127号 2019/02

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_/_/_/ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報
_/_/_/見通す力を養う
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■ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)

多職種協働の要となるべく、ケアマネジャーも介護保険以外の制度に精通しなければなりません。本シリーズでは、当会顧問の宮坂佳紀氏に、ケアマネジメントに関連が深い医療保険制度のトピックスを解説していただきます。


2019年10月の消費税引上げ対応として介護報酬改定が実施されるが、同様に診療報酬も改定される。今回は2019年10月の消費税引上げ対応診療報酬改定案・介護報酬改定告示案などについて掲載する。

□2019年10月消費税引上げ診療報酬改定動向――初診料288点、再診料73点、急性期入院料1は1650点に引上げ

2月6日、中央社会保険医療協議会総会は、今年10月の消費税率10%への引き上げに伴
う2019年度診療報酬改定の配点内容について、厚生労働省から提案を受けた。初診料は現行の282点から288点に、再診料は72点から73点に、外来診療料は73点から74点となる。急性期一般入院料1は1591点から1650点に、補填不足が大きかった特定機能病院7対1入院基本料では1599点が1718点にそれぞれ引き上がる。支払い側(保険者側)委員からは、配点における医療費の伸びを勘案した上乗せ率の調整を巡り問題提起する意見も出たが、個別項目の点数は厚労省案で決まる見通しだ。
厚労省は、消費税率10%への引き上げに伴う医科診療報酬の配点について1)診療所は初・再診料、有床診療所入院基本料等を引き上げる、2)病院は、診療所の初・再診料の引き上げと同じ点数を病院の初・再診料で引き上げるとともに、残りの財源で入院料等を引き上げる―方針で改定作業を進めたことを報告。直近の通年実績のNDBデータ等を用いることや、入院料は病院種別や入院料別ごとの入院料シェアを考慮し、補填不足が明らかになっている5%から8%への引き上げ時の「3%分」も含めた、5%から10%までの「5%分」に対応した配点を行うとした。
厚労省が示した改定後の点数は、初診料が288点(現行点数=282点、改定後点数のうち5%から10%への消費税対応分=18点)で上乗せ率は6.7%となり、再診料は73点(同72点、4点)で上乗せ率5.8%となる。外来診療料は74点(同73点、4点)。
入院医療では、急性期一般入院料1(旧7対1)の改定後の点数は1650点(同1591点、84点)で上乗せ率は5.4%、地域一般入院料3(旧15対1)では988点(同960点、43点)で上乗せ率は4.6%となった。一方、特定機能病院一般病棟7対1入院基本料では1718点(同1599点、152点)で上乗せ率は個別項目で最も高い9.7%となった。

(参考)主な診療報酬改定項目
初診料 282点から288点の+6点、再診料は+1点
入院医療では、急性期一般入院料1(旧7対1)の改定後の点数は1650点(同1591点、84点)59点から46点で上乗せ率は5.4%、地域一般入院料3(旧15対1)では988点(同960点、43点)で上乗せ率は4.6%となった。一方、特定機能病院一般病棟7対1入院基本料では1718点(同1599点、152点)で上乗せ率は個別項目で最も高い9.7%となった。
医療療養型3点、障害者等施設27点、358点(ICUなど)、回復期リハビリテーション病棟44点、地域包括病棟71点、緩和ケア病棟1=156点、140点、100点の入院期間に応じた三段階評価に。短期滞在手術も引上げ、小児外来診療料(院外処方の場合) 再診23点、初診27点増。
訪問診療 833点から888点の60点増。同一建物203点から213点の10点増。
歯科初診料6点~14点増、再診料1~6点(施設基準届出に応じて異なる)、訪問診療料64点から3点(施設基準等算定要件に応じて異なる)増。
調剤基本料1点、一包化加算 2点(42日分以下)、20点(43日分以上)それぞれ増。
訪問看護管理療養費(ST) 初日1=130点、2=100円、3=70円、1~3以外=40円増、2日目 20円増。

