃金に含める範囲はどこまでか。

(答)

「経験・技能のある介護職員」のうち設定することとしている「月額8万円の処遇改善」又は「処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上」の処遇改善となる者に係る処遇改善後の賃金額については、手当等を含めて判断することとなる。なお、「月額8万円」の処遇改善については、法定福利費等の増加分も含めて判断し、処遇改善後の賃金「440 万円」については、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含まずに判断する。

問8 2019年度は10月から算定可能となるが、経験・技能のある介護職員について、処遇改

善後の賃金が、役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)以上かを判断するにあたり、考慮される点はあるのか。

(答)

処遇改善後の賃金が年額440万円以上となることが原則であるが、介護職員等特定処遇改善加算が10 月施行であることを踏まえ、2019年度の算定に当たっては、6月間又はそれ以下の期間の介護職員等特定処遇改善加算を加えても年収440万円以上を満たすことが困難な場合、12 月間加算を算定していれば年収440万円以上となることが見込まれる場合であっても、要件を満たすものとして差し支えない。

問9 その他の職種の440万円の基準を判断するにあたって、賃金に含める範囲はどこまでか。

(答)

その他の職種の440万円の基準については、手当等を含めて判断することとなる。なお、法定福利費等は含めない。

 

問10 その他の職種の440万円の基準についての非常勤職員の給与の計算はどのように行うのか。

(答)

その他の職種の440万円の基準についての非常勤職員の給与の計算に当たっては、常勤換算方法で計算し賃金額を判断することが必要である。

問11 小規模な事業所で開設したばかりである等、設定することが困難な場合に合理的な説明を求める例として、8万円等の賃金改善を行うに当たり、これまで以上に事業所内の階層・役職やそのための能力・処遇を明確化することが必要になるため、規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要する場合が挙げられているが、「一定期間」とはどの程度の期間を想定しているのか。

(答)

・実際に月額8万円の改善又は年収440万円となる者を設定するにはこれまで以上に事業所内の階層・役職やそのための能力・処遇を明確化することが必要になるため、時間を要する可能性があるが、規程の整備等については適切にご対応いただきたい。

・当該地域における賃金水準や経営状況等、それぞれ状況は異なることから、「一定期間」を一律の基準で定めることや計画を定めて一定の期間で改善を求めることは適切でない。

問12 各グループの対象人数に関して、「原則として常勤換算方法による」とされているが、どのような例外を想定しているのか。

(答)

各グループにおける平均賃金改善額を計算するに当たっては、経験・技能のある介護職員及び他の介護職員については、常勤換算方法による人数の算出を求めている。一方で、その他の職種については、常勤換算方法のほか、実人数による算出も可能であり、各事業所における配分ルールにも影響することも踏まえ、労使でよく話し合いの上、適切に判断されたい。

問13 平均改善額の計算にあたり、母集団に含めることができる職員の範囲はどこまでか。

(答)

賃金改善を行う職員に加え、賃金改善を行わない職員についても、平均改善額の計算を行うにあたり職員の範囲に含めることとなる。

 

3)指定権者への届出について

問14 実績報告に当たって、積算の根拠となる資料は「求められた場合には、提出できるようにしておく」とあるが、予め提出を求めても差し支えないか。

(答)

・今後とも見込まれる厳しい介護人材不足の中、国会等でも介護事業所の事務負担・文書量の大幅な削減が強く求められている。

・過去の経緯等を踏まえ、特定の事業所に個別に添付書類の提出を求めることは差し支えないが、各事業所における賃金改善の方法や考え方については、処遇改善計画書及び実績報告書において記載を求めており、また職員の個々の賃金改善額は柔軟に決められる一方、各グループの平均賃金改善額のルールを設け、実績報告書に記載を求めるものであり、更に詳細な積算資料(各職員の賃金額や改善額のリスト等)の事前提出を一律に求めることは想定していない。

問15 介護職員等特定処遇改善加算については、法人単位の申請が可能とされているが、法人単位での取扱いが認められる範囲はどこまでか。

(答)

