175号 2021/12

ケアマネメールニュース(2021年12月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

2022年4月は、2年に1回見直しされる診療報酬改定を迎える。今回もケアマネジャーとして知っておきたい「2022年度診療報酬改定動向」のうち「湿布薬の適正化」「医療訪問看護のターミナルケア加算の緩和」「リハビリテーションの見直し」についてポイント解説する。

1回の受診で受け取れる湿布薬の枚数制限の厳格化――1回35枚までとの案も

2022年度診療報酬改定について議論を進めている中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、「薬剤給付の適正化」に向け、外用の消炎・鎮痛薬の適正使用が論点となっている。2016年度診療報酬改定で一度に70枚を超えて処方する場合には、レセプトにその理由を記載することとされた。その結果、70枚を超える処方箋は激減した。厚生労働省は2020年度に調剤された外用の消炎・鎮痛薬について、処方箋1枚当たりの処方枚数を分布で示した。最も多かったのは「64~70枚」で、「29~35枚」「22~28枚」が続いた。また、「64~70枚」の処方箋のうち、「70枚」の件数が99.5%を占めた。この調査結果により厚生労働省は「これまで薬剤給付の適正化の観点から実施している取組内容や処方の実態を踏まえつつ、外用の消炎・鎮痛薬の適正使用について、どのように考えるか」を論点として提示。中医協支払い側(保険者側)委員からは給付を適正化するため「35枚までを原則とすることで十分に対応できる」と主張。

他方、診療側委員は、薬剤費の適正化という観点ではなく「長期処方を是正して、患者さんの治療効果を上げる観点から検討すべきだ」と指摘したという。結論は先送りとなるが、1枚の処方せんで複数回に分けて処方する「分割処方」などの取り扱いや、病名や部位に応じて湿布薬の枚数制限が想定できる。

退院日当日の訪問看護も訪問回数に算入する方向で一致――訪問看護ターミナルケア療養費の見直し

現行の訪問看護ターミナルケア療養費は、死亡日とその前の14日間の計15日間に2回以上訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費を算定することが要件となっている。しかし、現行の取り扱いでは、退院当日の訪問は、訪問看護基本療養費が算定できない。厚生労働省は、中医協総会で在宅での看取りを支援する観点から、見直しの必要性について意見を求めた。診療側委員は「退院直後の訪問での算定を可能にしてターミナルケアを評価してほしい」と表明。支払い側委員も「その後の訪問とケアの内容に違いがないのであれば理解する」と言及したという。これらのことから、退院当日を含め次回の訪問で2回の算定要件を満たせば「訪問看護ターミナルケア療養費」が算定できることが決定したと言える。その他、難病等複数回訪問加算について、1日に複数回の訪問が必要な利用者が増加していることを踏まえた評価の在り方(適正化)なども論点に上がっている。

(参考)訪問看護に係る論点
【訪問看護の提供体制について】
感染症や災害が発生した場合であっても必要な訪問看護を安定的に実施するために、平時からの訪問看護ステーションの体制整備や連携の在り方について、どのように考えるか。
ICTを利用した在宅看取りについては、医師が「情報通信機器(ICT)を用いた死亡診断等ガイドライン」に基づき、ICTを利用した看護師との連携による死亡診断を行う場合には、在宅患者訪問診療料の死亡診断加算を算定することが可能になっている。死亡診断等をサポートする訪問看護師に係る評価の在り方について、どのように考えるか。
退院当日の訪問は訪問看護基本療養費を算定できないため、訪問看護ターミナルケア療養費が算定できない場合がある。在宅での看取りを支援する観点から、退院当日を含めた退院直後のターミナルケアの評価の在り方について、どのように考えるか。
地域において専門性の高い看護師がコンサルテーションや人材育成等を実施している実態を踏まえ、機能強化型訪問看護ステーションに所属する専門性の高い看護師の評価の在り方について、どのように考えるか。
【利用者の状態に応じた訪問看護の充実について】
安全で質の高い訪問看護を提供する観点から、職種別の就業状況を考慮した複数名訪問看護加算の在り方について、どのように考えるか。
1日に複数回の訪問が必要な利用者の増加を踏まえ、難病等複数回訪問加算の在り方について、どのように考えるか。
医療的ニーズの高い利用者の円滑な在宅療養への移行を促進する観点から、退院支援指導加算の在り方について、どのように考えるか。

医療保険適用のリハビリテーションは適正化――リハビリテーション計画書の署名は簡素化も

中医協総会では、リハビリテーションについても議論を進めた。現行、標準的算定日数を超えたリハビリテーションについては、医師が改善の見込みがあると判断した場合には、減算されることなく、医療保険の対象としてリハビリテーションが提供されることとしており、患者が必要なリハビリテーションを受けることができる仕組みだ。ただし外来では、原則要介護等認定患者は、標準算定日数後は算定不可となっている。論点は「疾患別リハビリテーションについて、質の高いリハビリテーションを推進する観点から、その評価の在り方等について、どのように考えるか」が提示された。

