137号 2019/08

ケアマネニュース(19年8月号)

「ケアマネジャーとして知っておきたい今月の医療と介護の情報(MCIメディケアインフォメーション)」

今回は、2020年度診療報酬改定論点のなかで浮上したリハビリテーション特化型の訪問看護ステーション(訪問看護ST)の現状と課題を取り上げ、次期診療報酬改定内容を先読みしたい。

リハビリテーション中心の訪問看護STを問題視――20年度診療報酬改定適正化項目が浮上

7月17日に開催された中央社会保険医療協議会総会(中医協総会)資料によると、①訪問看護STの数は徐々に増加しており、規模別に見ると、看護職員数の多いSTが増加傾向、②訪問看護STにおける職種別の従事者数のうち、PT等が占める割合が増加、③訪問看護STの利用者は、介護保険、医療保険とも増加傾向であり、特に医療保険の利用者数が増加、④医療保険における訪問看護STの利用者のうち、要介護被保険者等の割合は横ばいであるが、特別訪問看護指示書の交付を受けている利用者の割合は増加傾向である、との資料が公表されている。さらに⑤設立法人別に見ると、医療法人がほぼ横ばいである一方、営利法人の増加が目立つ、⑥利用者では、介護保険と医療保険いずれも増加傾向で、特に医療保険の伸びが大きく、2016年度時点で医療費が1742億円、介護給付費が2413億円になるという。

中医協総会では、訪問看護STの従業者に占めるPTの割合が高まっていることなどに対し、診療側、支払い側委員ともに問題意識が示されたようだ。加えて訪問看護STにおけるPT等の詳細な実態データに基づく検証の必要性を指摘する意見も出たと報じられている。その他診療側委員が、従事者数に占めるPT等の割合が大きい事業所について、利用している患者像に「偏りがあるのではないか」などと問題視。多面的な検証の必要性を指摘し、事業所規模や設立法人種別などの傾向が把握できる資料の提示を求めた。さらに支払い側委員は、訪問看護STに関する医療費の伸びが大きいことから「いずれ医療費全体に影響を与える数値になる」と述べ、事業所ごとの訪問回数の違いなど詳細なデータに基づいた議論が必要と強調したという。

訪問リハビリテーションの算定要件厳格化――訪問看護STには1月の回数制限や外来リハビリテーションとの併用制限がない

訪問看護STで、リハビリテーション中心の運営をしている事業所が増加傾向にある理由を考えてみたい。まず介護保険の訪問看護STからのPT等のサービスは、訪問看護サービスに該当し、訪問リハビリテーション対象者への実施制限や対象患者など細かな規定がないことが上げられる。併せて医療保険では、要介護認定等を受けた患者の外来リハビリテーションの経過措置が終了した。しかしながら、介護保険の訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションに要介護認定等の外来患者が移行していない現状もある。その理由のひとつとして、通所リハビリテーション事業所での短時間個別リハビリテーション実施事業所が増加していないことが上げられよう。

さらに訪問リハビリテーションは、事業所医師の定期診察がない場合は減算となる。しかも2018年度介護報酬改定ではリハビリテーション事業所外の医師の指示の場合、指示する医師の研修要件が新設。研修要件は経過措置が講じられたものの、別の医療機関からの指示の場合、研修未受講医師の指示では、介護報酬そのものが算定不可となる。その他リハビリテーション計画作成、評価・見直しの流れ、及び事業所側医師の3月ごとの診察の必要性など、ケアマネジャー側からみても手間がかかり、利用者の診察頻度も増加する。一方、訪問看護STの医師の指示期間は最大6月であり、主治医の診察頻度や指示医師の研修要件などの制限もない。このように、訪問リハビリテーションより訪問看護STからのリハビリテーションサービスのほうが「使い勝手がいい」という現状があるのだ。

2018年度診療報酬・介護報酬改定で訪問看護STからのPT等のサービス提供の際、訪問看護ST管理看護師とPTが共同して訪問看護計画作成などの取り扱いに改定された。しかしながら、訪問看護STからのリハビリテーションサービスを活用する方が、主治医とは別の訪問リハビリテーション事業所を活用する場合、主治医と別事業所医師の診察頻度の制限もなく、手間とらないことも事実である。この格差是正や現状の課題も整理した上で、訪問看護STからのリハビリテーションの適正化に繋がるのではないだろうか。

株式会社立の訪問看護STの適正化の行方――株式会社立調剤薬局と同じ視点

 厚生労働省の調査によれば2017年度末の保険調剤薬局数は59,138施設で、同年末のコンビニ店舗数57,956店を上回っている。また2017年度衛生行政報告の薬剤師数も薬局が、172,142人で、医療施設勤務薬剤師の58,044人を大きく上回っている。政府・厚労省や財務省は医療費のうち調剤医療費の占める割合が高いことを理由に、2018年度調剤報酬改定で「集中率85%超と大型門前薬局の適正化」を実施した。この大型門前薬局は、株式会社立、すなわち営利法人が運営している。この調剤報酬適正化が、即「営利法人(株式会社)立」のリハビリテーション中心型訪問看護STの適正化に繋がるとはいいきれない。ただ、先述のリハビリテーション中心型の訪問看護サービスの課題などを念頭にいれると、近い将来、株式会社立の調剤薬局と同じ視点での適正化は十分想定できよう。

(顧問 宮坂佳紀)


理事就任のご挨拶

令和元年度定時総会にて、新たに就任しました理事よりご挨拶させていただきます。(ブロック区分順)

中丹ブロック理事/佐藤弓子
今期中丹ブロックの理事に就任させていただきました。理事になりますと、今までお世話になっていた委員会やワーキングとは、違う風景が見えるような気がして不思議です。表面的かつ一時的な良きことではなく、ケアマネジャーという仕事が未来に続くような良きことが出来れば良いのですが、力量不足は如何ともし難く、出来ないことだらけです。ご迷惑をかけることもあるかもしれませんが、どうぞ宜しくお願い致します。

中部ブロック理事/吉田桂子
この度、中部ブロック理事に就任いたしました。お恥ずかしいことですが、今までは一会員として受け身であり、この機会をもって、会長をはじめ、組織がこれほど丁寧に職能団体としての取り組みをされているのを知りました。今後、皆さまのご指導をいただきながら、微力ではございますがお役にたてればと思います。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

京都市北西ブロック理事/北川裕之
このたび京都市北西ブロックより選出されました。当会が担う役割の大きさを改めて知り、利用者・家族のため、介護支援専門員の足元がブレないように何をすべきか、考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

京都市南西ブロック理事/橋本かおり
このたび京都市南西ブロック理事に就任させて戴く事になりました。長年、ブロック委員として会の変遷を近くで見ながら、介護支援専門員の社会的地位の向上や質の向上の必要性も肌で感じ、助けてもらい活動して来られたと思っております。これからも今まで以上に楽しく働きやすい環境づくりや、一層の向上を目指して一助となればと思っております。ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

相楽ブロック理事/株柳聡子
平成27年度からブロック委員を2期務め、今回ブロック理事として選出していただきました。相楽圏域で働く介護支援専門員の皆様がやりがいをもって働き続けられる環境づくりに貢献できるよう、非力ながらブロック委員の皆様とともに精一杯尽力していきたいと存じます。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

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