・法人単位での取扱いについては、

・月額8万円の処遇改善となる者又は処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上となる者を設定・確保

・経験・技能のある介護職員、他の介護職員、その他の職種の設定が可能である。

・また、法人単位で月額8万円の処遇改善となる者等の設定・確保を行う場合、法人で一人ではなく、一括して申請する事業所の数に応じた設定が必要である。なお、事業所の中に、設定することが困難な事業所が含まれる場合は、実態把握に当たりその合理的理由を説明することにより、設定の人数から除くことが可能である。

・なお、取得区分が(Ⅰ)、(Ⅱ)と異なる場合であっても、介護職員等特定処遇改善加算の取得事業所間においては、一括の申請が可能である(未取得事業所や処遇改善加算の非対象サービスの事業所、介護保険制度外の事業所については一括した取扱いは認められない。)。

 

2020年度診療報酬改定第1ラウンド開始――年代別に5段階での課題整理と改定関連6項目

3月下旬に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、厚生労働省は2020年度診療報酬改定に向け、夏までの「第1ラウンド」で議論すべき課題や今後の進め方などを提示した。第1ラウンドでは、乳幼児期から人生の最終段階までの年代別に5段階に分けている。その上で、患者の疾病構造や受療行動等から課題を整理する。厚労省は、年代別に5段階に分けるテーマとして、1)周産期・乳幼児期(妊娠から出産、新生児、乳幼児)の周産期医療体制の確保やハイリスク妊婦の診療体制、新生児やNICUを退院した児に対する診療体制など、2)学童期・思春期(就学前、小学生から大学生等)の予防接種の拡充や少子化による外来医療・入院医療の変化を踏まえた診療体制など、3)青年期・壮年期・中年期(20代~30代、40代~60代)の仕事との両立のための産業保健との連携や生活習慣病に対する継続的な管理など、4)高齢期の認知症への対応など、5)人生の最終段階の多職種による医療・ケアの取り組みなど、を挙げた。

加えて、昨今の医療と関連性の高いテーマとして「働き方改革と医療の在り方」「新たなエビデンスやICT技術を踏まえた医療の在り方」「医薬品・医療機器等の適正な利用の在り方」など6項目に分け、具体的な事例を示した。さらに中医協総会で厚労省は、働き方改革など医療との関連性が高いテーマの課題も整理することを提案し、了承されている。

中医協は4月から、支払い(保険者代表)側・診療(医療機関代表)側の意見を踏まえ、第1ラウンドの議論を開始。また、秋以降の第2ラウンドの議論では、外来・入院・在宅・歯科・調剤など具体的な診療報酬の評価に向けた検討が進められる見込みだ。今回から2020年度診療報酬改定動向について私見をふまえ先読みしたい。

(参考)2020年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方及び課題について(案
◯ 2020年度の診療報酬改定については、前回の中医協総会において、主な検討スケジュール等について確認したところ。
◯ 今後の具体的な検討については、以下のように進めることとしてはどうか。
1.2020年度診療報酬改定に向けた主な検討項目
2020年度の診療報酬改定に向けた検討においては、春から夏までの第1ラウンドにおいては、報酬の項目にとらわれすぎない活発な議論を促進する観点から、

①患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、年代別に課題を整理

②昨今の医療と関連性の高いテーマについて課題を整理

を行うことを基本としてはどうか。

なお、秋からの第2ラウンドについては、概ね従前のような、外来・入院・在宅・歯科・調剤といった個別テーマに分けて、これまでの診療報酬改定での検討項目、平成30年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見、他の審議会等の議論等を踏まえた、具体的な診療報酬における評価に向けた検討を進めることとしてはどうか。

(1)議論における主なテーマ
※議論に当たっては、医科・歯科・調剤・看護等の課題及び診療報酬上の評価の在り方について、横断的に議論を行うこととする。
①患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、年代別に課題を整理
ア 周産期・乳幼児期(妊娠から出産、新生児、乳幼児)
-周産期医療体制の確保