□2019年10月介護報酬改定案が了承――居宅介護支援費(Ⅰ)要介護1、2は1057単位の4単位、要介護3~5は1373単位の5単位引上げ

2月13日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会(分科会)は、厚生労働大臣に諮問された消費税率10%への引き上げに伴う2019年度介護報酬改定案を了承。分科会終了後、社会保障審議会に報告し、答申された。介護報酬の取り扱いについては、サービス
種類ごとの課税費用割合に応じて基本報酬などを上乗せするほか、区分支給限度額や施設系サービスの基準費用額を見直す。併せて、介護職員の新たな処遇改善加算を設ける。
消費税10%への引き上げに伴う介護報酬の改定率はプラス0.39%、処遇改善や補足給付を合わせるとプラス2.13%となった。基本報酬への上乗せを基本とする対応で、サービス種類ごとの支出に占める課税費用割合に応じて単位数を設定した。所定疾患施設療養費などの課税費用割合が高い加算にも上乗せする。
全サービス平均の課税費用割合(減価償却費含む)は21.0%で、サービス種類別に見ると▽介護療養型医療施設=29.2%▽介護老人保健施設=23.0%▽介護老人福祉施設=15.9%▽訪問看護=16.1%―などだった。
居宅介護支援費居宅介護支援費(Ⅰ)は4~5単位引上げ、介護予防支援費は431単位と1単位引上げとなった。訪問介護は身体介護・生活援助とも所要時間に応じて1単位から2単位、訪問看護は1単位から4単位引上げなどとなっている。
区分支給限度基準額は、介護報酬の上乗せによる影響を考慮し引き上げられる。要支援1=50,320円、要支援2=105,310円、要介護1で167,650円、要介護2=197,050円、要介護3=270,480円、要介護4=309,380円、要介護5では、現行の360,650円にプラス1,520円の362,170円とすべて引上げられた。
施設系サービスでの食費や居住費の基準費用額については、単純に消費税引き上げ分を上乗せする。食費は現行の月額4万1952円から月額4万2317円に引き上げる。この日の分科会は、厚生労働省が2019年度介護報酬改定案に盛り込んだ介護職員の新たな処遇改善案を了承した。消費税率10%への引き上げに伴う新加算の名称は「特定処遇改善加算」とし、サービス種類ごとに「新加算(Ⅰ)」と「新加算(Ⅱ)」の2段階で加算率を設定する。取得要件の詳細などは次回会合で議論し、年度内にも通知を発出する予定だ。
特定処遇改善加算の取得は、現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の取得などを要件とし、加算率は「勤続年数10年以上の介護福祉士の数」に応じてサービス種類ごとに設定。さらに、サービス種類内でもサービス提供体制強化加算などの取得状況によって「新加算(Ⅰ)」と「新加算(Ⅱ)」の2段階とした。事業所内での配分は、経験・技能のある介護職員を重点化した上で、柔軟な運用を認めている。①経験・技能のある介護職員において「月額8万円」の改善又は「役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)」を設定・確保→リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を実現。平均の処遇改善
額が、①経験・技能のある介護職員は、②その他の介護職員の2倍以上とすること、③その他の職種(役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)以上の者は対象外)は、②その他の介護職員の2分の1を上回らないこととなっている。
※①は、勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方は、事業所の裁量で設定が可能。※①、②、③内での一人ひとりの処遇改善額は、柔軟に設定可能。
※平均賃金額について、③が②と比べて低い場合は、柔軟な取扱いが可能。主な特定処遇改善加算は、訪問介護・夜間対応型訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護新加算(1)6.3%,(Ⅱ)4.2%、(地域密着型)通所介護(Ⅰ)1.2%、(Ⅱ)1.0%、(予防)通所リハビリテーション(Ⅰ)2.0%、(Ⅱ)1.7%、介護老人福祉施設(Ⅰ)2.7%、(Ⅱ)2.3%、介護老人保健施設(Ⅰ)2.1%、(Ⅱ)1.7%、介護療養型医療施設は(Ⅰ)=1.5%、(Ⅱ)=1.1%で、現時点で根拠となるデータのない介護医療院も同様の取り扱いとした。他方、これまでとおり居宅介護支援、福祉用具貸与、訪問看護や訪問リハビリテーションなど、介護職員のいないサービスは加算の対象外である。なお、特定処遇改善加算は区分支給限度基準額対象外である。

□介護保険訪問リハビリテーション料の研修要件見直し――別の医療機関医師の研修受講は2021年3月末まで延期
厚生労働省老健局老人保健課は2月5日付けで、2018年度介護報酬改定に関するQ&Aの第8弾を事務連絡した。訪問リハビリテーションで別の医療機関の医師が診察し情報提供を受ける場合の当該医師の研修要件に関する内容。訪問リハビリ料等を算定(20単位減算)するための要件である当該医師の「適切な研修の修了等」について、今年の3月末までとしていた経過措置を2021年3月末まで延長した。
適切な研修として、取得しなければならない「日医かかりつけ医機能研修制度」の応用研修の具体的な項目や単位数も明記した。また、別の医療機関の医師が訪問リハビリ事業所の医師に情報提供する際には、「2021年3月31日までに適切な研修の修了等または受講を予定している」との趣旨の記載をすることが望ましいとした。併せて、2018年度介護報酬改定に関するQ&Aの第1弾(2018年3月23日)の「問60」は削除することとした。