議論では疾患別リハビリテーションで標準的算定日数を超えた患者に、外来で継続して医療保険によるリハビリが提供可能な現状に対し、支払い側は医学的に必要と判断されているリハビリの実態把握を行うべきとの見解を示した。これに対して診療側は、医療保険におけるリハビリの提供が必要な患者がいるとして、現状の見直しには慎重姿勢を示したと報じられている。外来では要介護等認定患者は、通所介護の機能訓練で対応している場合もあるが、通所リハビリテーションなどのサービスをうけられない場合、医療保険の外来で必要なリハビリテーションを期間限定で受けられる可能性も少なからず想定できる。

関連して、リハビリテーション実施計画書等には、署名欄が設けられており、患者又はその家族から署名又は記名・押印が必要である。一方で、リハビリテーション実施計画書については、1か月に1回以上交付が必要となる場合等があり、そのような場合においては患者が署名できない状態であって、家族が遠方にいる等の理由により、計画書への署名が困難であるとの指摘があるとの現状が報告された。多くは入院患者の実地計画書等の取り扱いに関連するものの、初回以降は署名なく、口頭説明・同意でも対応できる形で収まりそうだ。

(顧問 宮坂 佳紀)


【連載企画】各ブロックの地域活動について(第11回:京都市南西ブロック)

2021年2月号より地域の活動を紹介させていただいております。
第11回となる今回ご紹介させていただくのは、京都市南西ブロックでの活動です。

――――――

京都市南西ブロックは、西京区・西京区洛西支所・南区・伏見区・伏見区深草支所・伏見区醍醐支所の6行政区で構成されています。これまで、それぞれの区・支所において「事業者連絡会」が、地域のケアマネジャーや各サービス事業所の情報共有、連携力構築、相互のスキルアップを目的に開催されてきました。

令和2年度より「京都市介護サービス事業者等連絡会開催支援事業」として、この連絡会の企画・運営に各区・支所のブロック委員が参画しています。連絡会によってそのあり方や開催頻度などには違いもあり、開催に向けての基盤整備から取りかからなければならないところもありました。そして、足掛け3年にわたろうかというコロナ禍にあって、どの区も連絡会運営には頭を悩ませていました。

コロナ感染拡大の時期は、開催自粛をしているところばかりでしたが、やがて、Zoomによるオンライン開催を試みるところが出てきました。そのときは、介護支援専門員会のアカウントを用いてZoom予約をすることができ、同事業の補助金を活用して、ポケットWi-Fiを注文することも可能になりました。また、研修の際の講師謝金に補助金を活用できるようになったことは大きいです。各ブロック委員は、連絡会開催にかかる、こういった件についての提案も行い開催支援に努めています。

研修内容としては、「報酬改定」や「災害支援・BCP(事業継続計画)」に関するものが目立っています。また、急速に浸透してきた「Zoom」に対する関心の高まりから「Zoom」の学習会を企画したところもありました。

従来、京都市の各区の事業所連絡会は、それぞれの連絡会が区ごとにてんでんばらばらに開催しているといった様子でしたが、今後、ブロック委員の横のつながりを活かして、研修の企画内容を検討する際には、他区の連絡会活動の情報を入手し参考にすることも容易になるでしょう。各区が他区の良いところをどんどん真似すれば良いのだと思います。各区の連絡会同士がそれぞれ他区の活動に触発され、相乗効果を生み、京都市南西ブロックの連絡会の質の向上につながればと思います。これは、当然ながら京都市南西ブロックに限ったものではなく、どのブロックにも当てはまることだと思います。

各ブロック委員は、連絡会の準備会合である運営委員会に参加するほか、事業費活用のために必要な事務作業も担い、事務局の協力の下、取り組んでいます。

地域のケアマネジャー等が、自分のアタマで、自分の足で、今知りたいこと学びたいことについて情報を集め、提供し、共有する事業者連絡会…溢れる情報の取捨選択に戸惑いがちな現在において、その重要性が薄まることはないと思います。

――――――

コロナ禍において、どの地域においても活動が停滞していたと思います。京都市南西ブロックにおいては「京都市介護サービス事業者等連絡会開催支援事業」を通じて、新たな連絡会の運営に取り組まれていることがよく分かりました。対面しての活動に制約がある中、Web会議ツールの活用は、今後も会議や研修で必須となります。ICTを活用した介護支援専門員の情報共有やコミュニケーションについては、新たな取り組みとして浸透していくことが望まれます。貴重なご報告をありがとうございました。

(理事 中吉 克則)

ページの先頭へ