-偶発合併症を有する妊婦の診療体制

-ハイリスク妊婦の診療体制

-新生児やNICUを退院した児に対する診療体制 など

イ 学童期・思春期(就学前、小学生、中学生、高校生、大学生等)
-予防接種の拡充や少子化による、外来医療・入院医療の変化を踏まえた診療体制

-小学生期以降におけるかかりつけ医機能の在り方

-思春期におけるメンタルヘルス対策 など

ウ 青年期・壮年期・中年期(20代~30代、40代~60代)
-仕事との両立のための産業保健との連携

-生活習慣病に対する継続的な管理

-生活習慣病以外の疾患の管理 など

エ 高齢期
-増加する認知症への対応

-重症度や居住形態を踏まえた更なる医療体制の構築

-フレイル等患者の特性に応じた取組 など

オ 人生の最終段階
-人生の最終段階における多職種による医療・ケアの取組

-意思決定の支援(人生会議(ACP)等)の普及・定着に向けた取組 など

②昨今の医療と関連性の高いテーマについて課題を整理
ア 患者・国民に身近な医療の在り方
-患者にとって必要な情報提供や相談支援の在り方(診療計画書、明細書等)

-かかりつけ医機能とかかりつけ薬剤師・薬局機能の連携

-紹介状なしの大病院受診時の定額負担 など

イ 働き方改革と医療の在り方
-医師等の働き方の見直しを踏まえた対応

-業務の効率化の観点を踏まえた医師・看護師等の外来等の配置基準の在り方

-タスクシフト、タスクシェアの推進、チーム医療の推進等に係る取組 など

ウ 今後の地域づくり・街づくりにおける医療の在り方
-今後の人口減少社会における医療体制の確保

-地域医療構想の達成に向けた取組、

-医療機能の分化・連携、患者の状態に応じた取組

-外来診療の提供体制

-地域包括ケアシステムの構築に向けた取組

-救急医療・災害医療・へき地医療対策等の評価 など

エ 新たなエビデンスやICT技術を踏まえた医療の在り方
-新規医療技術への対応

-新たなエビデンスを踏まえた医療の質の確保

(診療ガイドライン、既収載の技術等の見直し等)

-医療の質を高める研究の推進

-ICTやデータヘルスの利活用 など

オ 介護・障害者福祉サービス等と医療との連携の在り方
-地域包括ケアシステムの構築に向けた介護サービスとの連携

-地域移行・地域生活支援の推進

-様々な依存症対策への対応 など

カ 医薬品・医療機器等の適正な利用の在り方
-多剤投与、重複処方等への対応

-後発医薬品の使用促進

-フォーミュラリー等への対応

-高額医療機器の共同利用の推進 など

(出典)第411回中央社会保険医療協議会総会2019年3月27日・厚労省ホームページ)

2018年度診療報酬改定結果検証4項目内容も関連――かかりつけ医機能と在宅医療の評価結果どうなる

中医協総会では、2018年度診療報酬改定に伴って実施された4つの特別調査結果について報告結果も公表されている。調査結果は、1)かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(その1)、2)在宅医療と訪問看護に係る評価等に関する実施状況調査、3)医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進に係る評価等に関する実施状況調査(その1)、4)後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査、の4項目。

「かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(その1)」によると、

新設された初診料の機能強化加算は病院で約8割、診療所で約半数が届け出ていた。一方で

地域包括診療料・地域包括診療加算の届け出状況では、届け出ていなかったのは病院で約9割、診療所で約6割を占めた。地域包括診療料・地域包括診療加算の届け出が困難な理由は、慢性疾患の指導に関する研修を修了した医師の配置や24時間対応の薬局との連携、夜間・休日の問い合わせへの対応などだった。また、機能強化加算については、支払い側から体制加算ではなく、実績に応じた加算として見直すべきとの意見もあり、次期改定では算定要件の厳格化も予測できよう。