(参考)平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.8)(平成31年2月5日)
【訪問リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション】
○事業所の医師が診察せずにリハビリテーションを提供した場合の減算
問1 別の医療機関の医師から計画的な医学的管理を受けている利用者に対し、指定訪問リハビリテーション事業所等の医師が、自らは診療を行わず、当該別の医療機関の医師から情報提供を受けてリハビリテーションを計画、指示してリハビリテーションを実施した場合、当該別の医療機関の医師が適切な研修の修了等をしていれば、基本報酬から20単位を減じた上で訪問リハビリテーション料等を算定できることとされている。この「適切な研修の修了等」に、日本医師会の「日医かかりつけ医機能研修制度」の応用研修の単位を取得した場合は含まれるか。
(答)
含まれる。なお、応用研修のすべての単位を取得している必要はなく、事業所の医師に情報提供を行う日が属する月から前36月の間に合計6単位以上(応用研修のうち、「応用研修第1期」の項目である「フレイル予防・高齢者総合的機能評価(CGA)・老年症候群」「栄養管理」「リハビリテーション」「摂食嚥下障害」及び「応用研修第2期」の項目である「かかりつけ医に必要な生活期リハビリテーションの実際」「在宅リハビリテーション症例」「リハビリテーションと栄養管理・摂食嚥下障害」のうち、いずれか1単位以上を含むこと)を取得又は取得を予定していればよい。また、別の医療機関の医師が訪問リハビリテーション事業所等の医師に情報提供をする際に下記を参考とした記載をすることが望ましい。

「平成33年3月31日までに適切な研修の修了等または受講を予定している。」
※平成30年Q&A(Vol.1)(平成30年3月23日)問60は削除する。

顧問  宮坂 佳紀(メディカル・テン代表)

■見通す力を養う
皆さんは黒潮大蛇行(くろしおだいだこう)というのを聞かれたことはあるだろうか。日本列島の太平洋沿岸には黒潮と呼ばれる温暖な海流が存在している。普段黒潮は、日本列島に沿って南西から北東に向かって直線的に流れ、千島列島から流れてくる親潮(冷たい海流)と岩手・宮城沖でぶつかり東に逸れるように進路を変える。黒潮大蛇行はその黒潮が字のごとく大きく蛇行している状態を言う。特に室戸岬から紀伊半島、伊豆半島に沿って流れていた黒潮が、南の方へ大きく曲がり離岸することを黒潮大蛇行と呼ぶ。この現象は10年に1度程度現れると言われており(データではもっと頻回な場合もある)、様々な
被害をもたらしてきた。大きな被害としては、黒潮が蛇行することで、日本列島と黒潮の間に冷たい海水が流れ込み海産物の水揚げ、特に黒潮の恩恵を受けているカツオやイワシ・シラスなどが激減すること、蛇行し離岸した部分で潮位が高くなり、高潮が発生しやすくなることなどがある。海産物の水揚げ量が低下すれば魚などの値段は上がり、高潮が発生しやすくなると台風の時に被害が増大する。そうなれば私たちの生活にも大きな損害をもたらすことになる。実はこの黒潮大蛇行は2017年8月頃から発生しており、今も尚蛇行している状況が続いている。昨年の台風では高潮により被害が増大したことは記憶に新しい。また、伊勢湾台風(1959年9月)の時も黒潮大蛇行の最中であったと言われており、その被害は言うまでもない。
その他にも黒潮大蛇行の時には首都圏などで大雪になることが多いらしく、前回の2005年の時には首都圏で大雪となった。こういったことから、今年の台風シーズンは昨年同様の被害が想定され、見合った対応や対策が求められる。また、魚の価格高騰も予想される。
こうした過去のデータから今起こること、これから起こるであろうことを予測し、見通しを立てるのはケアマネジメントも同じで、見通しを立てるためにはより具体的な根拠となるデータが必要になる。
介護支援専門員にとってのデータの1つは、過去に取り扱ったケースから得た情報があげられる。この情報は経験によって蓄えられるが、より具体的な根拠にするためには得た情報を整理する必要があり、事例検討や事例研究と呼ばれる方法でデータの精度を上げることができる。これらは意図的に行う必要があり、単純に経験年数が長いだけでは養いきれないと考える。
その他にも見通す力を養うために、書物や研修の機会を使い疾患・年齢・性別・環境等による傾向性を学ぶことも重要な方法の一つと言える。そういう意味で考えると、介護支援専門員に課せられている更新という仕組みは、非常に重要な機会であると思う。ただ、力を養うためには「意図的」に行う必要があり、自発的であればある程その効果は期待できる。
来る3月23日~24日には奈良県で一般社団法人日本介護支援専門員協会第18回近畿ブロック研究大会in奈良が行われ、8月31日~9月1日には一般社団法人日本介護支援専門員協会全国大会in四国が徳島県で開催される。奈良県での研究大会では他者の研究発表を聞き、徳島県での全国大会では自らの研究を発表できるよう取り組まれてみてはどうだろうか?私も、黒潮大蛇行についての研究ではなく、見通す力について真剣に研究してみたいと思う。
室戸岬があるのは徳島のお隣高知県。高知と言えばカツオが有名だが、黒潮大蛇行による被害が最小限で収まる事を願いつつ、黒潮大蛇行が発生しているいつもと違った四国で、今までとは違う進化した自分に出会えるかもしれない。まずは奈良大会の成功と皆様の多数の参加をお待ちしております。

広報委員長 中嶋 優

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