「在宅医療と訪問看護に係る評価等に関する実施状況調査」では、2018年度診療報酬改定で評価が新設された2カ所目の医療機関による訪問診療の実施状況などが示された。2018年4月から9月の間、自施設が主治医として訪問診療を提供している患者のうち、他医療機関に訪問診療を依頼した患者について、依頼先の医療機関が実施する訪問診療の期間(見込みの期間も含む)を見ると、「6カ月超」が最も多く、病院で46.2%、診療所で41.6%だった。次いで「1カ月超~3カ月」が病院で23.1%、診療所で22.1%だった。

依頼した診療科を見ると、最多は内科(病院30.8%、診療所31.2%)で、皮膚科(病院15.4%、診療所19.5%)、精神科(病院15.4%、診療所5.2%)、歯科(病院15.4%、診療所15.6%)なども多かった。依頼した対象病名として多い項目を挙げると、病院では「循環器疾患(高血圧症、心不全など)」「認知症」「皮膚疾患(褥瘡等)」「歯科・口腔疾患」などがあった。診療所では「皮膚疾患(褥瘡等)」「脳血管疾患(脳梗塞、脳内出血など)」「歯科・口腔疾患」となった。

この調査結果によると、主たる訪問診療実施医療機関と専門医療機関の関連については、継続的に評価されるのではないだろうか。とりわけ2018年度改定で新設された医科と歯科機関間での連携を評価した「診療情報連携共有料」の関連も気になるところだ。

医療従事者の負担軽減の評価は限定的――後発医薬品使用促進策は最終段階に

本年4月から医師を除く職員への働き方改革が始まり、年次有給休暇5日の取得などが義務つけられた。2020年度改定での評価が気になる医療従事者の負担軽減等に関する調査のうち、医師の負担軽減策の取り組みとして「医師事務作業補助者の外来への配置」が31.9%、「医師の増員」が30.0%とする結果や、医師の勤務状況等では「変わらない」としたのが60.1%で最も高いことが明らかになった。この結果からみて医師の働き方等の検討が進められているものの、限られた人材資源について価格政策で進めることには限界があると思われる。というのも計画とおり医師の働き方改革を進めることで生じる結果は、人員増などによる人件費増加であり、病院経営に大きくのしかかる。働き方改革を推し進めるためには、「診療報酬改定や他の補助策等での国の支援が不可欠」となるからだ。

2018年度調剤報酬改定では、後発医薬品使用促進策として後発品調剤体制加算を従来の1(65%以上・18点)、2(75%以上・22点)から、1(75%以上・18点)、2(80%以上・22点)、3(85%以上・26点)に底上げした。診療報酬改定では、一般名処方加算も後発品がある品目全てで一般名処方されている場合の1を6点、1品目でも一般名処方がある場合の2を4点にそれぞれ倍増評価された。また、後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査によれば改定後の平均使用割合(2018年7~9月)は、後発品調剤体制加算1の「75%以上80%未満」が19.1%、2の「80%以上85%未満」が18.3%、3の「85%以上」が16.7%で、前年同期に比べてそれぞれ3.1ポイント、6.3ポイント、12.9ポイント増加した。一般名で処方された品目数の割合(2018年9月の1週間)も、前年から8.4ポイント増の43.3%に上昇。先発医薬品名で処方された品目のうち、後発品への「変更不可」とされた品目数の割合は6.1%(2ポイント減)まで圧縮している。

ただ、調査結果によると、後発医薬品の使用割合は薬局74.9%、病院78.5%に対して診療所が51.6%と大きな差がある。この結果検証とともに、後発医薬品使用目標も80%に近づいており、次期改定では加算から減算への政策導入改定となる可能性も少なくはない。

2020年度診療報酬改定は期待薄――財源なき改定、医療費抑制改定も

2018年度改定は介護保険とのダブル改定となり、入退院支援、医療と介護の連携強化などが双方で大きく評価された。また、現在凍結されている「妊婦加算」や初診料の「機能強化加算」新設という外来評価。入院では急性期入院基本料の見直しと医療看護必要度の底上げ、地域包括ケア病棟の在宅実績評価や回復期リハビリテーション病棟のリハ実績指数による入院料の引上げ、在宅医療でのメリハリ評価などがあった。加えて具体的な評価は先送りとなるが、2019年10月の消費税引上げ対応改定も病院機能別に分配評価された。

一方2020年度診療報酬改定は、前述の中医協資料をみても新規に評価される項目がない。乱暴な見方をするとこれまでの「焼き直し」改定といえる。併せて2020年改定まで1年を切った時期にも関わらず表層的な議論になることが想定できる厚労省の提案である。今後秋までに論点整理されるが、厚労省提案の課題に、エビデンスがあるのかなどの洗い出しも必要不可欠となるだろう。

一方2020年度は国政選挙もなく、医療関係団体に考慮した改定時期ではない。併せて継続される「財源なき改定」となり、医療費抑制改定にもなりかねない時期だ。したがって、医薬品の保険適用の範囲や中医協以外の審議会で議論されている保険と自費の併用、オンライン診療の範囲拡大などについても2020年度改定項目として検討されることも予測できる。いずれにせよ今後の動向に注視していただきたい。

顧問 宮坂佳紀(メディカル・テン代表)


「連携加算について考える」

ケアマネ・ポート60号に、医療機関での連携に関連した加算点数について書かせていただいた。書きながら、「そうは言ってもなあ」と思っていた。中には当然、運用方法が定まっていて、院内の各セクションがうまく機能し、効果的に加算を算定されている医療機関もあるだろう。今回、私が今の時点で、現場で感じることを、自分の書いた文章に一人ツッコミ・一人ボケとして書いてみることにした。

まず最初に、予約入院に対して評価する8項目を考える。

1)身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握

2)入院前に利用していた介護サービス・福祉サービスの把握

3)褥瘡に関する危険因子の評価

4)栄養状態の評価

5)服薬中の薬剤の確認

6)退院困難な要因の有無の評価

7)入院中に行われる治療、検査の説明

8)入院生活の説明

となっており、1)、2)、8)が必須項目となっている。
2)と8)は比較的取り組みやすい。問題は1)である。果たして、1)を把握する適材適所な職員は誰だろう?身体的側面・社会的側面・精神的側面という言葉は、ソーシャルワーカーが用いることが多い印象があるが、外来にソーシャルワーカーが配置できている医療機関がどのくらいあるだろうか?私の現場では、それは到底かなわない。どのように現場で運用しているかというと、予約入院の連絡が診療科から事務に入る→事務職員が8)入院生活の説明を行う→ソーシャルワーカーに連絡が入る→1)ご本人、ご家族にお話を聞いて、どのような背景の方であるのか理解を試みる、という流れを作った。正直ほぼ初対面で、限られた時間の中では、把握できる内容に限界がある。インテーク面接は非常に重要だと理解しているので、ご家族の構造を理解しようとジェノグラムを駆使して面談を試みるが、患者さんもご家族も、訝しげな顔をされることがある。入院してから看護師さんが聴取するアナムネの項目とも重なってしまう。日々の診療の中で関わっている外来看護師さんの方が、よほど的確な把握をされているのではないか?と感じながら実務に従事しているのが現状。しかし外来の場面では、ゆっくり患者さんやご家族の社会的・精神的側面にまで時間を割いて関わることが困難と言われている。必須項目以外の部分には、まだ着手できていない。しかしながら、入院の初動でお聞きする患者さんご家族の背景には、唸らされるもの、感動したり考えさせられる事が多いというのも、現場のリアルである。

次に、入退院支援加算に関連する14項目について考える。加算算定を目指すならば、入院早期から「退院が困難になる要因」を選定することになる。このスクリーニングに引っかからなかった人は院内の調整部門に連絡がこず、支援が遅れるということも予測される。

1)悪性腫瘍

2)認知症

3)誤嚥性肺炎などの急性呼吸器感染症

4)緊急入院

5)介護保険未申請

6)入院前に比べADLが低下し生活様式の再編が必要

7)排泄に介助を要する

8)必要な介護を十分に提供できない

9)退院後に医療処置(胃瘻など経管栄養を含む)が必要

10)入退院を繰り返している

11)その他患者の状況から判断して上記に準ずると認められる

12)高齢者世帯、独居

13)虐待を受けている又はその疑いがある

14)医療保険未加入者又は生活困窮者

これらの14項目は、いわゆる白本に掲載されたもので、病院によっては、独自に項目を設定しているところもある。私の知人が勤務する病院では、「独居」が退院困難な要因とは言えないだろうという考えのもと、12)をスクリーニング項目から削除したそうだ。これらの項目は、見る側が極めて主観的にチェックを入れることになる。8)などは典型で、「必要な介護が十分に提供できない」と言っているのはご家族なのか?ケアマネジャーなのか?病院職員なのか?誰目線なのかによって評価が異なってしまうし、ご家族の取り組み努力への尊敬や承認を感じられない恐れもある。実際の運用としては、病棟から入院より3日以内にスクリーニングシートがやってくる。それを受けて、病棟担当のソーシャルワーカーや退院調整看護師が、患者さんのお話を伺う。

例えば、家に帰るには、最低限どのくらいの動作ができないと厳しいか、家に帰るときに困りそうなことはあるか、利用したいと計画していたサービスはあるか、経済的にはどうか、などをお尋ねする。帰るタイミングを外さないために、末期癌の方にも同じようにお話を聞かせていただく。それを元に、主に病棟の看護師さんと打ち合わせをして退院支援計画書の原案を作り、患者さんに説明させていただく。私の場合は、お一人の患者さんに退院支援計画を書かせていただくのに数日を要する。規定では入院から7日以内にご本人、ご家族にお会いすることになっているが、実際は8日目になったり10日目になったりすることもある。スクリーニングシートが来て、お部屋に伺うまでは、ベテランでも勇気がいる。これから治療を受けようとする方に、退院を目指したお話をする恐怖感や違和感を感じるからだろう。ケアプランのように、利用者側から依頼を受けて作成する計画ではなく、こちらから打って出る感も肩に余計な力が入るのだろう。診療報酬を算定したいから計画を書かせていただくのではなく、私たちは、ご本人の意向に沿って、オーダーメイドの支援をしたいから計画を書かせていただくのだと、部内で励ましあいながら取り組んでいる最中である。

平成30年の改定で登場したこれらの加算は、PFM(Patient Flow Management)への評価と考えられる。これは、地域包括ケアの考え方と合致していて、その地域に暮らしている患者さんの流れを掌握し、マネジメントしていこうという考え方だと感じている。この新しい物の見方が定着すれば、ご家族やケアマネジャーが「これを機会に施設を」と言う入院ではなさそうだし、医師の「在宅は無理でしょう」というコメントだけを根拠に、患者さんの今後が決まる入院でもなさそうである。つまり、地域に暮らす患者さんにとって、時々入院、時々在宅が普通になったら、人々は、生活圏の中で、入院と在宅を流れるように、何度も移行することになるのだろう。今であれば、再入院は望ましくないと言われてしまうこともあるが、再入院は計画的に行われるようになるのだろう。入院というイベントが起こっていない時から、患者さんの背景を知っているということ。これは、カリスマ性のある一人のキーマンが、全てを掌握してコントロールするやり方では効率が上がらず、病院内の各セクションが、患者さんやケアマネジャーから得た情報を正しく共有し、必要な時に必要な動きができないと、効率良い業務には至らないと感じている。つまり、今後ますます一人の頑張りや、一部門の頑張りだけでは到達できないことが増えるのではないかと感じている。さて、出来るようになるには、あと10年くらいはかかるのではなかろうか。

広報委員 佐藤 弓子

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